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テーマ:洋楽(3357)
だが、聴いた回数がもっとも多いアルバムといったら『Innervisions』になるかもしれない。 '72年から'76年に発表されたスティーヴィーのアルバムはどれも最高傑作と呼ぶにふさわしいものであり、どれをベストとするかは個人の嗜好による。 それにしても『Innervisions』の密度の濃さは圧倒的だ。 このアルバムからは、才能とかクオリティ云々を越えた神々しいオーラを、僕は感じる。 この時スティーヴィー23歳。 当時の彼には本当に神が乗り移っていたのかなぁ、と聴くたびに思う。 『Innervisions』は、俗にいう"スティーヴィー三部作"の二番目にあたる作品である。 発表は'73年の8月。 全曲の作詞作曲はもちろん、プロデュースもスティーヴィーだ。 レコーディングには数人のゲストを招いたものの、ほとんどの楽器を彼ひとりで演奏したという。 本盤は全米4位、全英8位のヒットを記録し、その年のグラミー賞も受賞した。 レッド・ホット・チリペッパーズにも取り上げられた「Higher Ground」などは、ファンならずとも聴いたことがあるだろう。 もちろんそれだけではない。 不思議なコード感とうねるベースがカッコいいファンク・ナンバー「Too High」、彼の社会に対する怒りをつめこんだ佳曲「Living For The City」、スティーヴィーらしい美しさが胸にせまる「Visions」や「Golden Lady」などは、一聴すると地味なようだが、クオリティと味わいの深さで群を抜いている。 サルサのリズムを使った「Don't You Worry 'bout Thing」も好きな一曲だ。 アルバム全体の構成も完璧。 駄曲のかけらも見当たらない内容は、まさに"70年代音楽の奇跡"といえる。 この時のスティーヴィーは、ポール・マッカートニーやマイルス・ディヴィスも越えていたんじゃないかと思ってしまう。 そして、アルバムのラストを飾る「He's Misstra Know It All」は、個人的にいちばん好きな曲だ。 ベースには、ダニー・ハサウェイ・バンドのウィリー・ウィークスが参加。 シングル・カットされて全英8位を記録している。 ソフトかつグルーヴィーにはずむ演奏が印象的なミドル・テンポのナンバーだ。 スティービーの弾くジャジーなピアノが耳に心地よい。 ポップで温かみのあるメロディは、ジャンルを越えた魅力をもつ。 表現力豊かなヴォーカルと厚みのある多重録音コーラスも素晴らしい。 ハンド・クラッピングも力強く響いてくる。 穏やかでいて崇高なエネルギーに満ちたこの曲は、70年代のスティーヴィーが神に近い所にいたことを物語るものだ。 楽曲の構造は単純で、音作りもそれほど凝ってはいない。 にも関わらず、5分32秒の曲ながらほとんど長さを感じない。 これもスティーヴィー・マジックか。 BGMとしても気持ちよく聴き流せるなんて素敵じゃありませんか このアルバムに出会ってからもう二十年近くたつが、「He's Misstra Know It All」を聴くと今でも心が洗われるような気分になるのである。 「He's Misstra Know It All」を聴くにはここをクリック! ※ ポム・スフレのメインHPではスティーヴィー・ワンダーの名盤『Talking Book』について取り上げています。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2008.09.08 05:34:04
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