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カテゴリ:行間
死体の眼がこちらを見ていた。
一寸ほどの隙間の闇、その奥から、眼球が 僕を責めるように射抜く。 そして、人の形を留めぬモノが、僕に語りかけてくる。 「レイジ…もっとよく、私を見て…。」 なぜだ…?なぜそれは、しゃべることができるんだ? 「あなたの好きな私を、見て…。」 や、やめてくれ…僕をそんな眼で見るな…! 「私のことが、好きなんでしょう…?それはつまり、私を形作るものが、 私の脳が、臓物が、腐臭が、好きということでしょう?」 あ、う、ああ…あのコなのか…?このモノは、この何かは、この物体は? 「でも、あなたは酷い人…。」 !? 「知ってるのよ、私…。私のことが好きといっておきながら…。」 その、脳と眼球と臓物の組み合わせは、ずるりと隙間から這い出しはじめ、 僕の手をつかんだ。 うわあああ!! 本能からにじみ出る恐怖の悲鳴が、自然と出ていた。 「あなたは今、ミュシャちゃんにも惹かれている…。」 汗と、涙と、よだれと、鼻水と、あらゆる液体を撒き散らし、 浅い眠りから目覚めた。目覚めの際にも叫んでしまったのだろう、 ジョギング中の老人が奇異の目でこちらを一瞥し、走り去っていった。 目覚めとともに知性と意志がよみがえってくる。 ここは、公園か…。そうだ、ここで野宿したのだった…。 昨日は、ブリーダーの九滝さんが殺された。助けられなかった…。 となりでは、ミュシャがいまだまどろみの中。 しかし、悪夢の余韻が、速い鼓動と震えを止めさせてくれない。 僕はあのコを好きだったはずだ。好きだったはずなのに、 あのコに恐怖し、悲鳴まで上げてしまった。 なぜだ…?僕の気持ちは偽りだったのか…? あのコの脳を、眼球を、臓物を、受け入れることはできなかったのか? 朝の静かな時間は、人に様々なことを考えさせてしまう。 あの恐怖の根源にあるものは何だ…そもそも恐怖とは? この世で、僕にとって、最も恐ろしいこととはなんだ…? 街が目覚めようとしている時間の中で、僕は僕だけの時間の中で、 そんなことを考えだしてしまった。 ・ ・ ・ ・ ・ …と、全然あらすじじゃなかったです。本編の中のとある期間の 読みきりになってしまいました。 もちろん本編の続きは、漫画で描きます。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2008.02.26 21:18:32
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