肥満と飢餓は正反対の状態ですが、
現代人の肥満の問題は、
人類が絶えず飢えにさらされてきたことと深い関係があります。
約400万年におよぶ人類の歴史はまさに飢餓との闘いで、
何度もおとずれた氷河期は、
人類に多くの試練を与え続けました。
人類が安定して食料を得ることができるようになったのは、
人類が経験した最後の氷河期が終了した約1万年前、
中東シリアで農耕が始まってからにすぎません。
農耕はまたたく間にヨーロッパに広がり、
日本には約3500年前、
縄文後期に中国から稲作が伝わってきました。
しかし、それまでは、先史時代の厳しい食料事情の中で、
乏しい食物から得られたわずかなエネルギーを
出来る限り効率よく利用し、
残りはすべて体の中に蓄えておく仕組みが、
人類に必要でした。
それは生命が生き延び、繁殖するために不可欠なことです。
食物から体内に取り入れたエネルギーを効率よく蓄えるには、
余ったエネルギーをすべて脂肪に変え
、皮下か内臓に蓄えねばなりません。
つまり、飢餓と対抗して、体内に大量の脂肪を
蓄積する能力を身につける必然性が、
人類にはあったのです。
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しかし、今日では、生き抜くために欠かせなかったこの能力が、
かえってマイナスの作用をしていることがはっきりしてきました。
私たちの日々の生活をみますと、
車社会になってあまり歩かなくなったし、肉体労働が減り、
家事も電化によって負担が軽くなり、
消費するエネルギーは明らかに減っています。
脂肪を蓄えた細胞は燃焼して
エネルギーを供給する必要がなくなり、
エネルギーをためることだけが仕事になりました。
「収入」だけあって「支出」が少なくなるのなら、
家計にとって大変、結構な話ですが、
体では使われずにたまる一方の脂肪が深刻な問題となります。
成人のエネルギー摂取量は、ここ20年間、
横ばい、もしくは減少傾向なのに
、消費エネルギーが減ったために、肥満者が徐々に増え、
その傾向は男性でとくにはっきりしています。
以前はあまり見かけなかった高度の肥満も
よく見かけるようになりました。
大昔、脂肪蓄積は生命維持に必要だった
肥満度が高くなるにつれ、
睡眠中の呼吸障害をきたしやすくなり、
突然死や睡眠時死亡を引き起こすことがあります。
さらに肥満は糖尿病、高脂血症、高血圧、痛風、胆石症、
骨粗しょう症などの下地にもなりやすく、
そのため狭心症、心筋梗塞など、
虚血性心臓病や脳卒中の原因になります。
乳がん、子宮体がん、大腸がんの原因にもなりますから
「肥満は万病のもと」といっていいのです。
いかに肥満を予防するか・・・・それは、現代人にとって
日々心がけねばならない重要なテーマなのです。
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