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カテゴリ:教授の読書日記
週刊誌の『週刊朝日』がもうすぐ休刊するとの報が入って参りました。
『週刊朝日』・・・。私はこの手の週刊誌を買う世代ではないのですが、私の父はまさにその世代でありまして、かなり長い時期、毎週欠かさず買っていた記憶があります。 なにせ父が買って家にあるものですから、高校時代・大学時代の私も暇つぶしに手に取ることもある。篠山紀信氏が撮った女子大生の写真が表紙を飾り、山藤章二氏の「ブラックアングル」なる風刺画が巻末にあり、「デキゴトロジー」なるタイトルで巷の話題をピックアップした考現学的コラムがあったり、東海林さだおの「あれも食いたいこれも食いたい」、司馬遼太郎の「街道をゆく」、そして書評「週刊図書館」など、結構読むところがありました。春先には「東大合格者一覧!」などの特集があったり。父はこの特集が好きで、父の母校の千葉県長狭高校から今年は何人東大に入った、などということを自慢げに語っていたことでございます。 新聞は読売党なのに、週刊誌は朝日というのも妙なものでしたが、当時として『週刊朝日』は『週刊読売』や『サンデー毎日』より垢抜けていたし、下品なグラビアなどがないところも好印象でした。その辺が、父がこの週刊誌を愛読し、家に持ち帰ったことの主な理由だったでありましょう。 で、父が定年を迎え、この雑誌が売り出される日(たしか火曜日)に通勤電車に乗らないようになってからも、父は散歩がてら最寄りの駅に行き、駅員さんに断って改札を入ったすぐ先にある売店で、馴染みのおばちゃんから『週刊朝日』を一部買っておりましたっけ。駅が今のような自動改札になる前のことですけど、昔はそんなことも大目に見られていたんですな。 2017年6月に父が亡くなる直前、4月の頭に入院することになったのですが、私はお見舞いに行った時に、折しも「東大入学者全氏名発表!」といった特集を組んでいた『週刊朝日』が出ていたので、これを書い求めて差し入れたのですが、既に父はそのような雑誌を読めるような状態ではなかったし、ほとんど興味を示しませんでした。そのことに父の気力の衰えを感じて、私は少し、いや、かなり寂しかったことを覚えております。 そんな、父との縁の深いこの雑誌が本年5月で休刊になると聞き、父も亡くなったけれども、この雑誌も無くなるのか・・・という感慨があります。 まあ、時代の流れでしょうけれども、そうであるならば、今、我々が目にしている「紙メディアの終焉」という歴史的モーメントを、せめて記憶に焼き付けておきたいもの。っていうか、最終号が出たら私も一部買って、父の墓前に供えようかな。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
January 19, 2023 02:40:32 PM
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