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釈迦楽

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December 17, 2023
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カテゴリ:教授の雑感
昨日、大まかに書き上げた今月の文芸時評を微修正して完成稿とし、つい先ほど、新聞社に原稿を送付しました。

 文芸時評を担当するようになって2年が経ち、今回をもって無事、担当から外れることになりました。もともと2年というお約束だったのでね。

 いやはや、大変でしたよ、この2年。文芸時評がこれほどキツイ仕事とは思わなんだ。

 時評の仕事というのは、基本、その月に出る代表的な文芸誌を全部読み、その中から言及するに値する作品を選び出して言及する、というもの。もちろん、文芸誌以外でも、その時々で話題の小説などがあれば、そういうものに言及してもいいし、さらには文学関連の時流について特に語りたいことがあればそれを語ってもいい。要するに評者次第の仕事ではあるわけ。

 とはいえ、やはり語るべきものは、基本的には「日本の文芸」ですからね。それに対して私はアメリカ文学者だから、専門が違う。アメリカ文学者としての仕事の延長線上にできる仕事ではないんですな。

 だから大変なのよ。私の担当は、4月・8月・12月だったんだけど、一年のうち、この3カ月は、読み馴れない日本の文芸誌をとにかく読みまくることに追われた、という感じ。

 だけど、そういうことをやってみて、今、日本の文学界の趨勢ってこういう風なんだ、というのが分かった、という収穫はあった。これは、こういう仕事を引き受けでもしない限り、なかなか分からないものですからね。

 なお、2年間の担当月で、一番面白かった作品は、坂口安吾の「盗まれた一萬円」という作品。埋もれていたこの作品が発掘されて再度日の目を見たということなんだけれども、やはり今時の小説とは違って、昔の作家が書いたものは面白かったねえ。

 ちなみに、2年間この仕事を引き受けてみて、一つだけ後悔があるとしたら、それは市川沙央氏の「ハンチバック」を読みながら、それについて時評の中で一言も触れなかったこと。

 それなりにインパクトのある内容ではあったのですが、障害を抱えた著者が障害を抱えた主人公を描くというところに、「これって、一回しか使えない手じゃん」と思うところもあり。また主人公が書くのがポルノであるというところも、これ見よがしであまり好みではなかった。そういうことがあれこれあって、「この小説、折に触れて何度も読み返したいか?」と自問し、答えが「否」だったので、取り上げなかったのよね。
 
 でも、その後、これが芥川賞を取り・・・。せめて否定的にでもいいから言及して置けばよかったかな、と。

 でもね、文芸時評って、実は否定的なことを述べる場でもないんですよね。いいものを褒める場所であって、わざわざ貴重なスペースをとって悪いものをけなす場所ではない。だから、褒めるつもりがないなら、取り上げられないのよ。

 だから、あの作品に否定的な自分としては取り上げる術はなかったんだけど、そうは言っても、ね・・・。

 まあ、そういう失敗も含めて、経験だよ、経験。いい経験をさせてもらいました。いつかまた、文芸時評をやって欲しいという依頼があったら・・・まあ、その時はその時で考えますか。





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Last updated  December 17, 2023 06:53:03 PM
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