追悼・鈴木孝夫先生、そして追悼・チック・コリア
名著『ことばと文化』で知られる慶應義塾大学名誉教授・鈴木孝夫先生が逝去されました。享年94。 鈴木先生は慶應で長く教鞭を執られた方ですが、英文科ではなく、言語文化研究所という附属研究所の御所属だったので、学生時代、私自身はその謦咳に接したことはありませんでした。 しかし、鈴木先生は私の恩師・大橋吉之輔先生とほぼ同年代であり、また慶應に勤められたのも同じくらいだったので、ラテン語の藤井昇先生も合せて、当時「三羽ガラス」と呼ばれたのだと、私は大橋先生から伺ったことがあります。 で、学内で色々と嫌なことがあると・・・つまり上の先生方からうるさいことを言われたりすると、三人で海まで(当時、三田のキャンパスを下れば、すぐ海辺だった)散歩していって、海に向かって「〇〇の馬鹿野郎~!」などと叫んでうっぷん晴らしをした、なんてこともあったそうで。 その大橋先生が亡くなられて早四半世紀。その一方、鈴木先生は矍鑠としてお元気で、つい最近まで旺盛な活動をされていた。そのお元気なご様子を寿ぎつつ、私の大橋先生も鈴木先生にようにご存命でお元気であられればよかったのになぁと、よく思ったものでございます。 で、2013年に私がとある本を出した時、その本の中に大橋先生のこともチラッと書いたんですな。すると鈴木先生もその本を読んで下さったらしく、ある日突然、私の自宅に鈴木先生からお電話があって、わーーーーっと一気呵成に感想を述べられた。まるで40歳近く年下の私のことを、はるか以前から知っていたかのように。 それにはビックリしましたが、鈴木孝夫先生というのは、直情径行と言いますか、「いい」と思ったら、まっしぐらに本人に向かって「いい」と言って下さるような、そういう素直さ・・・大先輩に向かってそういうことを言うのは失礼かもしれませんが、子供のような素直さがありました。 ま、私は鈴木先生のことをそれほど深く存じ上げているわけではないので、鈴木先生がどんな先生だったか、本当のところは分かりません。しかし、私個人としては、一度だけ直接お電話でお話をして、温かい言葉で励ましてくださった、その時のいい思い出だけが、鈴木先生の思い出として深く心に残っております。先生のご冥福をお祈りいたします。合掌。これこれ! ↓ことばと文化 (岩波新書) [ 鈴木孝夫 ] あと、今日はもう一人、ジャズ・ピアニストのチック・コリアが亡くなったんですよね・・・。 一度聞けばそれとわかる、特異なピアノ演奏で一時代を築いたピアニスト。一番好きなのは、やはり『Now He Sings, Now He Sobs』ですが、カモメのアルバムもまた、1970年代という妙に明るい時代のことを思い出させてくれるアルバムとして、忘れられないものでございます。一ファンとして、ご冥福をお祈りいたします。合掌。これこれ! ↓ナウ・ヒー・シングス、ナウ・ヒー・ソブス [ チック・コリア ]リターン・トゥ・フォーエヴァー [ チック・コリア ]