さよなら、ふるさと。
今日、僕の住む町は、最後の日を迎えた。明日、6月6日に僕の町は隣の宮古市と合併する。小さい頃から買い物は宮古市に行っていたし、高校も宮古市の高校を終わった。そして今も宮古市の病院で働いている。だから実際は、すでに宮古市の中で生きているような町に、僕は住んでいたのだ。これから合併しても町は何も変わらない。海も山も学校もコンビニも変わらない。名前だけが「町」から「市」に変わって、税金やいちばん偉い人が変わるだけだ。そう考えると、そんなにさみしさはない。頭の中では納得できている。でもこころのどっかがしんみりとして何かしら沈んだ気持ちになっているのは何故だろう。ダムの底に沈む村を出る人の気持ちってこんなんだろうか。同じにするな、と怒られそうだが、10000分の1でも、多分、同じような種類のさみしさを僕は感じているのだろう。新しい住所を見た。「町」という文字が消えていた。「田老町」は「宮古市田老」になる。「町」の文字が消えるのといっしょに僕のふるさともなくなってしまうような気がする。さよなら田老町。そして明日からよろしく、宮古市。