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カテゴリ:2004年米大統領選
もう、どの報道番組を見ていても聞いていても読んでいても、今年の選挙で使用されることになっている投票マシンや投票形式の話で持ちきり。なんてったってこの連邦政府国家では、州ごとどころか、郡(County)単位、たいていは区(Township。日本でいうと○○郡△△町くらいの単位)ごとくらいの細かさで投票形式が違っていたりするので、問題は複雑極まりない。しかも、thanks to advanced technologyとかで、電子投票機(e-voting machine)が導入されつつあって、懸念は増大するばかり。
なんせ2000年11月のフロリダの件があるので、選管当局が神経質なまでにピリピリしている上に、戦局は日ごとにデッドヒートの様相を呈し、メディアの見解は僅差で勝敗が決するというところで一致。さらには、盛大に物議を醸している諸々の争点のためか多くの州で、過去最多の投票者登録数を記録。全米各州、各郡、各町の選管で、胃がよじれそうになっている人がゴロゴロしてることうけあいといったところ。 メディアで取りざたされている、投票関連の話題もまた多彩で、電子投票機の正確性に対する賛否論から、電子データゆえに操作されやすいのではという一般・アカデミック入り混じった懸念と批判の声、電子投票機を販売している会社の政治献金先と投票結果操作の可能性に対する懐疑と憶測、また、昨日地方裁判所で出された、ペーパーベースの投票記録用紙を伴わないタッチスクリーンパネル式の電子投票機の使用は違憲ではない、という判断についての賛否などなど。そして、すべての懸念は、結局ただ一点に帰する。 “どうやって、正確に再集計できるのか” 今から再集計が話題の中心とは、フロリダのトラウマ恐るべし、である。 それにしてもまぁ、この国の投票方式は、確かに何が起こっても不思議でないくらい複雑だと感じる。たとえばミシガン州の場合、全州で採用されている投票方式は9種類あって、前述のとおり、郡、町レベルで異なる。ミシガン州政府発表の公式資料の一部を見ると・・・ という具合。 相当単純化された下記のような地図でみても、こういうパッチワークになる。 9種類の投票方式の内容も、マークシート式だけで4パターン、タッチスクリーン/ボタンで2パターン、旧式ないわゆる機械投票機、そしてパンチカード式と投票用紙記入式ということになる。 手に入った写真はこのうち5種類で、上からタッチスクリーン、投票用紙記入式、タッチボタン、マークシート式の一種、そして傑作な機械投票機の順。 特に最後の機械投票機はすごい。これは、混乱するなというほうが無理といううものだ。私なら、投票ボックスのカーテンを開けてこんな機械がババーンッとあったら、そのままカーテンを閉じて帰りたくなるかも。 こういう状態なので、プレスにコメントを求められ、インタビューなどに登場した選管当局のスポークスパーソンや、選挙関連のNPOのスタッフなどは、揃えたようにコメントの最後を『とにかく、事前にサンプルの投票用紙(スクリーン)を見てから投票に行ってください。』と訴えて締めくくる。すでに事前投票がスタートしている州もあり、プレスも当局も、あらゆるメディアを駆使して懸命に投票者の教育に励む一方で、固唾をのんで推移を見守っているという雰囲気である。 KerryのスピーチもBushのスピーチも、キーメッセージが『投票に行ってくれ。あなたのまわりの人も投票に連れて行ってくれ』に変わった。大学の学生課からもバイスプレジデント名で全学生宛に同報メールが出され、“You Vote”と題された独自の投票案内Webサイトを紹介してきた。このサイト、ごく初歩的な投票方法の情報から、最寄の投票所の案内、持っていかなければいけないもの、投票時間は朝7時から夜8時まで、といった情報、さらには、『選挙当日、有効な投票登録用紙を提示する限り、ローカル路線バスは投票所の往復無料乗車を提供している』といった案内まで網羅されて親切丁寧。 ちなみにアメリカの選挙投票率の低さは自他共に認めるところで、特に若年層が投票せず、シルバー層の投票に依存している現状は社会問題として認識されていた。今回の新規投票登録者の多くは若年層だと分析されている。フロリダ2000の混乱はシルバー層が新しく導入された投票形式に慣れなかったから、とも言われているが、今度は投票初体験者の若者が多くいるわけだから、どこで同様の混乱があってもおかしくないと考えられているのだろう。 一連の報道やら動きを見ながら多少感心させられるのは、やるとなったら、ありとあらゆる手段を用いて、投票トラブルの回避から、若年層の投票率アップまで取り組むことである。たとえそれが表層的な取り組みであって、根本的な解決策になっていなくても。もちろん、これで来週火曜日に、スムーズに投票が進行し、若年投票登録者がちゃんと投票に行き、再集計も必要とあらば滞りなく行われるのかどうか、それはわからないのだが、何にせよ存在する社会問題に対してある程度以上の認識を作り出せていることはスゴイことではなかろうか。 『通り一辺の消極的な広報活動を「やりました。でもダメでした」と言っていても、投票率は改善されないんだよ』 と我がホームタウンの某自治体に言いたくなってくるというものだ。 この改善に取り組む能力をもっと根本的な問題にも適用してくれないかしら、と思うのだが、そうは世の中簡単にいかないようだ。特にこの国では。 <追記・Oct.28> 朝日新聞にもっと詳しい解説が出てました。http://www.asahi.com/special/usaelection/TKY200410250110.html お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
October 29, 2004 02:10:37 PM
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