お見事、マイケル・ムーア--アクティビスト的戦略PRの実践?!
午後3時近くまで眠り、夕方までパジャマを着て過ごした。あんなにいい天気だったけど。起きてきて、コーヒーを飲みながらぼんやりCNN Headlineを見ていたら、おっとマイケル・ムーア*の話題。『Usually controversial Michael Moore…』なんて枕言葉つきで紹介されているけど、どうしたって?(*今日まで知らなかったけど、日本版の公式サイトもあるんですね。マイケル・ムーアを知りたい方はこちらをどうぞ~http://www.michaelmoorejapan.com/ )なんでも公開間近のはずだった彼の次作ドキュメンタリー映画について、契約していた映画会社の親会社ディズニーが配給まかりならん、と言ったらしい。CNNのワンサイドな報道ではイマイチよく状況がわからないから、New York Timesのサイトをチェック。今朝付けで結構長い記事が出ていた。(現時点で、日本でもロイター配信でYahoo!ニュースでもAsahi.comでも簡単な記事が出ている)要は、この新作ドキュメンタリー「Fahrenheit 911」の映画会社・Miramaxはディズニーの傘下で、親会社のディズニーが北アメリカでのこの映画の配給はNOだと言ったのだ。「Fahrenheit 911」は言わずと知れたブッシュ家批判ドキュメンタリーで、マイケル・ムーア自身がそう公言して歩いている作品。ディズニーの重役によれば、ディズニーとしては傘下の会社が社の方針に背くビジネスをやろうとする場合はそれを阻止できると言い、政治的な話題はディズニーの方針に沿わないと言う。実際には何があるかといえば、関係者の話によると(というか、ムーアがそう指摘してるんだけど)、フロリダ州が本拠地で、州政府から税金の優遇を受けているディズニーとしては、州に遠慮でブッシュ批判映画の配給なんてできない、ということらしい。なんと言っても、フロリダの州知事はブッシュの兄弟だ。ディズニーの社長はこの指摘を真っ向から否定しているが、もともとMiramaxの社長とディズニーの社長はMiramaxのビジネス方針をめぐって仲が悪いらしい。今回もMiramaxの社長はムーアとさっさと契約を結んでいたのだが、それが知れるが早いかディズニーは阻止に入っていたらしい。ディズニーの広報パーソンは、『この話は去年の春から「配給しちゃいかん」と伝えてあるのに、今この時期になって話を公にするとは、カンヌを前にしたムーアの宣伝行為だ』と批判。ムーアは、『Miramaxからすべての交渉手段がボツになったと聞いたのはこの月曜日だもんね』と反論しているが、さて。私は、この時期にムーアがこの話を持ち出したのは彼の戦略である説に一票である。いやぁ、ウマイ!! Miramaxは他の配給会社を探す権利は残されているから配給会社探しということになるが、どうやらすでに他で話がまとまりつつあるらしい。要するに、ムーアもMiramaxも抜き差しならなくなって立ち往生なんて状況では決してない。ムーアのホームページのコメントも調子が軽い。ムーアもMiramaxもこの話を暴露するタイミング、最大限に効果のあるタイミングを待っていたのだ。カンヌ映画祭を来週に控え、18ミリフィルム部門でノミネートされているこの作品は、もちろんもう出来上がっている。もう何がどうなっても、この映画は公の場で公開されるのだ。マイケル・ムーアは金儲けのために映画を作っている人ではない。彼の肩書きはもともとJournalist/Activistで、今のようなFilmmakerになったのは、2003年のアカデミーを受賞した後のことだ。彼の映画作りの目的は彼の主張を人に伝えること。それもできるだけ多くの人に。たとえディズニーに“PR Stunt”呼ばわりされようとも、きっと彼はせせら笑ってるに違いない。だって彼の目論みは大当たりなんだから。実際、このニュースは、ロイターが結構詳しく配信し、New York Timesも、イギリスのIndependentも長文で詳しく報じている。CNN Headlineニュースではムーアがライブインタビューにまで出てきた。フィルムはすでに出来上がっていて、カンヌ映画祭は来週に迫っている。大統領選挙年の真っ只中で、イラク戦争への批判がようやく渦巻きはじめた“今この時期”じゃなければ、このニュース、こんなに騒がれることはなかったのだ。この騒ぎで、多くの人がこの映画の存在と完成を知り、ブッシュを好きでも嫌いでも、ムーアを好きでも嫌いでも、この作品を見てやろうと思うだろう。CNN Headlineニュースには大笑いだった。最近じゃ政府の提灯持ちチックなCNNだから、ムーアのネタをムーア側に好意的に紹介しているわけではない。しかしここでもムーアはやってくれる。いつもは態度のでかいアンカーのお兄ちゃんも、しゃべりまくるムーアにリードをとられてやられっぱなし。しかも、CNNとしてはアカデミーのステージで『ブッシュ恥を知れ』とやっちゃう“要注意人物”のインタビューだからできるだけ温厚に行きたかったのだろうが、そうは問屋が卸すわけがない。ムーア、スラスラ流暢にディズニーとフロリダ州との関係によるものだと説明していたと思ったら、その流れのなかでしっかり『ディズニーはThe Bush Familyを恐れているんだよ』と名指し批判を盛り込む。友人達とライブ放送を見ていたのだが、もう大爆笑。さすがのCNNも前後があまりに自然に流れているだけにそこだけ編集カットすることはできなかったと見えて、2度目の録画放送の時には、インタビューの後半部分はカットしていたのに、その部分だけは削られることなく流されていた。そう、これがムーアの戦略なら大成功だ。ベストなタイミングを選んで情報を出す。万全の態勢で望んでいるから状況の推移を自分の側でハンドリングできるし、取材にもどんどん応じるようにするからマキシマムのアウトプットを実現できる。Public Relationsとは定義したくないが、パブリシスとしては完璧だ。CNNのニュースタイトルは 『Michael vs. Mickey』になっているが、きっとムーアはこれ以上ディズニーに固執することはないだろう。ディズニーは今やネットワークTVのABCをグループに持つ。ABCに限らずアメリカの大きなメディアは巧みにホワイトハウスに首根っこをつかまれている。戦争時はなおさらだ。そんなABC-ディズニーが、きっと強烈な現政権批判を盛り込んでいるに違いないムーアの映画を配給するなんてできるわけがない。そんなことくらい、きっとムーアは計算済みだと私は思う。***今夜は三十路会で久々の食事。S女史も今日で期末のタスクを終了されたし、今はオハイオで教えていらっしゃるI女史も博士論文のディフェンスのため今夜街に戻られた。お忙しい中Y女史も駆けつけてくださり、もうひとり友人を交えて、食べたり飲んだりしゃべったりで午前1時頃までゆったり楽しんだ。こんなにゆっくりした気分も、数ヶ月ぶり。しみじみ、楽しかった。***マイケル・ムーアがうちの大学で講演した時の様子はこちらから***マイケル・ムーアのホームページより***Wednesday, May 5th, 2004Disney Has Blocked the Distribution of My New Film... by Michael Moore Friends,I would have hoped by now that I would be able to put my work out to the public without having to experience the profound censorship obstacles I often seem to encounter.Yesterday I was told that Disney, the studio that owns Miramax, has officially decided to prohibit our producer, Miramax, from distributing my new film, "Fahrenheit 9/11." The reason? According to today's (May 5) New York Times, it might "endanger" millions of dollars of tax breaks Disney receives from the state of Florida because the film will "anger" the Governor of Florida, Jeb Bush. The story is on page one of the Times and you can read it here (Disney Forbidding Distribution of Film That Criticizes Bush).The whole story behind this (and other attempts) to kill our movie will be told in more detail as the days and weeks go on. For nearly a year, this struggle has been a lesson in just how difficult it is in this country to create a piece of art that might upset those in charge (well, OK, sorry -- it WILL upset them...big time. Did I mention it's a comedy?). All I can say is, thank God for Harvey Weinstein and Miramax who have stood by me during the entire production of this movie.There is much more to tell, but right now I am in the lab working on the print to take to the Cannes Film Festival next week (we have been chosen as one of the 18 films in competition). I will tell you this: Some people may be afraid of this movie because of what it will show. But there's nothing they can do about it now because it's done, it's awesome, and if I have anything to say about it, you'll see it this summer -- because, after all, it is a free country.Yours,Michael Moore