|
カテゴリ:小悪魔(長女「堅実」)系のネタ
彼女は、帰ってこなかった。
「おいしいもの食べてんだろうね」 夕飯のときに「奔放」がボソっと言った。 彼女とは長女の「堅実」のことである。 コンクールを控えての連日の練習と夏の暑さでバテているのだろう。 ナーバスな状態が続いて機嫌が悪かったのかもしれない。 親の自分が言うのも何だが、成績は良い。 生徒会の役員でもある。 外面が良く、先生のウケがいいかわりにその反動が家で出るようなのだ。 一昨日もボクと、バトルをやってふてくされていたのだ。 そして、昨日は帰ってきて弁当箱を出さずに、今朝「弁当を作って」と家内に言い、家内は家内で呆れ半分、怒り半分でボクにこぼすのだ。 結局、「堅実」ブラスのコンクールにボクは行かなかった。 家内の母親がこっそりと出かけて様子を見てきたと言う。 「堅実」にとって祖母にあたる家内の母は、孫を溺愛している。 「溺愛」と言うと、甘やかしているように聞こえるが、教育熱心で勉強のコツを教えたのも、この祖母である。 ボクらが出かけないイベントにも祖母は顔を出し、応援してくれているのだ。 「あなたも、コッソリ出かければ良かったのよ」 そんなことを言われても……である。 何で父親がコソコソせなあかんのや、である。 結果的にボクが強情だったため、「堅実」の晴れ姿は見られなかった。 コンクールは「銅賞」だったそうである。 帰りは片付けなどで遅くなる。 そこで今日は、祖母の家に泊まりと言うことになったのだ。 ボクが仕事から帰ってくると「忍耐」と「奔放」は宿題を終えて、ゲームの最中であった。 食卓には、トンカツと餃子、味噌汁がのっている。 ボクは十分なおかずだと思うが、末っ子の「奔放」は姉の食事が気になるらしい。 家内が「ぶどうとグレープフルーツがあるよ」と言った。 「両方食べていいの」と「奔放」が聞き返す。 「いいよ」と家内。 「やりっ」 他愛のないものである。 「えっ? この餃子もいらないの」と「忍耐」が口を挟んだ。 真ん中の「忍耐」は「堅実」のために餃子を残していたのだ。 「イイらしいぞ」ボクは言った。 そう言いながら「忍耐」は箸をつけない。 テーブルには餃子が二つ残っている。 「早く帰ってこねえかな」 ボクは餃子をボンヤリと見ながら言ってしまうのだ。 「あなただって中学の時はそうだったでしょ」と家内が言う。 「オレは鬱陶しかったよ」 「でしょう。そうやって子供は親から離れるの」と家内。 「仕方ねえ、お前らあとで遊んでやるぞ」とボクは二人に言った。 「お父さん、おじいちゃんと滑り台でも一緒にやってあげれば」そう言って「忍耐」は笑った。 「何やそれ?」 「おじいちゃん、喜ぶよ」 「阿呆か、この年になって親父と滑り台やるやつがいるか」 「でも子供と遊びたいんでしょ」 真ん中の「忍耐」は、ボクが苦手で怖がっていたハズである。 それがいつの間にか、おちょくっていやがるのだ。 ボクはご飯が終わった男二人を連れて、布団を敷いてある寝室へ連れて行った。 そのまま転がして笑い悶えるまでくすぐってやった。 やっぱり我が家は5人が良いと思った。 そうなのだ「フィンガー5」や「ゴレンジャー」だって「コンバトラーV」も5人なのだ。 指だって5本である。 お父さん指、お母さん指、お兄さん指、お姉さん指、小指……あれ、弟指はなかったか? お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2005/08/08 11:58:25 PM
コメント(0) | コメントを書く
[小悪魔(長女「堅実」)系のネタ] カテゴリの最新記事
|
|