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2020.06.16
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奥田英朗の分厚い長編を読んだ。

〇ストーリー

オリンピックの前年の東京では,人々は豊かになりつつある生活に期待をし,街では建設ラッシュが進んでいた。そんな中,荒川区の資産家が殺され,金庫の中身が荒らされるという事件が発生し,警視庁捜査一課の落合は,所轄のベテラン刑事・大場と組んで捜査を続ける。一方,山谷の宿泊所と食堂〈町井旅館〉の娘・ミキ子は,ヤクザになりかけている弟・明男が,荒川区の事件の盗品を質に入れたとして警察署に連行されたと知り慌てる。事件の容疑者は,北国なまりのある青年・宇野寛治だった。落合と大場が,宇野の故郷・礼文島に調査に行った際,さらに小学1年生が誘拐されるという事件が浅草で起きる。警察は失敗を重ね,身代金は回収されるが,少年は戻ってこない。果たして犯人は?複数の事件の真相は?


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「オリンピックの身代金」の捜査一課の面々が再登場する。と言っても,オリンピックの前年の話なので,1年半前の彼らだ。

「オリンピック・・・」でも語られたように,鉄筋コンクリート造の団地が時代の最先端で,新幹線と首都高速が建設中という,東京が生まれ変わりつつあった時代の物語だ。

登場人物たちの造形も見事だと思うが,背景となる時代,その風俗と文化も併せて作品の魅力となっている。時代の空気,ホコリ,匂いまでが立ち上がってくるようだった。


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落合と岩本は警視庁でも珍しい大学出という肩書で,いろいろいじられる。一方で,合理的な考えをするし,容疑者や被害者にも共感を出来る心の持ち主だ。

仁井は岩本とコンビを組む一課の先輩で,夜の街を知るクールな刑事だ。大場は落合とコンビを組む所轄のベテランで,最初は落合をバカにしていたが,徐々に認めるようになり,一緒に事件を解決しようとする。

警視庁,所轄の複数の署,マルボウと多くの警察官が登場する。本庁と所轄の対立という単純な構造ではなく,署の間の対立,捜査一課と捜査四課(マルボウ)の対立,そして協力が描かれる。

奥田英朗の作品なので,小説っぽく足を引っ張る悪人は登場せず,誰もが真面目に仕事に取り組んでいて,刑事の群像劇でもある。


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落合刑事とは別の語り手が,山谷の〈町井旅館〉の娘・町井ミキ子だ。町井家は世話役の父親が死んだので,母親・ミキ子・明男の3人は日本へと帰化をした在日の家だ。山谷の労働者たち,チンピラ,そして学生の運動家たちが,現実主義で前向きなミキ子の視点で描かれる。

明男が殺人事件の被害者が持っていた金貨を質入れしたことで,ミキ子も一連の事件に巻き込まれることになる。

すぐカッとなりヒステリーを起こす母親,事件のたびに飛んできて警察の鼻を明かす運動家たち,チンピラからヤクザになりかける青年たち,と山谷の日常が臨場感を持って描かれる。

今回このパートが,沈みがちな作品に清涼感を与えてくれた。


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そして3人目の語り手が北海道出身の宇野寛治だ。寛治は空き巣の常習犯で,罪悪感もなく,また危機感もほとんど感じていない。明男のアドバイスで,服装を変えたり,空き巣を控えたりしなければ,早々に捕まっていたと思われる。

寛治の語りには,ところどころ抜けがあり,読者にはなかなか事件の真相が伝わらず,とてもやきもきする。この辺りのさじ加減はさすが奥田英朗で最後まで物語を引っ張る。

気の良い若者に見える寛治は,冤罪の被害者なのか?悪鬼のような殺人者なのか?それとも?


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落合と大場が2人で寛治の故郷を目指す列車旅行のくだりが,一番時代を感じさせる部分だった。東京から礼文まで2日がかりで,しかも寝台車ではなく4人掛けのボックスシートで足を伸ばして寝るのだ。

同じ日本なのに,驚くほどの距離と時間。これがオリンピック前の日本の実情だったのだろう。

良い部分も悪い部分も併せて,時代を感じさせる作品だ。ラストがやや弱い気もするが,傑作と読んで間違いないと思う。

オススメだ。





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Last updated  2020.06.16 10:00:07
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