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カテゴリ:がちがちハードボイルド
矢作俊彦の中編集を読んだ。
〇ストーリー 夜の横浜で水商売の人々の車を60台,一定間隔で少しずつ移動することで駐車違反を回避するという仕事をしている〈私〉には,不思議といろいろな事件解決の依頼が舞い込むのだった。 ーーーーーーーーーー 矢作俊彦,横浜,ハードボイルド・・・もうそれだけで一定のスタイルが確立されている。 たぶん刊行された1984年で,すでにその時代と合っていないはずだ。何しろ,ベトナム戦争どころか,朝鮮戦争の横浜を懐かしむ作品なので。 今となっては,当時の時代ギャップ感は把握できないが,現代とのギャップを感じつつ,ある程度ファンタジーが入った〈矢作俊彦のヨコハマ〉を堪能できる作品の1つだ。 ーーーーーーーーーー 少し野暮を言えば,日活映画ノスタルジーからは離れつつも,二村シリーズに組み込むほどのプロットがない,みたいな作品群で,だから中編なのかな,とも思った。 紹介文のような”掛け値なしの傑作”とは,全く思わないけれど,〈矢作スタイル〉はきちんと端々まで浸透している。 もう後は,好きか嫌いか,だと思う。 ーーーーーーーーーー 各編について簡単に感想を述べる。 「船長のお気に入り」:病院の跡取りから依頼されたのは,妻の妹の所在を突き止めることだった。その少女は,厳格な女子校の真面目な生徒なのに,夜の店で遊んでいたという噂もあった。小さなキーワードをもとに〈私〉がたどり着いた場所は?・・・横浜の独特の地理を背景にした中編で,結構傑作だと思う。理解できない部分を女性だから,と片付けるのはハードボイルドだからか?時代だからか?それとも真理? 「さまよう薔薇のように」:急にいなくなった顧客の車から,カバンを預かった〈私〉は,コワモテの男たちに脅されることになる。車のエンジン輸出,画家の男,ホステスの女をめぐる謎の結末は?・・・表題作で謎解きは面白いが,個人的にはカロリー過多だった。もうちょっとだけまともな登場人物はいないのか? 「キラーに口紅」:〈私〉が担当していた車のトランクに死体が入っていた。トラブルを回避しようとしたのに,今度は車に仕込まれた爆弾が爆発してしまった。どうする〈私〉?・・・二村っぽい中編なのに,もう1つ光る展開を見せない。矢作俊彦は,このシリーズをどう発展させようと思っていたんだろう?
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Last updated
2020.07.29 21:28:07
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