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September 3, 2006
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カテゴリ:ホラー映画
 ある休日の昼下がり、一人で留守番をしていた。家の中はがらんとしており、テレビで「悪魔の棲む家(1979)」を放映していた。ラッツ家は、1年前に一家残殺が起こった家に引っ越してきた。神父やシスターがラッツ家を訪れるが、虫が異常に集まってきたり、ひどく気分が悪くなったりして、家の中にいることができず、ぶっ倒れそうになりながら、逃げ出してしまう。さらに続く奇怪なできごと・・・。
 そんな展開を見せているとき、玄関チャイムが鳴った。出てみると、若いが、陰気そうで、小汚い身なりをした男が立っていた。
「あなたぁ、神うぉ、信じますくぁあ?」
「は?」
「これぁ、神にぃついてぇ、書かれたぁ本どぇす。買いませんかぁ?」
 それ以前、やはり一人でいるときに、おばさんの集団が、宗教の本を売りに来たことがあった。断りきれず家の金で買ってしまった (300円だった)。後で母に、「こんなもの買ってどうするの。欲しかったら自分のお小遣いで買ってよね!」と罵倒された。(たかだか300円で激昂しないで)。
 だから、即座に「い、いりません」と応えた。
 おばさん宗教集団は、強引だった。科学はウソで固められており、この本には神の真実が証明してあるなどと、「?」なことをかわるがわるにまくしたてた(それで買ってしまうのは情けない)。だから、この若い男も、しつこく勧めてくるのだろうと覚悟をした。
けれど男は、「すぉうどぇすかぁ」と、上目遣いに人の顔を見て(そのとき、ニヤリと笑った気がした)、あっさり踵を返した。無言のうちに「祟られてもぉ、知りませんよぉ」とのくらーいメッセージを送っているような気がして、怖気が走った。なにせ、だれもいない家でオカルト映画を見ているというタイミングだったからね。
 大胆不敵にも神様の本を買わなかったが、そのせいで、全身に虫がたかったり、体調を崩したりなど、呪われたと思われるできごとはなかった(何をしてもついてないのはいつものことだ)。だが、その男の訪問は、映画「悪魔の棲む家」より恐かった。
 ホラー映画の中では、オカルト系統の映画はあまり趣味ではない。好きなのはモンスター系である。たとえば、ボリス・カーロフ演じるフランケンシュタインの怪物の異様な風貌は、映像でなければ伝わらない。それにくらべると、虫が集まったり、気分が悪くなったり、だれもいないのに椅子が動いたりなどといった恐怖表現は、文章でもできるだろう(これは単に好きずきの問題です、もちろん)。低予算を逆手にとって、恐怖表現を工夫したとの評価もあるようだが、何かビンボー臭く見えてしまうな。
 「悪魔の棲む家」のオリジナル版では、邪悪な存在が特に姿を現さない。それに対してリメイク版(2005)では、血まみれ男や頭に銃瘡のある少女が登場する。それだから、リメイク版の方を支持するかというとそうではない。宗教的な理解が不足しているせいかもしれないが、両方ともあんまり恐いとは思わなかった。
 日本映画の「呪怨(2003)」は、「悪魔の棲む家」を元ネタにしていると思う。こちらは、「伽椰子」(モンスターとはいわないか。キャラクターに止めておくべきか)が登場し、佐伯家に足を踏み入れた者を、執拗にとり殺してしまう。
 ところがアメリカの本家本元は、恐怖のできごとは積み重なるものの、家族は、生き延びる(ごめん。ネタバレです)。実話の映画化だから、そのへんも事実に忠実にしたのでしょう。
 一家の結末を見れば、実際に起こった1年前の惨劇の方が恐いと思うんだけど、なんでそっちよりもラッツ家の方が話題になったのだろう。男が売りに来た宗教の本を買わなかったことで、もし、こちらが怪我をしたり、病気なったりでもしようものなら(それが単なる偶然であっても)、すごくコワーイでしょ。
 もしかして、「家」自体が、存在を広く世間に知ってほしくて、生き証人を残したのか?
 (「悪魔の棲む家2(1982)」は、過去に遡って、1年前の惨劇の映画化だとのこと。じゃあ、今度見てみましょう。)





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Last updated  September 3, 2006 05:17:10 PM
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