|
テーマ:DVD映画鑑賞(14216)
カテゴリ:ホラー映画
フランケンシュタインのモンスターには、強い思い入れがある。
ドラキュラや狼男は、元来魔物であったり、呪いの産物であったりする。人智の及ばない妖怪変化なわけだ。しかし、フランケンシュタインのモンスター(以後Fの怪物)は、医学の知識をもって死体を接合して、人造人間として再生されたものだ。墓場から死体を盗んでくるという、タブーを無視した人間の行為も、この上なくおぞましい。 フランケンシュタインという名前からして、不気味であり、怪物の雰囲気に見事にマッチしている。これがスミスの怪物とかマクドナルドの怪物なんかだったら、全然迫力がない。そもそもフランケンシュタインという名前は、実在するのだろうか、架空のものだろうか。フランケンハイマーやアインシュタインなどは、実際にあるけれど。 さらに、Fの怪物は、巨漢の怪力である。当方のプロレスに対する嗜好に合っているのかもしれない。 いずれにしても、子供の頃から、しばしばFの怪物を目にした。鉄腕アトムのフランケン、鉄人28号には、不乱拳博士の人造人間モンスターが登場する。父親が機嫌のいいときは、ユニヴァーサル・ホラーのテレビ用短縮版シリーズ「ショック」を見せてくれた。ドラキュラも狼男もミイラ男も、漫画などの登場するものではなく“本物(本家というべきか)”は、この番組で初めて見た。 「ショック」で見たFの怪物は、今思うと「フランケンシュタインの復活(1939)」だったようだ。ラストで片腕の警察官が、ターザンのようにロープに捕まってFの怪物に体当たりし、煮えたぎる液体の中に突き落とした場面を覚えている(こういうことは、しっかり頭に残るんだよな。教科の学習は、すぐ抜けてしまうけれど)。 そのほかに、東宝特撮の「フランケンシュタイン対地底怪獣(1965)」、「フランケンシュタインの怪獣サンダ対ガイラ(1966)」は、リアルタイムで見た。Fの怪物を巨大化させて怪獣と戦わせるなんて、さすが東宝だ。 Fの怪物を贔屓にしたのは、その造形にも惹かれたからだ。ドラキュラはただの外国人だし、狼男は毛むくじゃらの獣人にすぎない。けれど、Fの怪物の四面超絶壁頭、突き出た額、ボルトの刺さった首筋などは、比類なき創造性の表出ではないだろうか。 このように熱烈なFの怪物ファンだったので、ユニヴァーサル映画の元祖「フランケンシュタイン(1931)」を始めとするシリーズをちゃんと見たいと思っていた。1980年代に、念願かなって、ようやくビデオで第一作と第二作(「フランケンシュタインの花嫁(1935)」)を見た。ところが、期待が大きすぎたのか、Fの怪物については、思っていたものとはズレがあった。もっと凄みと動きのあるモンスターぶりを想像していたが、意外に静かだった。 それでも、月日を重ねても、Fの怪物への思いは断ち切りがたく、最近「フランケンシュタインと狼男(1943)」「フランケンシュタインの館(1944)」のDVDを購入した。 「Fと狼男」では、狼男=ローレンス・タルボットによって、氷づけのFの怪物が発見される(実際は氷の壁の向こう側にいた)。物語の中心は狼男である。Fの怪物はといえば、ワイン祭りで賑わう村に突如として姿を現し、村人をパニックに陥れる。そして、ラストの狼男との対決が見せ場となる(約5分間だけなんだけど)。 この映画で、Fの怪物は、誰も殺していないんだよね。Fの怪物と素顔のタルボットが潜む城へフランケンシュタインの孫娘たちが訪れたときも、丸太をもって威嚇するのだけど、タルボットに制止させられて、おとなしく引き下がるし。同じ巨漢のジェイソンなんかが、手当たりしだい、血しぶきを上げて殺戮を繰り返すのを見慣れてしまっているからか、Fの怪物の恐さや悪さがよく伝わってこない。 タルボットが狼に変身するのを防ぐために、フランケンシュタイン博士の残した機械を使って、エネルギーを抜くことになる。このときに、Fの怪物の首に刺さった電極に、プラスとマイナスを逆にしてつなげる(そのすると、エネルギーを抜くことができると、フランケンシュタイン博士の記録ノートに書いてある。なんだかよくわからないけど)。タルボットとFの怪物はベッドに寝かされている。普段は狼化を恐れるタルボットが、治療のために進んでベッドに入ったのはわかる。麻酔でも打たれて眠っているのだろう。 しかし、なんでFの怪物まで赤子のように寝ているのだ?だれが、どうやってベッドに入るよう諭したのだろう。説得したのはタルボットだろうか。怪物はタルボットの言うことなら、何でも聞くのか。そして、Fの怪物にも麻酔が効いたのだろうか。なんか凶暴なモンスターのイメージが崩れるぞ。 ジェイソンの虐殺に走らなくてもいいから、怒りのあまり、怪力で破壊の限りを尽くすなど、もっと恐怖のパワーを見せてほしかったよ。 当時この映画は、大ヒットしたそうだ。気をよくしたユニヴァーサルは、翌年に続編をつくることになる。「Fの館」だ。今度は、Fの怪物、狼男に加えて、吸血鬼ドラキュラまで登場する。ところが、このドラキュラ、前半で早々に姿を消す。しかも、日光を浴びるという致命的な滅び方だ。 こちらは、三大ホラースターの共演を期待していたので、ドラキュラは、後半できっと復活してくると思っていたが、それ以後は姿を見せなかった(太陽の光をモロに受けちゃったもんね。できないよね)。 さて、Fの怪物と狼男は、またもや氷の中で発見される。前回、二大モンスターは、バトルの最中にダムが決壊して激流に飲まれた。そのまま冷凍地下洞に運び込まれて、力尽きたらしい。今度は、しっかりと氷柱の中に閉じ込められている。 フランケンシュタイン博士もどきのマッド・サイエンティスト(以後MS)とその助手が、氷を溶かす。どんどん火を焚くと、氷柱だけが解けていく。なぜか、地下洞のツララや氷壁は溶けない。そして、狼男が蘇る。Fの怪物は弱ったままだ。 ちょうどその夜は満月。ローレンス・タルボットは、狼男に変身し、不本意な殺人を犯す。翌日、悩むタルボットを見て、ジプシーの娘が気の毒に思った。その夜彼女は、銀の弾丸で、狼男に止めを刺す。これで、二大モンスターの共演も消えた。 同時進行で、Fの怪物を復活させようと、MSが高圧電流を送る。ようやくパワーを得たFの怪物、しかし、助手が、蘇生の恩人であるMSを殺害せんとする。怒ったFの怪物は、助手を頭上高くに持ち上げ(おお、こんな姿が見たかった)、窓から放り出す。 そこへ村人たちが、駆けつける。「怪物は火に弱いぞ」松明をつきつけられて、MSを抱きかかえたFの怪物は退避する。行き着いたところは、底なし沼、Fの怪物とMSは、ズブズブと沈んでいくのであった、って、全然いいところがないじゃないか。 昔の人は、我慢強かったのだと思う。おめあての怪物の活躍というよりも、スクリーンに登場したその様子を見るという時代だったのだろう。今のように、最初から見せ場のラッシュではなかったわけだ。多分当時は、「Fと狼男」の対決シーンなど、物足りないと感じるより、おお、二大モンスターが闘っている!と受け取ったのでしょう。 1950年代のかすかな記憶をたどると、テレビシリーズの仮面のヒーローが、毎回ほんのわずかしか顔見せをしなくて、ほとんど活躍場面がなくても、登場しただけで喜んだことを思い出す。プロレスの必殺技も、今のようにオンパレードではなく、試合の中で一発しかでなかったものなあ。 つぎは、未見の全長版「フランケンシュタインの復活(1938)」や「フランケンシュタインの幽霊(1942)」を見るぞぉ(って何も力むことはないだろ)。期待する、強くて恐いフランケンシュタインの怪物の勇姿が、あるかもしれない。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
[ホラー映画] カテゴリの最新記事
|