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October 22, 2006
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カテゴリ:ホラー映画
 中学生のとき、社会科の授業などで「日本も核を保有すべきだ」などと発言したことがありました。ときは安保反対闘争前直後、日教組全盛時代でした。発言は職員室の話題になり、先生たちからは、危険思想の持ち主とマークされました。過激な発言をすることで、アウトローを気取っていただけなのに。
 たとえば、「ゴジラ(1954)」は、反戦、反核をテーマにしているから、いい映画だとする評価があるようです。しかし、観客として見たいものは、スクリーン上で、あたかも現実かのように大怪獣が暴れまわる様子です。時代的に、戦争や核兵器に対する感情を抜きに映画を作ることはできなかった、という説明は十分理解できるところですが。
 ベルリンの壁が崩壊し、反核というテーマも切実感がうすれてくると、今度は環境破壊がクローズアップされてきました。
 あるコンサートで、ひとりの歌手が、歌の合間に、今の地球にとって環境保護がいかに大事か、自分はどのように環境保護に取り組んでいるかを気持ちよさそうに語りました。その時間の長いこと。話ばっかりで時間がどんどん過ぎていき、歌がちっとも始まりません。そろそろ次の歌手の出番かなと思っていると、持ち時間など無視して環境の話ばかり。「つぎの曲は・・・」といわれたりすると、まだ歌うつもりか、さっさと引っ込めよ、と言いたくなってしまいました。
 反戦、反核も、環境保護も、悪いことでなありません。新聞の読者投稿欄などには、頻繁に取り上げられてきました。反論はできない主張です。けれど、反戦、反核や環境保護をとりあげた映画であったら、何でもエモーションを刺激されるというわけではありません。志はりっぱかもしれませんが。
 「昆虫大戦争」では、核爆弾を搭載した某国の爆撃機が、飛んできます。この爆撃機、かなりの問題があります。乗組員には、なんと麻薬中毒患者がいるのです。戦争の恐怖からトリップするうちに常習者になってしまったようです。ヤクが切れて暴れてレバーを押し、核爆弾を投下しそうになったりします。核爆弾の輸送をしている飛行機の中で「麻薬、麻薬をくれえ」とわめくヤク中兵士に対して上官は「打ってやれ」です。どういう管理体制なのでしょう。
 そんなやりとりをしていると、昆虫の大軍が襲ってきて、日本の離れ小島に墜落します。
 なぜ、昆虫は爆撃機を襲ったのか、生物学者南雲が追究する。毒虫に咬まれた人間は、強烈な幻覚作用に襲われ「ジェノサイド(人類滅亡)」とわめく。南雲は自ら毒虫に刺されて、幻覚作用の中から、秘密を探ろうとした。
 「先生、やめてください。そんなことをしたら、死んでしまいます」「大丈夫だ、10分以内にこの解毒剤を打てば助かる」南雲は、解毒剤を開発していたのだ。幻覚の中で、虫の思考を感じる。「地球は人間だけのものじゃない。人類が自分の核兵器で滅ぶのは勝手だが、我々が巻き添えを食うのはご免だ。人間を殺せ」
 こういう挿入句入りの文章を虫にしゃべらせないでほしい。ヒッチコックの「鳥(1963)」では、突然鳥が人間を襲いだすが、理由は明確にされていません。それが恐さにつながります。だから、「虫は、生存本能によって核の威力を感じ取り、排除しようとしている」くらいにしておいたらどうでしょうか。
 南雲が咬まれた毒虫は、じつは生物兵器でした。離島で、東側の生物学者が、島の毒虫をパワーアップして繁殖させていたのです(日本国内で、東西両陣営が暗躍していたのですね)。東側のアジトで毒虫育成科学者アナベルが南雲に銃を突きつけます。威嚇した銃弾が毒虫のガラスケースに穴を開けてしまった。そうとは知らず、南雲に繁殖場所である地下室の蓋を開けさせます。飛び出す毒虫。アナベルが襲われた。逃げ出す南雲。ここで言いたい。地下室へ通じるふたを閉じてから逃げろよ!その余裕はあったぞ。開けっ放しじゃあ、毒虫に島民を襲ってくださいと言っているようなものじゃないか。解毒剤があるからいいという展開のつもりか?
 ヤク中に核爆弾を管理させたり、毒虫をあからさまに解放したり、なんかイージーに危機をあおる映画だなあと思いました。あんまり安っぽい設定じゃあ、核や殺人昆虫への、スリルやサスペンスを感じません。
 ところが、予期せぬラストがありました。核爆弾を捜索していた某国の軍人たちは、めあてのものが見つからないとなったら、飛行機に乗って、あっさりと上空からリモコンで核を爆発させてしまったのです・・・。その直後、軍人たちの飛行機は、虫に襲われて大破します。
 人間は、そのときどきの状況や都合などで行動するものです。しかし、核爆弾は、状況にも都合にも関係なく、起爆装置が働けば、確実に破裂します。そして、とんでもない破壊と汚染をもたらしてしまいます。先ほど安っぽい設定と感じたヤク中の核管理や毒虫地下室開けっ放しのだらしなさ(それらは誇張された人間行動である)と融通のきかない核爆弾、そこに意図的な対比を読み取ってしまい、エモーションを刺激されました。
 核爆弾が爆発する前、妊婦が舟で離島から立ち去る。爆発が起こるなんてことはまったく知りません。
 爆発後、舟は、海原に止まっています。祈るようなしぐさの妊婦の背後に、きのこ雲が立ち上っているのが見えます。
 妊婦が生き残るのは、何らかしらの希望のようにも受け取れるし、先々の人類の苦難を予兆しているようにも見えます。明るい未来はあるのか。

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Last updated  October 22, 2006 07:47:21 AM
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