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テーマ:DVD映画鑑賞(14214)
カテゴリ:ホラー映画
「フランケンフィッシュ」とは、これまたイージーなタイトルだ。要するに怪物魚なんでしょ。ドラキュラフィッシュじゃあ血を吸うことに的が絞られてしまうので使えない。狼男フィッシュやミイラ男フィッシュではおかしい。それはなんじゃ、と言いたく。やっぱりモンスターを代表するのは、フランケンシュタイン(の怪物)だ。しかし、フランケンシュタインフィッシュは言いにくい。長いしシュが二つもある。シュタインというのは、日本人的には「死体」を連想する(Fの怪物は「死体」をつなぎ合わせてつくられた、なんてこじつけたりして)。だからフランケンのシュタインではなくフィッシュなのだ。どうせまた日本の映画会社が考えたのだろう。
と思ったら、原題も“FRANKENFISH”。さらに調べると、フランケンフィッシュとは映画のための造語ではなく、「遺伝子組み換え魚」の用語であることがわかった。元となったのはバイオテクノロジーによる遺伝子組替え食品をフランケンフード (Frankenfood)と呼んだことから。いうまでもなくフランケンシュタインの怪物は人造人間なので、“人造”を強調して食品や魚にも使われたのだ。もちろんホラー的な、恐い意味合いである。映画や小説に登場する怪物ならいいけれど、身近な世界に(口に入れたくないぞ!)フランケンは登場してほしくはない。 怪物魚といえばジョー・ダンテ「ピラニア(1978)」とその続編のジェームズ・キャメロン「殺人魚フライング・キラー(1981)」などがあるけれど、あまりおもしろい題材とは思えない。水に近づかなければ襲われないだろうってことで、地域限定恐怖になってしまう。だからフライング・キラーでは、“空飛ぶピラニア”に改造しなければならなかったのだろう。知らない間に近所のスーパーなどでフランケンフードが売られているとしたら、そちらの方が恐いよね。どこへでも忍び寄る恐怖だ。 「フランケンフィッシュ」は日本では劇場公開されなかった。劇場未公開というと、80年代には「ビデオドローム(1982)」や「ブラジルから来た少年(1978)」などを輸入ビデオで見た充実体験がある。さらにマニアを気取って「RE-ANIMATOR(1985)=ゾンバイオ死霊のしたたり(1987日本公開)」なんかも見て、悦に入っていたものだ。作品そのものよりもみんなの知らない「日本未公開」のものを見ることに価値を感じていたと思う。 劇場未公開で、ビデオやDVDになる作品は、簡単にいうとそれだけ集客力がないということだ。集客力がない中には、作品としてガッカリするものと隠れた名作(一般受けはしない)がある。はずれの方が、とことん多いけれど。劇場にかからなかった「フランケンフィッシュ」はどうだろう。 主人公のサムは検視官だ。沼で食いちぎられた死体が発見される。サムは検視官なのに、沼に出向いて調査にあたる。普通検視官は、他の警察官とチームを組むと思う。検視官だけが、単独で捜査まがいの行動を取ることがあるのか。検視官に同行する生物学者メアリー(野生生物・漁業省の役人→アメリカにはそんな役所があるのか?)からは「検視官なのに、拳銃をもってるの?」と聞かれる。「今回は何があるかわからない」そうだが、検視官の職務を超えていることがわかっちゃいます。なんで検視官に設定したのだろう。その後の行動で、もっと検視官らしい活躍の場をつくってやれば、そんなこと言われなくてよかったのだけれども。 サムとメアリーは、ボートで沼地を行く。案内の猟師が、うっかり沼に落っこちる。突然水中の何物かにものすごい勢いで引っ張っていかれる。「ギャー」猟師の悲鳴が耳に残る中、メアリー「何なの?」サム「わからないけど早く離れよう」と急いでボートを旋回させて逃げて行っちゃいます。行くなよ!警察関係者なんだから。猟師の後を追っていって、助けようとか、何の仕業か確かめようとかしないのか。 それから、生物学者のメリーは、当然サムといい仲になると思っていたら、あっさり途中で姿を消してしまいます。意表をつくというか、予想を裏切るというか。 そのほか数々のボケ・シーンがあります。見てのお楽しみ。 そんな感じで、この作品にはガッカリ系の色合いを感じていたわけです。 舞台は、船着場のある町から、プレジャーボートというのでしょうかエンジンつきのボートで4,5時間行った先の無線も通じないという沼地の奥。ちょっと日本の感覚ではよくわからないような場所に、なんと数世帯、家を浮かべて住んでいる人たちがいるのです。アメリカ映画にはキャンピングカーで暮らす人が出てきますが、この場合はキャンピングボートとでもいうのでしょうか、スクリューがついているものもある。二階建てのけっこう大きな家です。にしても、ワニなんかも見かけるんですよ。うっそうとした沼地ですよ。蛇だったら家の中に侵入しくるだろうし、湿気だってひどいだろうし、なんでそんなところに住もうなんて気になるのかね。 そこをフランケンフィッシュ(以後FF)が襲ってくるのです。これは逃げ場がない。水面を覗き込むと、すかさず鋭い歯で頭をもっていかれる。ボートで逃げようとしても、動くものに反応してFFが体当たりをぶちかましてくるから、簡単に転覆させられてしまう。家の中にいれば安心なんてもんじゃない。床板も壁板だってぶち抜いて破壊する。肺機能も備えているから、水から上がってもジャンプしたり這い回ったりして人に喰らいつく。人間たちは、屋根の上に避難するしかない(さすがにFFも階段は登れない)。しかもFFは一体ではない!FFとは何なのだ。一難去ってまた一難。連続するピンチ。サムたちは逃れられるのか? これは水上の「トレマーズ(1989)」だ。「トレマーズ」は、砂漠の中にある町を舞台にしている。多数の巨大地中生物“グラボイス”が、地下を動き回って人を襲う。地上を動く音を聞きつけて突然地上に現れ牙をむくので、岩の上や建物の屋根の上に避難するしかない。外界から孤立させられた住人たちは、どうしたら助かるのか? 「フランケンフィッシュ」と「トレマーズ」に共通するのは、閉鎖的な空間を効果的に使っている点だ。隔絶された場所に人が閉じ込められ、そこへ正体不明の怪物が襲撃してくるという恐怖、そしてそこから逃れるためのあの手この手の戦いである。 そう、“地域限定恐怖”を逆転の発想で、危機感あふれる展開にしたわけだ。怪物魚には水のあるところに近づかなければ襲われることはない。だが、水から離れられないのであれば、怪物魚の恐怖は極限に達する。数々のボケは帳消しにしよう。今回の劇場未公開は当たりだったね。 これだからジャンク映画ハンターはやめられない。 毎週日曜日の朝には必ず更新しています。つぎも読んでくれたら嬉しいです。 人気blogランキングに参加しています。クリックしてね。 ご協力、よろしくお願いします。 みんなブルース・リーになりたかった お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
January 2, 2007 06:36:00 AM
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