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January 21, 2007
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カテゴリ:ドラマ
 困るんだよね、こういうタイトルは。「イン・ハー・シューズ」。“彼女の靴の中”って何なの。臭うってこと?キャメロン・ディアス主演だから、そんなお下品な訳はないし。
 慣用句を調べたら、in a person's shoesで「人の立場に立って、人に代わって」だってさ。例文として「I wouldn't like to be in your shoes for that. 君に代わってそんなことを引き受けるのはごめんだ」「Can you put yourself in his shoes for a while?ちょっとの間彼の身になってみることができますか」があった(新グローバル英和辞典)。ちょっとわかってきたぞ。
 登場するのは、エリートだが見栄えのしない姉ローズと美人だがすれっからしの妹マギー。二人は、まだ幼い頃に母親を亡くしている。弁護士のローズは、マギーが泥酔したときに迎えに行ったり、定職のない彼女のために仕事を探してやったりする。けれども、マギーは、ローズの洋服やアクセサリーを勝手にもっていってしまう。人からお金を盗ることもなんとも思わない(しかし、単なるあばずれではなく、難読症、学習障害という同情を誘う面をもっている。人物造形の奥が深い)。マギーは、ローズがようやくつかんだ男とベッドイン。現場を発見した姉はついに大激怒の大魔神。姉妹は決裂する。
 なんだか東宝映画「フランケンシュタインの怪獣 サンダ対ガイラ(1966)」を思い出すなぁ。前作「フランケンシュタイン対地底怪獣バラゴン(1965)」の続編的な作品だ。地底怪獣と闘ったフランケンシュタインの怪物のクローンが、海の怪獣ガイラとして人間社会に出現した。肉食、凶暴なガイラは、自衛隊の攻撃を受け山岳地に逃げ込む。追いつめられたガイラを救ったのは、同じクローンである山の怪獣サンダだった(正確を期すと、ガイラは、サンダの細胞が川を下って海へ流れ着いて成長したものだ)。サンダは、穏やかな性格で、山奥に隠れ住んでいた。限られた同族の危機を感じ、救出に現れたのだ。
 サンダは自分の住み家へガイラを連れて行き、面倒を見る。しかし、ガイラは人肉喰らいであった。こっそり人間を襲っていたガイラだったが、ついにサンダに見つかってしまった。サンダは大激怒、ガイラと大激闘(大、大ってうるさい?)。
 どうです。ふたつの映画は似ているでしょう。
 サンダとガイラは、特撮史上に残る迫力あるバトルを展開し、街中から海の中へ。海底火山の爆発に巻き込まれ、行方しれずに・・・。
 マギーとローズは、決裂して終わるわけではない。ドラマは続く。マギーは、ふとしたことからまだ見ぬ祖母エマ(シャーリー・マクレーン)が生きているとわかり、訪ねていく。
マギーは、エマと一緒に老人施設で働く。最初は女優になるという遠大な夢を語るマギーだが、老人たちとのふれあいや自分を頼る人たちがいることで、地道な生活の中に自己の存在感を味わうようになる。さらに、老人に本の読み聞かせをすることで、難読症も徐々に克服していく。
 一方のローズは、見栄で勤めていた法律事務所を辞め、犬の散歩で報酬を得て、のんびりと生活する。さらに、新しい恋も芽生える。
 兄弟、姉妹の性格は、親の気を引くことを目的に形成される場合が少なからずある。優等生の兄(姉)をもった弟(妹)は、やんちゃぶりを見せる。上の子と同じ土俵に上がって不利な勝負をするよりも、確実に自分の方を向いてくれる方法を選択するのだ。逆に、上の子は、もっと勉強に打ち込み、よい成績をとりたいとがんばる。子供は、それほどまでに親に愛されたいと願うもの。だから、兄弟は、正反対のキャラクターに育つ。
 “In a her shoes”は、「彼女の立場に立つ」または「彼女の代わり」という意味。彼女とはいったい誰のことか。これは、ローズとマギーの母親のことだ。また、母親の立場に立っている(母親の代わりをしている)のは、ローズだ。
 ローズは、懸命に勉強して弁護士になっても、心は満たされなかった。それは、認めてくれる母親が不在だったからだ。ローズの生き甲斐は、職業柄高収入を得て、高級ブランドの靴を何足も買い集めること。ローズは語る。「食べ物は太るだけ、洋服は似合わない。靴は見ているだけで落ち着くのよね」これは、靴に母親を見ているのだ。母がほめてくれない代わりに、高価な靴をそろえることで満足感を得ようとしていたわけ。
 さらに、マギーは、大切なローズの靴を勝手に履いていって、かかとを壊したりする。マギーの靴をローズが履くことはない。マギーは、すっごくローズに甘えているといえる。
 決裂したローズとマギーだが、エマに呼ばれたことで再会を果たす。ローズは成長したマギーを見て告白する。「6歳にの子にママが自殺したなんて言える?」マギーは初めて母の死が自殺だったことを知った。母の死を秘密にしたときから、ローズはマギーの母親役をしてきた。この告白によって、母の死の秘密を知ったマギーは、子供から大人へ扱いが代わたのだった。同時にローズの母親役は終わりを告げる。
 母親の代役から解放されたローズは、いよいよ結婚式を迎える。エマが婚礼用に、かつて自分が履いた靴を貸してくれる。エマの靴を履くということは、エマが母親の代わりとなってくれたのだ。ローズは子供としての満足感を味わい、自分自身の子供の時間も終えるのだった。今度、だれかに靴を貸すのは、マギーだ。
 頭はいいが外見に劣等感をもっていた姉と容姿は端麗だが内面に自信のなかった妹のお互いにお互いからの自立物語でした。
 サンダとガイラは、成長の機会が得られず、悲しい末路を辿った。彼らは裸足だったからね。

 シャーリー・マクレーンが、年輪を重ねて落ち着いた佇まいを見せていた。顔立ちはチャーミングなままだが、皺々になりましたね。それを見て、キャメロン・ディアスもいずれはまちがいなくお婆さんになることを実感しました。


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Last updated  January 21, 2007 06:22:32 AM
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