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September 28, 2008
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カテゴリ:ホラー映画
 怨念とは特定の人物に向けられたときに、強烈な恐さを発揮します。それが怪談の醍醐味です。
 例えば「東海道四谷怪談」では、お岩様の怨念は、ひたすら伊右衛門に対して向けられます。なぜお岩様は伊右衛門に強烈な怨念を抱くのか。それは生前、筆舌に尽くしがたい酷い目に合わされたからです。
 お岩様は、実父を伊右衛門に殺されます。さらに、伊右衛門は敵を討ってやるとお岩様をだますのです。そして、産後の肥立ちが悪いお岩様を疎ましく思うようになります。あろうことか裕福な伊藤家の娘お梅との縁談を進め、邪魔になったお岩様に毒を飲ませてしまいます。お岩様は面体が崩れ、挙げ句の果ては不慮の事故から刀が刺さって死んでしまいます。
これではお岩様はまったく浮かばれない。
 死後、お岩様の恨みは、穏亡堀や蛇山の庵室などで、伊右衛門を追いつめ祟ります。
 お岩様はあれだけ虐げられたのだから、その怨念の深さが分かります。伊右衛門は、あれだけお岩様に悪いことをしたのだから、どれだけ恐い目に合わされても仕方ない。    
 やはり悪行には報いがあるのだなあ。ああ、恐ろしい。これが怪談の基本であると思います。

 「シャッター」はどうか。幽霊Megumiは、誰を祟って、何を恨みに出てくるのか、本当のところは最後の方までよく分からない。だからあんまり恐くありませんでした。Megumiとカメラマンのベンが、一時期恋人関係があったらしいことは分かる。そして、ベンとベンの仲間はよからぬ間柄であることもほのめかされる。けれど、Megumiが化けて出るそのねらいが不明確なので、恐怖の焦点が定まりません。だからもどかしい。
 Megumiは、何度か心霊写真に登場したりして、ついにベンの仲間を死に追いやるがそれも終盤に入ってから。ようやくラスト近くになって、ベンと仲間がMegumiに酷い仕打ちをしたことが分かる。そして、その恨みを晴らしに現れたのだということも。そこからは恐いと思いました。
 この手のストーリー展開では、恐怖と謎解きを抱き合わせで進めると、興味が沸くと思うのですが。それができんのなら、基本に忠実にやれってもんだ。その点では、オリジナルの「心霊写真(2004)」の方が、霊の狙いや復讐を順次小出しにしていったので、引き込まれるものがありました。

 それにしても、映画の中で不思議な現象がありました。ベンは左肩がやけに痛むのです。医者に診てもらっても、何ともないと言われます。そして、体重を計ると、看護婦が不思議がるほど、体重計は見た目よりずっと重い目方を示します。
 ラスト近く、ベンはMegumiの居所を探すべくポラロイドカメラで撮影をします。ポラロイドカメラが手から転がり落ちて、自分に向けてフラッシュがたかれます。すると出てきた写真には、ベンに肩車してMegumiが乗っていたのです。これはゾッとするいい場面です。
 しかし、Megumiの体重を背負っていたとしたならば、なんで首だけに痛みが走るのか。足腰にだって負荷はかかるはずでしょう。

 もうひとつ、Megumiのお母さんについて述べたい。Megumiの母の扱いは、ちょっと不自然だぞ。彼女は、Megumiが死んだと納得できず、ミイラにして家に置いたままにしていたのです。ベンとジェーンがその状態を発見するのですが、これって死体遺棄事件でしょう。娘の死によって正常な判断ができない状態にあったとしても、その母親をごく普通に、娘の死を悲しむ哀れな母親としてお葬式に参列させるのはまずいでしょう。少なくとも、警察の取り調べを受けたとか、その結果何らかの判断がくだされたとか、簡単に説明があっていいと思います。
 そんなことが気になってしまったのです。
 気持ちよく、明快に恐怖を楽しませてほしかったね。

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Last updated  September 28, 2008 06:13:59 AM
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