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October 5, 2008
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カテゴリ:ホラー映画
 この映画(「フィースト」)は、何かに似ています。同じような映画を見たような気がします。そうだ、「ミスト(2007)」やんけ!人間が建物の中に閉じこめられ、外からは正体不明のモンスターが襲ってくるという設定は、「フィースト」も「ミスト」も同じです。べつに「ミスト」に模倣して「フィースト」と、「-iスト」の部分が同じタイトルを選んだわけではないでしょうが。
 
 しかし、「ミスト」より「フィースト」の方に緊迫感があるぞ。それはなぜか。
 ミストはスーパーマーケットに大勢の人間が閉じ込められます。スーパーは広いからね。モンスターがガラスを破ろうとしても、距離を取って逃げる場所があるのです。だから、やたら伸びてくる触手みたいなものじゃないと届かない。
 それに比べ、田舎のバーは、日本の一杯飲み屋みたいに狭苦しいってわけじゃないけれど、スーパーよりは面積が限られています。それと、掘っ建て小屋みたいに安普請なのだ。だから、モンスターは容易に壁を突き破り、そこから突っ込んだ手によって人間を捕まえてしまいます。うっかり壁際や窓際の近くを歩けないから、緊迫感が漂うわけです。

 それと、「フィースト」は、閉じ込められた人数が少ない。昼日中、買い物客でごった返すスーパーに比べれば、深夜のバーに大勢の人がいるわけがない。
 人数が少ないということは、それだけ誰と誰がいるかということがよくわかります。一人一人に目が行き届くのですね。だから、一人また一人とモンスターの餌食になっていけば、後に残るのはこいつとあいつ、と頭数を勘定できるのですね。大人数を抱えるスーパーより、やはり緊迫感が漂います。

 とにかく「ミスト」は、外へ出て行かなければ、とりあえず安全なのです。スーパーの奥に引っ込んでいれば。けれど、「フィースト」は、中にいてもいつモンスターが乱入してくるかわからない。

 これだけ「ミスト」と「フィースト」を比べて「フィースト」の方を持ち上げて、「ミスト」に恨みでもあるんかい。別にない。

 しかし、「フィースト」にも、気に入らんところがある。「フィースト」は意表をついた演出で仕掛けてきました。いかにもヒーローらしい風貌で、頼もしくリーダーシップを発揮するマッチョが、あっさり死んでしまうのです。それから、いたいけな子供が、これまでの映画だったら必ず最後まで生き残るのに、あろうことかモンスターに喰われてしまう。
 とにかく、定石、パターンをはずすために、展開が読めない。予想外の、意表をつく展開を売りにしようとしたのでしょうが、ハラハラドキドキするのと同時に、登場人物に感情移入ができないのです。
 だって、我々は例えばヒーロー、ヒロインに同化して映画を見るのです。あるいは、これまでの経験を生かして先を読みながら、映画を見るのです。ところが、気持ちがこもりそうだなと思うと死んでしまったり、真っ先に死ぬかなと思ってたやつが生き残ったり、あるいはダメママが突然に目覚めてヒロインになったとしたら、気持ちのもって行き場がないじゃないですかぁ。

 最近、この手の映画は、モンスターの姿形をはっきりと見せない傾向があります。「クローバーフィースト」じゃなくて「クローバーフィールド/HAKAISHA(2008)」は、モンスターの出現理由も名前も分からなくて、ただ暴れるだけ。夜間だから、モンスターが暗闇に紛れてしいます。わずかに一瞬全体像を見せてくれるだけでした。そして、人が右往左往する様子や建物が壊れる様子で、モンスターの脅威を描いていました。
 「フィースト」も、モンスターは暗闇に蠢いていました。なんでこいつらが突然出現したのかも不明です。少し分かったのは、このモンスターは、口元のあたりがお父さん似、じゃなくて、「バイオハザード2」のネメシスに似てるかなぁということ。牙だらけともいえそうな、尖った歯が口からはみ出して並んでいるのが確認できました。けれどやっぱり全体像ははっきりみえません。見せそうで見せないスター女優のヌードみたいなものか。モンスターのデザインは、闇に紛れることを前提として、細部にわたって描かれていないのでしょう。
 「エイリアン(1979)」は、最後の最後で、とにもかくにもヌードじゃなくて全体像を見せてくれました。あるいは、体の各パーツを見せていって、観客にそれをつなぎ合わせて考えさせるような段取りを踏んでいたり、とか。
 このように、モンスターについて十分な情報が得られないけれど、その凶暴性や人間が無惨に襲われ食いちぎられることだけはわかるという内容は、モンスターの“ブラック・ボックス化”現象と呼びましょう(←どうぞご勝手に)。


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Last updated  October 5, 2008 06:44:20 AM
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