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November 2, 2008
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カテゴリ:ホラー映画
 ベビースターラーメンが好きです。今回リメイク版の「ハロウィン」を見るにあたっては、『ベビースター おとなのおつまみ えび塩味 (カシューナッツ入り)』という長たらしい名前の新製品を買って映画館に入りました。
 ベビースターラーメン(以下BBR)には、様々な種類があります。オリジナルのBBRチキンのほかに、「BBドデカイラーメン」、「BBR超ワイド麺」、ひとくちサイズの「ラーメン丸」など。さらに、とんこつしょうゆ味、札幌みそラーメン味など、味付けの異なるものもあります(知ってた?)。新製品は、必ず食べてみることにしているのです。

 このBBRの展開と映画のシリーズものは、似ているのではないでしょうか。
 例えば、映画「ハロウィン」は、1本目は1978の作品です。以後2002年までに8本の続編がつくられています。オリジナルがヒットすれば、それに続くシリーズは、同じような内容でありながらちょっとずつちがう要素を出していくことで、お客さんは見に来てくれるのです。
 BBRも同じで、新商品が出れば「へぇー、博多とんこつラーメン味かぁ、ちょっと食べてみよう」と手を出してしまうわけです。

 やがて、手が尽き、シリーズとしての勢いがなくなれば、原点帰りのリメイクがあります。第一作には、それだけのパワーと魅力があるのです。
 30年ぶりのリメイク版「ハロウィン」をBBRに例えると、ラーメン&ピーナッツの「BBRおつまみ」ではないでしょうか。これは、オリジナルBBRのチキン味に唐辛子の辛味・ピーナッツの甘味を加えたものです。つまり、オリジナル「ハロウィン」とリメイク版「ハロウィン」は、チキン味として共通していますが、さすがにそれだけでは客を呼べません。新の方はオリジナルにはない唐辛子味があり、ピーナッツまで入れたということです。

 では、リメイク版ハロウィンにおける唐辛子味とピーナッツは何か。
 これは、殺人鬼マイケル・マイヤースの少年時代を描いたところです。オリジナルの方は、突然女性が刃物で殺され、ナイフを持った者のマスクをはがしたら少年マイケル・マイヤースだった、というところから始まりました。少年マイケル及びマイヤース家について、それ以上は語られませんでした。
 しかし、リメイク版では、マイヤース家が、両親の罵り合いが耐えず、不穏で不健全な空気の支配する家庭であることが紹介されます。そこですごすマイケルは、「顔を見せたくない」とマスクを被ることを好む子供です。そして、小動物を殺し、いじめをしてくる友達を殺すなど、徐々に残虐性を発揮していく様子を見せていきます。ついにハロウィンの夜に、義父や姉などを惨殺してしまいました。マイケルに深く関わる精神科のルーミス医師によると「先天的なもの合わせて、後天的に劣悪な家庭環境が、マイケルを殺人鬼にした」とのこと。

 オリジナル版の殺人鬼マイケル・マイヤースは、先天的な部分だけで語られているようでした。マイケルの生い立ちなどについては明かされていません。
 マイケルについて情報がないだけに、成人して、病院を脱走してから、窓の外に佇んでいたり、ストーカーしたりするところがゾッとするほど不気味でした。体に刃物などを刺して、死んだはずと思っても立ち上がってくるところも、正体不明の恐さを醸し出していました。さらに、ラストで、マイケルはルーミス医師に撃たれて2階の窓から庭に転落します。ようやく今度こそ死んだだろうと、庭を見下ろすと、姿が消えてしまっている。これはじつに、恐怖の余韻が残る終わり方でした。マイケル・マイヤースは、異常者なのか、それとも本当に悪霊の化身ブギーマンなのか。

 オリジナル版「ハロウィン」は、ホラー映画にとってエポックメイキングな作品でした。スナック菓子の世界では、1959年発売のベビースターラーメンの後に、1967年に明治カール、1975年にはカルビーポテトチップスなど後続が発売され、それぞれ多くのフレーバー、バリエーションが開発されていきます。同じように、ホラー映画では、「13日の金曜日シリーズ(1980~)」「エルム街の悪夢シリーズ(1984~)」が公開され、マイケル・マイヤースに続く超常的な殺人鬼たち、ジェイソン・ボーヒーズ、フレディ・クルーガーなどがあの手この手で血の海をぶちまけます。
 けれど、オリジナル版「ハロウィン」及びマイケル・マイヤースには、ゾッとする恐怖感がありました。エポックメイキングな作品として、他の映画、殺人鬼とは一線を画していると思います。

 新「ハロウィン」では、病院に入ってからのマイケルについても語っていきます。優しい母がマイケルを見舞い、マイケルの気持ちは安らぎます。彼は「うちに帰りたい」と母に告げますが、それはできません。腹いせのように、マイケルは看護婦を殺してしまいます。母親は、マイケルの残虐性に耐えきれず、自殺してしまいます。そして、マイケル自身は、一切言葉を発しなくなってしまいました。黙々と、マスクを作り続け、成人したときには、部屋中が夥しいマスクで埋め尽くされていました。

 このように、リメイク版は、唐辛子味とピーナッツの部分を前面に出していきます。けれど、相対的にチキン味が弱くなったと感じるところもあります。オリジナル版では、ジェイミー・リー・カーティスが演じたローリーについて語られていました。それに比べると、リメイク版のローリーは、ジェイミー・リー・カーチスが演じたほどの強い印象がありません。
 ローリーは、マイケルの究極のターゲットなのです。彼の脱走の目的は、ローリーにあります。ローリーが観客の共感を呼ぶほど、マイケルの追撃がスリリングになります。オリジナル版は、ローリーの人柄や生活を描くことによって、観客のエモーションを高めていました。
 しかし、リメイク版は、ローリーよりマイケルを描くことに比重がかかっています。ローリーとは、じつはマイケルの妹なのです。少年マイケルは、赤ん坊のローリー(当時はブー)をかわいがります。かつてマイケルは、ローリーには人間らしい愛情をかけたのです。
 ブギーマンとなって周囲の人間を殺しまくり、ついにローリーとの再会を果たしたマイケル。事情の分からないローリーは、絶叫し、完全に怯えています。マイケルは、赤ん坊のブーと自分が一緒に写っている写真を差し出します。しかし、悪魔の家庭から他家の養女となったローリーは、その写真に写っているのが兄であることも、また赤ん坊の自分自身であるとも知らない。彼女は、写真をはたき落としていまいます。マイケルは、言葉を失っている。言いたいことが通じません。ついに、怒り狂って……。

 このように、リメイク版は、マイケルの悲劇性を持ち味としています。それと彼の残虐性とが、うまくミックスされただろうか。観客としては、マイケルの様々について、知りたくもあり、知らない方がよくもあり……。
 「BBRおつまみ」はチキン味に、唐辛子味とピーナッツを加えて、新しい商品となりました。トータルして、嫌いではありません。
 ですが、根強い人気を持つオリジナルは、さすがといえるでしょう。
 

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Last updated  November 2, 2008 06:06:46 AM
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