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May 30, 2009
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カテゴリ:サスペンス映画
 スリラー映画の巨匠アルフレッド・ヒッチコックからは、マクガフィン、エモーションなど映画についての感銘深い言葉を学びました。
 その中には「冷蔵庫のミルク症候群」もあります。これは、劇場で映画を見た観客が家に帰っれ冷蔵を開け、ミルクを飲みながら、ようやく作品の論理的な矛盾に気がつくというものです。
 
 映画は、作り話としておもしろいことが一番大事だと僕は考えます。突拍子もないモンスターは、とても現実的ではありません。でも、スクリーンの中に確かな臨場感があれば、モンスターの存在を楽しむことができるのです。
 ヒッチコックの映画には、超自然的なモンスターは登場しない。でも、論理性より、ストーリーのおもしろさとサスペンスのドキドキ感を重視します。そのようにして映画に引き込まれるから、見ているときは論理的な矛盾に気付きません。興奮が冷めて、映画を振り返ったとき「あれ?」と思うことが出てくることがあるというわけです。
 「フレンジー」は、一時低迷していたヒッチコックの復活作といわれました。

 ロンドンにネクタイ絞殺魔が出没する。犠牲になった女性は、全裸の首にネクタイが巻かれている。何をやってもうまくいかない男(僕みたい!)ブラニーが、絞殺魔に間違われ追われる身となる。
 ストーリー展開もさることながら、警察官夫婦の会話が楽しい。普通の食事をしたい夫の警部ですが、妻は妙に凝った料理を出します。その食卓で、プロの警部に対して、主婦である妻が犯人について核心をついた意見を述べるのです。この組み合わせ、演出は、ヒッチコックならではの手際のよさを感じます。

 さて、この映画の中で、僕はあることにひっかかってしまいました。
 どうしてネクタイが真犯人の手掛かりにならないのだろう?

 たとえば、真犯人は、絞殺した死体をジャガイモ袋につめてトラックに投げ込む。その直後にネクタイピンをもぎとられたことがわかり、真犯人は、発車するトラックに飛び乗り、必死にネクタイピンを探す。開いた袋からジャガイモが転がり落ち、後続の車に呼び止められるなど、スリルに満ちたくだりです。
 あるいは、犯人に間違えられたブラニーは、ホテルに身を隠す。そのとき、ブラニーの着ていたジャケットをホテルのボーイが覚えていて警察の手配書に書かれたジャケットと一致したため、ボーイは警察に通報する。
 
 真犯人は、自分の持ち物であるタイピンが犯行の手掛かりになることを恐れました。なのに、なぜネクタイだけは、いつも犯行を誇示するように被害者の首に巻いたままだったのでしょう。
 そして、ジャケットを見て指名手配された者が分かってしまったのに、なぜネクタイは見過ごされたのでしょう。
 
 ネクタイピンについては、犯人のイニシャルになっていて特徴的なものだから、持ち主がすぐ特定される。しかし、ネクタイは特注品などではないので見逃してもいいと考えたのでしょう。
 しかし、1枚のジャケットがマスコミに公開されたことで指名手配がバレてしまうのです。その理屈からいえば、1本のネクタイだったら偶然としても、犯行に使われたネクタイを何本も公開すれば「いつもあいつがしているネクタイだ」と持ち物がわかるはずです。映画の中で、ネクタイが公開される場面はありません。これはネクタイ絞殺魔という犯人の異常性を強調するために、どうしてもネクタイを残しておきたかったのですね。そして、手掛かりになるネクタイに触れることはしなかった、と。
 
 僕がこの映画を見たのは2回目です。初めて見たときに、ネクタイについて不自然な感じをもったかどうかは、覚えていません。ずいぶん前のことなので。印象に残っていないということは、多分、展開に夢中で気が付かなかったのでしょう。
 2回目は、ストーリーなどは分かっていました。そのためネクタイに目が行ったのかもしれません。今回はアイスケフェモカを飲みながら見ていました。こういうのは「冷蔵庫のミルク症候群」ではなくて、「2回目のアイスカフェモカ症候群」とでもいうのかな。 






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Last updated  May 31, 2009 04:09:28 AM
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