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March 7, 2010
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カテゴリ:ホラー映画


 なんだか過去の記憶が蘇るようなモンスター映画。

 「キラー・モスキート 吸血蚊人間」のギミックは、いうまでもなく蚊人間だ。
 
 ある研究所に、殺人犯の死刑囚が減刑と引き替えに人体実験にやってくる。しかし、凶悪犯だけあって、脱走を画策しているわけだ。すきを見て実験室を逃げ出そうとする。そこでは感染症を引き起こさない新種の蚊を研究していた。警官の銃撃により周囲の設備が破壊され、凶悪犯は新種の蚊を生み出すための放射線とかDNAとかを浴びて蚊人間になってしまう。

 蚊なんて害虫なんだから、新種を生み出すなんて面倒なことはしないで駆除する方法はないのか?新種の蚊の開発は、重大な感染症を防ぐために従来の蚊を駆逐する作戦なのだ、とのこと。

 ……とにかくそういったわけで、蚊人間=キラー・モスキートなるモンスターが出現する。50年代、60年代から、分かるような分からないような科学的理由で、モンスターは誕生してきた。モンスターなんだから、出自は怪しいものだ。
そこらへんが過去の記憶を揺さぶるのか。

 キラー・モスキートは、人間的な知性も感性なくなり、蚊としての本能のままに行動するとのこと。人にぶっとい口吻をつきさして血を吸うキラー・モスキートは、完全な殺戮モンスターというわけだ。
 
 東宝特撮の「電送人間(1960)」「ガス人間第1号(1960)」などに登場する変身人間は、愛憎うずまくキャラクターだった。しかし、蚊人間にはそういった深みがない。逆に葛藤も何もない冷酷無情のモンスターに徹し切ったところが、キラー・モスキートの魅力だ。意図的な設定かどうかは知らないけど。
 ということは、キラー・モスキートには、変身する前の人間が、凶悪殺人犯でも、律儀で優秀な医者であろうとも、その性格は反映されない。見る側にとっては「元は死刑囚だった」との印象は残っていて、単純にモンスターのヒール・イメージは増すだろうが。
 もし、律儀な医者だったら、変身前後のイメージ・ギャップがにじみ出るはず。
 けど、単純な方法論の方が話は展開しやすいからね。

 さて、アングルはというと。
 女性科学者ジェニファーは、凶悪犯と一緒に放射線やDNAを浴びてしまう。それが彼女の場合は、体の一部分だったため、すぐには変身しない。徐々に徐々に蚊人間になっていく。
 先のキラー・モスキートは、生殖本能に突き動かされて同じ蚊人間のフェロモンを放つジェニファーを付け狙う。この部分がアングルとしての因縁にあたる。ジェニファーを巡って、キラー・モスキートと恋人の刑事や警官隊とのバトルが繰り広げられる。
 美女を追いかけるモンスターとは、血を吸うだけに、一連のドラキュラ映画を想起させる。
 ここが過去の記憶に触れる原因か。

変身していく過程で、ジェニファーは、やたらに甘いものを摂取する。コーヒーに砂糖を何杯も入れたりと。さらに彼との交わりがやたらに激しくなったりと。
 あれれ、これらと同じようなシーンが「ザ・フライ(1986)」であったのを記憶している。
 「ザ・フライ」は蝿だったが、「キラー・モスキート」は蚊と、どちらもよく見る害虫。そしてブンブン、プンプンうるさい。大きさはちがうが、類似性がある。
 蝿がモンスターになったのだから、それなら蚊をモンスターにしてみようと考えたのも分かる。
過去の記憶を刺激するわけだ。

 ハエハエカカカ、キンチョール。

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Last updated  March 7, 2010 06:18:33 PM
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