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June 19, 2011
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カテゴリ:ホラー映画


 フランケンシュタインを嚆矢として、マッドサイエンティストがモンスターを生み出す話は多い。
 フランケンシュタイン博士の研究目的は、生命を自らの手で作り出すことだった。神の領域に挑むその行為は、結果的にモンスターを創造してしまった。決して意図してモンスターを誕生させたわけではない。

 では、『双頭の殺人鬼』に登場する鈴木博士は、何を研究していたのか。
これがよく分からない。

 放射線とか宇宙線とかが生物進化に与える影響を研究していたと本人は言っているようだ。だが、妻の顔面と精神を崩壊させ、実の弟を凶暴な獣人にしているのはいかがなものか。
 さらに、鈴木博士は、新聞記者ラリーの肩に注射を打って、頭を二つにしてしまうのだが。

 しかしながら、これは恐い。科学者が、薬物か何かでお手軽に人を怪物化してしまうのだから。
 魔法使いが、人をカエルやネヅミに変えられてしまうより、ずっと恐いことかもしれない。
 あるかないかわからない魔法より、科学や医学はリアルだ。薬物や化学物質で人間の体がどうにかなってしまうことは実際にある話だから。

 それはさておき、言うまでもないが、二つ頭にされたラリーが双頭の殺人鬼となる。
 この二つ頭というのは、ビジュアル的にモンスター性が際立っている。
 単なる獣人や異形のモンスターよりは、二つ頭は確かにインパクトがある。
 ただラリーの頭がふたつ並んでいるのでなく、ラリーの顔の原型をとどめない歯を剥き出した恐ろしい形相なのだ。
 けれど、なんで鈴木博士がラリーを二つ頭にしたのか。その理由は不明だ。研究により、特定の薬物を投与することで人間の頭が二つになることがわかったから、それを実験してしまったのだろうか。あるいは、人間の頭を二つにして何かを検証しょうとしているのか。

 フランケンシュタインは、生命の謎を解き明かし、人間の手でまともな人間をつくることが目的だった。倫理的問題とは別に、医学的な知見を得られないことはないだろう。だが、脳みそを入れ間違えて、モンスターが出来上がってしまった。つまり、モンスターは失敗作だった。
 その点、ラリーの二つ頭はどうなんだ。人間の頭を二つにして、科学的にどんな意義があるのだ。
 ラリーの変身過程を見てみよう。注射により肩に目が現れ、どんどん性格が悪くなって、やがてもう一つ頭が生えてくる。頭が二つになったら、凶暴極まりなく、手当りしだいに人を惨殺しまくる。
 これでは鈴木博士は、ただ二つ頭の個性的なモンスターをつくっただけにしかとれない。
 生命の進化と二つ頭、いったいどういう関係があるのか。

 しかし、なんと、予想もしなかった驚くべきラストが……。
 二つ頭の状態は、実験の過程だったのだ。
 鈴木博士は、がん細胞を摘出するように、人の悪の部分を切り離して善だけを残すのことが可能との考えたのか。それが生命の進化か?。

 この映画では、テレビ番組の『月光仮面(1958~1959)』の怪獣マンモス・コングの着ぐるみが流用されているという。ということは、もう一体の白っぽい方は、人工コングか。

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Last updated  June 19, 2011 07:14:27 AM
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