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August 9, 2015
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カテゴリ:サスペンス映画


 この映画の興味は、なんといっても北川景子、深田恭子の二大女優の競演、二枚看板、ツートップにある。

 ストーリーのさわりとしては、若い女性2人がルームシェアをすることになった。しかし、その一方がサイコであり、もう一方が恐怖の体験をする、といったもの。

 ということはだね、二大女優のうちのひとりがサイコで、もうひとりがその犠牲者ということになるだろう、と推測するわけだ。

 一方が「危ない人」でもう一方が「悲劇のヒロイン」って、二大女優もよくやる気になったねぇってなもんだ。どっちがどっちの役をやるのだろう?

 例えば、プロレスにおいて、スター選手同士が試合を行うときは、気をつかうわけだ。
 プロモーターとかマッチメーカーとかがね。

 展開としては、地元のスター選手(日本なら日本人のエース級)に勝たせたい。
 しかし、ビジターのスター選手(日本なら外国人の強豪)に傷をつけるわけにはいかない。
 だから、引き分けとかリングアウトとか反則勝ちとかいったことになる。
 きっちり勝負がつく形で試合は終わらない。

 ジャイアント馬場やアントニオ猪木といって日本人のエース級は、基本、無様な試合、負け試合はできない。
 エース級はあくまでも強いレスラーでいなければならないからだ。
 しかし、フリッツ・フォン・エリックやブルーノ・サンマルチノといった外国人のスターレスラーも、ステータスがあるからあっさり負けることはできない。

 つまり、レスラーには、個々のプライドがあれば、また商品価値もある。
 そのため、どっちも光らせなくてはいけない。
 そうなると、例えば試合中の激闘に運悪くレフェリーが巻き込まれてリング下にふっとばされてしまった。
 その間に外国人レスラーが技を決めるが、レフェリー不在である。
 ようやくレフェリーが戻ってきたら、形勢逆転して日本人レスラーが技を決めて勝負がついた。
 こんなふうにすれば、本当はどっちが強いんだろうね、ということで、負けた方のプライドや商品価値も守られるのだ。
 リングアウトとか反則勝ちなどは、勝負の結果は出るが、実力的には負けていない、どっちが強いかはわからない=どっちも強いという見方ができるわけだ。そして、つぎの試合まで決着は持ち越し、観客はそれを見にまた試合会場に足を運ぶのだ。

 話を戻すが、『ルームメイト』の二大女優についてだ。
 実際に映画を見ると、どっちかがサイコで、どっちかが悲劇のヒロインというわけではないことがわかってくる。

 まず深田恭子だが、途中まで、サイコは深田恭子だと思っていた。
 深田恭子は、子供が犬と遊んでいたら、「犬なんてかわいくない」という不気味な言葉を吐くばかりか、殺してしまったりする。そして、徐々にサイコ的行為がエスカレートしていく。

 しかし、ネタバレなんだけど、深田恭子の存在は、じつは幻想だったのだ。
 つまり、北川景子の人格がいくつかに分裂し、そのうちのひとつが深田恭子だったのだ。

 この展開は、スター女優のプライド、商品価値という点でとても興味深い。

 深田恭子は、サイコの汚れ役をやっていたはず。
 ところが、それは実体のない幻想だったわけだ。
 つまり、女優深田恭子としては、実体のある汚れ役をやったことにはならない。
 深田恭子のサイコは、北川景子から生み出されたものだから。
 この点で、深田恭子のスター女優としてのプライド、商品価値は守られている。

 一方の北川景子はどうか。
 結局、サイコは北川景子だったのだ。
 しかしながら、サイコの部分は、深田恭子によって表現されている。
 北川景子は、被害者として、悲劇のヒロインの印象が強い。
 そして、最終的に北川景子がサイコだとわかっても、北川景子には同情すべき事情があることが示される。
 北川景子が、サイコになっちゃったのは、彼女の本質とは別の悲惨なできごとのせいなのだ。
 北川景子はどこまでいっても悲劇のヒロインである。
 ということで、北川景子のスター女優としてのプライド、商品価値も守られている。

 プロレスの場合、対戦するレスラーの両方のプライドや商品価値に気を配るあまり、不透明決着というつまらない結果になることもある。

 しかし、「ルームメイト」は、二大女優のプライド及び商品価値を守ったのではないか。
 形としては北川景子が主役である。しかしながら、深田恭子の存在がなければ、この映画は成り立たなかったからね。
 だからといって、北川景子と深田恭子が仲良しになったということはでないだろうけど。


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Last updated  August 9, 2015 08:10:00 PM
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