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August 16, 2015
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カテゴリ:サスペンス映画

 ヒッチコックお得意の「巻き込まれ型サスペンス」であり、「間違えられた男」パターンの映画だ。
 
 作家ロバートは、女優クリスティン殺害の第一発見者として、容疑をかけられる。
 彼に取っては不利な状況ばかり。裁判を目前にしてクリスティン脱出に成功。警察署長の娘エリカの協力を得て、ロバートは容疑を晴らし、真犯人を見つけることができるのか。

 この先どうなるのか、というストーリー展開もさることながら、様々な映画的サービスで見る者を飽きさせない。
 たとえば、コメディタッチだ。ロバートは、裁判が始まろうとするときのどさくさにまぎれて逃げ出す。そのとき、他人から拝借した牛乳瓶の底のようなメガネで変装してまんまと脱出する場面など、思わず笑える。

 そしてこの映画も、『バルカン超特急(1938)』と同じように特撮がすばらしい。
 じつのところ、この特撮場面が、何よりもヒッチコック映画を見る醍醐味だと感じている。

 この映画は、上映時間が84分だ。
 当方が待ち望んでいた特撮場面は、映画が始まって50分くらいたってから見ることができた。
 ロバートとエリカが、エリカの愛車とともに隠れ潜む深夜の貨物列車の操車場である。
 貨物列車が並ぶ中に、エリカの車が駐車してある。
 この場面がミニチュア・セットを使って撮影されている。
 貨物列車は模型であり、ロバートとエリカは姿を似せた人形だ。

 そこまで特撮場面は、ロバートとエリカが車で走るときに、背景としてスクリーン・プロセスが効果的に使われていたね。

 さて、貨物列車の操車場場面だが、最初見たときは、なんでこんな場面でわざわざ手のこんだミニチュアセットをつくったのかな、と思った。
 ロバートが、エリカひとりを残して事件の鍵を握る男(ウィル)を捜しにいくくだりでは、スクリーン・プロセス場面を背景として本物の役者が演じている。
 そんな場面でも、ヒッチコックのこだわりから、臨場感を出すためにミニチュアのセットに模型の列車を走らせているのかな、と勝手に解釈しながら見ていた。

 そうしたら翌朝の操車場場面で目を見張った。
 まず、朝になって、貨物列車がみんな動き出してしまって、エリカの車は周囲から丸見えになってしまった。
 この場面がミニチュアでしっかり確認できる。
 そして、ロバートとウィルは、急いで車に戻っていく。
 そこへ、容疑者(ロバート)発見の連絡を受けて警察が急発進する。

 エリカの車が動き出したところに警察の車が駆けつけた
 追う警察の車、逃げるエリカの車。
 エリカの車は、間一髪通過する蒸気機関車の眼前をすり抜ける。
 警察の車は、長い列車に阻まれて追いつけない。あわてて切り返して他の進路へ右往左往するが、操車場を行き来する列車やトラックなどがジャマになってエリカの車を逃してしまう。

 この間約2分だ。
 この2分間を、ミニチュア、模型、実景、スクリーン・プロセスをとりまぜてめまぐるしく、スリリングに見せてくれる。
 じつに濃い2分だ。

 さらに、特撮ではないが、いよいよ真犯人に迫る場面では、クレーン撮影を駆使して、見る者を圧倒する映像をつくりだしている。

 サスペンス、笑い、そして、特撮などの様々な映像技法を駆使してあって、見応え満タンの映画だった。

 そうそう、ホテルのダンスホールで、白人の楽団員たちが黒塗りになっていた。
 アメリカの歌手、アル・ジョルスンが顔を黒く塗って、黒人に扮して歌ったのが大人気だったのは知っていた(映画『ジョルスン物語(1946)』。このころミュージシャンには、アル・ジョルスン・スタイルが流行だったのか。
 いずれにしてもこの映画では、その黒塗りもサスペンスとして効果的に使われていたね。

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Last updated  August 16, 2015 08:11:40 PM
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