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テーマ:プロ野球全般。(13400)
カテゴリ:Baseball
彼は打撃コーチではあったが,
自分のやり方を人に押し付けるということを決してしない. だから彼に打撃を習った選手はそれぞれが全く異なるスイングをしているのである. アイディアマンで,そして真に勉強熱心な人だったのだ. どうすればクセが矯正できるか,どうすれば上手く球がうまく飛ぶか, それだけでなく,それをどうすれば選手にうまく伝わるかまで考えようとしたのである. 例えば現在カージナルスにいる田口との練習時には、グリップエンドを削ったバットを作り, 素振りでバットを投げる練習法を考え出した. バットを、後ろを小さく、前が大きい「インサイドアウト」にするためのものだった。 そのバットがセンター方向に行くためにはセンター方向に投げればいいものではなく、 来る日も来る日もこの練習を繰り返したという. すると、多少振り遅れてもファールにすることができ、打撃の幅が一気にひろがったそうだ。 また,相手投手のデータを細かく取り, それによって対策を練って行うデータ野球を確立したのは, かの野村克也と彼のコンビであった. 野村は早くから高畠の才能を見抜き,選手として怪我を重ねて限界となった彼を 28歳にして打撃コーチに大抜擢した. 以降ヘッドコーチのブレイザーや, スコアラーの薩摩らと共に南海は正に違う世界の野球を始めることになる.南海の野村解任騒動(もちろんこの話の真相はわからない)でも, 唯一野村と共に辞任し,ロッテに移籍したのが高畠である. ロッテのコーチ時代には,西村をスイッチヒッターに変えて首位打者を獲らせ, また落合にも指導だけでなく,打撃理論について2人であれこれ話をし続けていたという. 落合本人は多くを語っていないが,この本を読む限りでは,打撃の読みなど 今の「オレ流」の大元の原点を築いたのはおそらく高畠なのだと思われる, 以前,落合が突然バックネットに向けてボールを打ち始め, ネットを越えるようにトスバッティングをしたという話を聞いていた. 力のないボールに対してそのようにスピンをかけて飛ばせれば, 試合で来るボールが理想の角度で上がるという理論. 私はこれを聞いた当時,これが落合の「オレ流練習法」なんだと 歓心していたのだが,この本には高畠が田口にそれを教えている一節がある. 真相はわからないが,ひょっとしたら彼が落合に教えたのかもしれない. ヤクルトが野村を監督に抜擢した際,野村は高畠を迷わず第一に呼び寄せた. しかし,その間の高畠の指導レベルの飛躍的向上は野村の嫉妬を呼び, 1年後二人は決別することとなる. (ただ,本人は後年も「野村氏がいなかったら今の自分はなかった」と語り続けていたそうだ) 彼はダイエーや中日などを渡り歩く. 彼の力は打撃コーチという枠を超えて最早なくてはならないものとなり, 長嶋茂雄からも「自分がいる間に1年でいいから来て欲しい」と声がかかるほどだった. 彼は打撃論を野球の世界だけで終わらせず, いろんな世界のことをヒントにしようとした.きっかけはダイエー時代と中日時代に, ドーム化によって選手が全く打てなくなってしまったことにある. どんなに打撃を指導しても,人間の心理というもので選手は変わってしまうことをこのとき知り, 彼は心理学を勉強し始める.心理学の世界で,彼は子供たちに教えたい, 彼らにいろんなことを伝えたいと思い始め, 50代半ばにして彼はコーチをしている傍らで,大学で教職の免許を取るための勉強を始めたのだ. 九州,筑紫台高校で教師を始め,彼は2年後(プロで指導してから2年間はアマを教えられない) には野球部の監督になり,甲子園での優勝を目標にした。 彼が病に倒れたのはその2年間が経つ段階だった. 高校の授業でも,彼の体験談や言葉について多くの生徒が感動していたという. コーチ時代からあまり叱らず、 良いところを褒め称えながら短所を直し、 選手と一緒に悩んで励ましながら目標へ向かって一緒に走る. つまり彼は打撃コーチというよも、真のコミュニケーターだったのだ。 だから彼を慕う選手は後を絶たなかったという. 野球だけでなく彼の指導を受けたいと思っていた子供はたくさんいたし, 彼のその後を見たいと思っていた野球人は現役,OB,数知れなくいた. 私はこれを読んで,感動と後悔が入り混じった不思議な感情で涙した. そして上に書いたことで彼のことが伝わったとは全く思わない. 私はよく書き溜めたままでupせずにいることがあるのだが, 正直どうやって彼のことを伝えればいいか私はよくわからないままでいたので, 途中まで書いたまましばらく置いてあった. しかしまずこれをいろんな人に読んで欲しいという感情が日に日に強くなり, 駄文であるがこれを持って紹介することにした. それが今まだ何も成し遂げていない自分にせめて出来ることだと思って. この本は帯の部分で長嶋氏が絶賛されているのだが, 私はただの野球の本として扱ってほしくない. 野球を知る人だけでなく,興味がない人にも人生を考える意味で貴重な何かを与えてくれる, 野球界の枠を超えて,高畠導宏という人間がどれだけ大きな存在だったか, ぜひ読んでほしい. 甲子園への遺言~伝説の打撃コーチ高畠導宏の生涯~ 最後に,1年遅れですが高畠導宏氏のご冥福をお祈りしたいと思います.合掌. お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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