ロサンゼルス・レイカーズに日本人スタッフがいらっしゃって,その方と米国在住の日本人弁護士の方からお話を聞いた.
前回のレポートにも書いたが,米国のスポーツ事情のうち,日本に入ってくる情報の多くは上のディビジョンの限られたクラブのものである.米国にスポーツ文化が日本よりはるかに根付いているのは最早揺るがない事実であり,その中での頂点のクラブの話は日本から見れば現実的には雲の上のことである.それよりももっと下のレベルのクラブはどのように運営を行なっているのか.今回は同行者の関係もあり,大学スポーツにおいてこの部分を聞くことが最大の目的であった.以下,それも含め,日本に対する見え方も含めて,いただいたお話を書けるだけ記すことにする(まぁ,日本でも言われている意見も多々あるが).
ちなみに,反感を買う考え方もあるとは思われる.私自身同意しかねる話もなかったわけではないが,日本の外にずっと住んでいる人から見た自分の国への貴重な意見としては決して偏った意見ではないと思っている.
・日本のメディアについて
→テレビがとても一元化してしまっている.官主導型だ.彼らは同じやり方しか知らないのではないかと思うことがある.一元化については教育から変えるべきなのではないか.
・日本の仕事のシステム,風習について
→60%しか知らないことを100%知っていると言う癖がある.また,例えば3人の意見があってもどれか1つを通すというわけではなく,妥協が多い.米国が敗者復活戦型である一方で,1回ダメであるともう全てダメだという風潮がある.
・(注:これは彼らではなくまた別の人から)日本のIT業界について
→米国は日本のIT産業をバカにしている面がある.米国のIT産業は基本的に地方に拠点を構えている.そもそもIT最大の長所は,距離がどれだけ離れていても通信が可能なことであり,わざわざ都市に構える必要はない.そして米国のIT企業は地方にいることでその地域にお金をたくさん落として,業界全体では広い地域に貢献している.一方で日本のIT企業はどうであろうか.結局,みんなステータスだけのために「都心のあの場所」に集まり,ヒルズ族となろうとしているのである.
・スポーツのトレード制度について
→トレードは日本では非常にマイナスイメージが強く,失格の感覚を持っている.しかし米国ではそんなことはなく,単純に「そこでは合わなかったから別のチームで再チャンスを」という意味合いがものすごく強い.(アル注・2つ上に関連)
・NCAAのDivision1について
→プロ的であるという批判が出てきている.運営負担は大学本体にもかかってきている.ファンド・ソースはチーム以外にリーグ,NCAAの配分,広告収入などである.広告収入などは,仲介するマーケティング会社が存在する.
・NCAAの下位Divisionについて(冒頭の疑問について)
→結論から言うと,特別な収入努力はしていない.NCAA全体(1000チーム以上)を通して,全Divisionで黒字のチームは30個くらいであり,他は全て赤字である.比較的良好な競技もフットボールとバスケットボールくらいである(これらは事実上野球でいうマイナークラスのリーグと化しており,プロ化しすぎているのが逆に大問題になっている).また,大学によっては他のマイナースポーツを縮小(廃部)しているところもある.
通常運営の収入で賄えない部分については,大学のファンドが出しているのが現実だ.ただし,大学側のお金を出すことに関する感覚が日本人とは違うのが大きな相違点である.日本でこのような投資をさせるには,税法の改正が必要になると思われる.米国では税対策として大学がスポーツにお金を出すという感覚がある.
・指導者について
→大学とプロを行き来する指導者がとても多い.報酬は,コーチで最高年に200万ドルくらい.
・ローカル放送について
→米国は国土が広い上に国内で時差もあり,人の住んでいるエリアが非常に点々としているのでローカル放送が意味を持っている.どこにでも人がいる日本でローカル放送のシステムが意味をどこまで持ってくるのかは疑問である.
・地域性について
→同じDivisionでも地域性で根付き方は全く違う.例えば,ケンタッキーは大学スポーツは非常に人気が高い一方でプロスポーツは根付かない場所として有名である.
総括は最後にまとめて行います。