RF未来のスペースコロニー
[引力][アジサイ][キリン][エビフライ][写真]です。この中から三つ選んで書きます。ここでは、月が大きく見えた。月から61,500kmの場所。月と地球の間で人工的な建造物が漂っている。この馬鹿でかい月にも慣れたもんだな。尾沢真一はそう考えた。尾沢はラグランジュ点のスペースコロニーで研究をしていた。地球と月のちょうど重力干渉を受けない、引力の中間地点で天体の研究していた。この地点では、太陽を観測するには最高の条件だった。月が太陽を遮ることがないからだ。もうそんな生活が十年になる。相棒の野崎良太が言った。「おい。少し重力が弱くなった。回転をあげるぞ」「わかった。微重力の具合も調べよう」野崎はシステムを操作し、コロニーの回転速度を上げた。途端に体感重力が強くなる。「最近引力が変わってきている気がする。センサーの数値が異常を示すことが増えた」「まさか、デブリにどっかやられちゃったんじゃないだろうな」人が喋る声を検知して、部屋の消毒装置が起動した。無重力に近い状態だと、感染症の危険が増大する。そのため、念入りに殺菌がされるのだ。宇宙空間で暮らす者には、潔癖を義務づけられる。この空間では例えキリンのビールを飲んでも、口臭は爽やかなのだ。急に何かが割れるような音がすると、警報装置が鳴り響いた。「何だ」「外壁の異常ランプだ」何かが砕けるような音がして、強い風が吹いた。壁が割れている。「うわあ」壁の穴に野崎が吸い込まれていく。「俺に掴まれ」尾沢が伸ばした手を野崎が掴んだ。そして尾沢も吸い込まれそうになったが、なんとか壁の縁に掴まり踏みとどまった。だが、もの凄い勢いで腕が引っ張られる。宇宙服を着ているから窒息はしないが、空気と一緒に宇宙空間に放り出されれば生きる術はない。「尾沢、手を放せ。お前まで助からなくなるぞ」気づくと尾沢がしがみついている外壁の部分も既にひび割れて細かく揺れていた。「冗談だろ。一緒に脱出ロケットに乗って逃げるんだ」「無理だ。今、俺たちは地球に落下しているはずだ。間に合わない」野崎はそう言うと自ら手を放した。そして、空間の外へ遠ざかっていった。尾沢は野崎を追いかけて、自らコロニーの外へ飛び出た。そして、野崎に追いついた。「なぜ出てきた」「お前だったら、俺を見捨てないと思ったからさ」コロニーはどんどん遠く離れている。二人は地球に向かって落下していた。「今まで重力が足りなすぎたからな。最後くらいちょうどいいかもしれない」尾沢は野崎にしがみつくと、自分のバックパックを噴射させ、コロニーに戻ろうとした。「無理だ。微重力ならともかく、地球の引力には逆らえないさ」二人は次第に地球に引っ張られていった。翌日、スペースコロニーの落下事故は世界中で流れた。コロニーは完全に分解し、生存者はなし。地球には一枚の写真だけが燃えずに落ちてきた。宇宙服を着た二人の研究者が写っていた。紙だけは大気圏を燃えずに落ちてくることがあるのだという。終わり。なんでこんな話書いたんだろう。