意地
出勤直前に学校から電話がかかってきた。母が下で電話を取って、2階の部屋をまさに出て玄関に向かおうとしていた私にその旨告げられた。「えーっ! もう家を出るよー」何か話していたようだったが、それでもどうしても電話に出ないといけないようだった。あいにく、うちの電話機は買い換え新品待ち。子機が使えない。しかし下手にファックスが別にあるものだから、2階で電話を取れるように取り次ぎたいのか、母は へんてこりんなことを言い出す。電話を保留にして説明してても仕方がないので、荷物を持たずに急いで降りてしまった…。仕事の依頼だった。最近は体調不良なので余分な仕事は断りまくっている。プラスアルファの収入が減るだけの話だ。(評価も下がるかな…?)「もう家を出ないと間に合わないんですけど」というのに「5分いいですか?」ダメというと「1,2分いいですか」。普通ならダッシュすればなんとかなるかもしれない。良くなくても「断るなよ~」という迫力があるので「遅れてもいいのなら1,2分なら」と返してやった。夜間の翌日に市外の教室に朝から行って欲しいとのこと。「今人手がないので…」と くどくど言われるので、「こっちのほうが替わって欲しいぐらい体調が悪いんです」と とうとう言った。敵もさるもの、「じゃあ、前日を誰か替わってくれたらその日は行っていただけますか?」(公共交通機関しか交通費は出ないので)朝から市外に行けと言われたらとりあえず断ってる…。他の人は車に乗れるようだから行動範囲も広いけど、タクシーに乗れなかったらとんでもない!まずは返事を保留にし、家族に送ってもらえるか、確約をもらうのだ。公共交通機関では、下手すれば県外に行くより大変なのだ。でも距離は近いので、泊まるわけにもいかない。「足を確保しないことにはお約束できかねます」と電話を切ると、もうバスに間に合わない時間になってしまっていた。これじゃあ、私の授業の日に誰か代わりを見つけるんじゃないかなぁとか、人手がないのは分かっているけれど、その日に遠出できる保証はない。できたら奇跡に近い。今だって、「舞台に穴を開けられない」って感じで、人がいる時だけ健康な先生を演じているのだ。足の確保は、遠回しに言ったのだ。車ならともかく、公共交通機関では無理、と。うちは「交通費全額支給」になっている。とりあえずバス代とかの公共の分なのだけど。でも、電話のせいでバスに間に合わなくなってしまった。私は電話に出たら遅刻すると言っているにもかかわらず、「出ろ」という態度だった。そして「遅刻してもいいなら1,2分」という条件を出したのに話した相手。これでタクシー代を請求できるか? 遅刻しても構わないか?どこかのテレビ番組みたいだ。乗り換えか次のバスでもなんとかなるかもしれないと、時刻を調べたがかなり難しい。仕方がないので、今度はこちらから電話した。こうなったらダメ元。「○○さんが出勤前で電話に出られる場合じゃないのにどうしてもと電話してきたので、時間に間に合わず生徒さんから問い合わせが来たら少し遅れるかもしれないと伝えてもらえませんか。あるいは、タクシー代を出していただくわけにはいきませんか?」上司に替わった。「バスの中でも携帯で小声で話ができないわけではないので、タクシー代なんて出せない」バスの中では携帯を使うなとマナーについてのアナウンスが毎回流れるんですけど~。周りの人の健康に関する仕事をしていて、そんなルール違反を推進するのか!?次のバスだとどれぐらいに着くのか聞かれ、「運が良ければギリギリか5分前」と答えたのがいけなかったのか。鍵開けしないでいい人なら待たせて1分前とかジャストに着いても何とかなるよ。でも「○○分前には教室に」と言っているのは誰? (もっとお偉いさん) しかもそれは中央でのことで、地方、さらに鍵開けする人は最低30分前には教室にいるように言われてる。その時、私に電話して来た人はまた他の人と電話中だったので事情はよくは分からないと前置きはされたけど。遅刻してないか監視するようなことをしておきながら、かたや自分たちの電話のせいで遅刻するのは構わないって!? 仕事の依頼の電話を切ったら、また断ってしまった…という罪悪感と、間に合わないという焦りで、また心臓が…。かがみこみたいのを我慢。もう生徒さんが教室に入れなくて苦情を言っても事情を説明してもらうことは承諾されていたので、開き直って次のバスで行くつもりだった。(個人情報保護の関係で、私は生徒さんの連絡先を控えていない)が、荷物が重く、1歩ごとに心臓に負担がかかって、いつもほどの足取りで歩けない。余裕を持って家を出たのに視界に入るバスは遠すぎて、どうにもできなかった。悔しいけど、タクシーに乗る他に手がなくなってしまった。あと15分ほど待って次…というわけにはいかない。完全に授業時間に食い込んでしまう。早く行って準備しても時間内に終わらせるのに必死なのだ。そして運の悪いことに、急いでいたので気づかなかったが、財布の中はタクシーに乗れる状態ではなかった。貧乏なのに、まずは万札を入れて崩していくので、タクシーで払えない…。(タクシー代高くて手持ちの1000円札では枚数不足)仕方なく、スーパーに寄り道して、買い物をして1000円札を確保。自腹は悔しかったが、いつもと変わらない時間に着いたのはもっと悔しかった。これじゃあ、バスに遅れたと嘘をついたみたいじゃないか。念のために領収はもらっておいたけどね。生徒さんがいる間は、なんとかもてた。逆に動きたくないので、いつもに増して立ちっぱなし。さらに運の悪いことに、早く終わるつもりが、込み入った話をしないといけない人がいたので、いつもより遅くまで残ることに…。1人になったら、教室内はおろか、自分の教材を片付けることもできなくなってしまっていた。あまりのきつさに、横になった。そのまま泊まってしまいたかった。救急車を呼ぶには大げさで、迎えに来てもらい直行で深夜に病院に行っても、主治医ではない。また変なことを言われそうだし、心電図が乱れることもなさそうだった。それでもどうしようもなくて、せめて当直の先生を聞いたけど、やっぱり違っていた。それでもあきらめきれず、このままホルター心電図でもしてくれれば異常も出るかもしれないのになーと、家に電話した。話すのもきつい。頭も混乱。自分でうまく症状を言えそうになくて。とにかく動けなくて。でも救急車も呼べなくて。救急車を呼べても、何より教室をそのままにしておけなくて。車を横付けしてというのに、いつもしてもらえない。変なところにつける。学校のビルから車まで遠く感じ、1歩踏み出すのに数秒かかっていた。家の近くの駐車場からは、さらに雨も降っていて、道路沿いの金網や、ご近所のブロック塀を伝い歩きしかできなくなっていた…。学校を出る時の2,3倍はかかっただろうか。普通に歩いて1分ほどのところを、何分かけて伝い歩きしたのだろうか。病院に行くのをあきらめきれず、熱っぽさや寒気もあり、自宅でまず熱を測ったがなかった。今度こそ今夜病院に行くのはあきらめた。教室で休み休み片付けていた時には実は入院させてくれないかなと思ったぐらい。それでも。また添削が待っている。生きている限り、自宅なのだから倒れてでも今日やらないと、明日はますますできない。明日は病院に行くことになるかもしれない。というわけで、食欲もあまりなかったので、まずは「まるつけ」から入った。答案を見て具合がますます悪くなった。この添削は何時間かかるのか…。今回は「居残り」をさせていないし、私もそこまでする余裕もないし、それをするのも4月から限度を決められていたので、逆に希望されなければしないぞという開き直りもあった。でも。教室での余分な時間なしに、答案だけを見て解けるようにするには?とんでもなく時間がかかる。答案に別紙をつけ、手順をいちいち書いて、全部計算して、どこを間違ったのか探らないと理解に近づかない。正直、それを何度も続けてきたが、それでも改善していないのだ、私の目から見ると。添削しなくて良ければ化粧したままダウンしてたぞ。夕食抜きで、とりあえずまるつけだけして2時ごろに夕食。添削が終わり、寝ようと思ったが…。動かなくて良ければ、比較的体調はいい。あんなに苦しかったのが嘘のよう。明日病院へは多分行かないだろう。早起きがきついから。安静にしているほうが楽だから。どうせ来週は行くんだから、その場で異常が出ないのなら無理を重ねるだけ。でも、もう少し夜更かし(?)してでも心の中のものは はき出してしまわないといけないと思った。明日は、私の担当クラスの代行を誰かに頼んだという電話が入るのかもしれないと思うと、ますます気分が悪くなる。責任と現実逃避が交錯している。入院してしまえばどうにかならないかという誘惑。手元の答案はどうすればいいのだろう? やっぱり意識があるうちは、あるいはドクターストップしてもらわなければ、私から誰かに代行は頼めない。ただ、いつもより添削は手抜きかもしれない。本人の意思確認をしてきたから、最低限のことを確実にという方針に変更しようと。出勤時間が少なければ、過労で倒れても死んでも認めてもらえないんだろうし。会社で残業できる人は、ある意味幸せなんじゃないの?なんて、正社員をある意味過労で辞めた私は思う。1年360日ぐらいは出勤してた。「家に仕事を持ち帰れたら」。そう願っていたのになんという皮肉だろう。物理的に職場がないと、困ることも多い。休み(出勤しない日)もあって無きが如し。