太宰治の自殺考
太宰の幼少期の母や乳母との関係から、根底で人間不信や対人恐怖を獲得してくしてしまった不幸に起因している。人間は信じられない、不可解が深まるばかりだという人間観があった。世間的に愛とか信頼は、自分を中心に据え愛の限度や利害の限界を自覚し得ている。自分を喪失してしまうような危機感や不利益にはストップが掛かる。限度を超えてしまいそうになると、お互いが背を向けて自分の世界に閉じこもるという了解もある。 ところが太宰には、その限度の境界線があるなんてことは信じられなかった。愛や信頼はそんなものではない。それは「走れメロス」にも表れ、「人間失格」にも表現されている。その限界を超えてでも愛を、信頼を貫くという破滅志向が自殺への動機付けとなり、ついにはそれを完成する人生となった。