カフェ感

７時間３０分という時間。

成田から、シンガポールに行くフライト時間。


”日本でいちばん大切にしたい会社”、３社目は、

法政大学の坂本教授が、静岡の自宅から、その目的の会社に行くまでに掛かる時間が

ドアツウドアでじつに７時間３０分かかる、

日本で一番過疎化の進んでいるといわれている島根県の山奥にある会社だ。

”中村ブレイス株式会社”という。

この会社が順調に売り上げを伸ばしている以上、

”うちの会社は。。。うちの店は。。。

”立地が良くないから売れない。”という言い訳は成り立たない。


”近くを通りかかったのでなんとなく。。。”というお客様は絶対にいない。

　この会社に来るお客様は、わざわざこの会社に来るために、来るのだ。

最寄の小さな駅から、交通機関がないのでタクシーで３０分ほど乗り、

だんだん人の姿が見えなくなり、廃屋が散見されてくると、

目的の会社は見えてくる。到着し、社内に入ると坂本は驚いた。

なぜなら、大勢の”若い社員”が、一生懸命に働いている姿があったからだ。


失礼ですが、”こんなところへ、いったいどこからこんなに大勢の若者たちが

集まってくるんだろう”と思ったそうだ。

中村ブレイスという会社は、耳、鼻、指や腕、さらには女性の乳房などの義肢装具を

取り扱っている。

工場に入ると、社員の方々が泥だらけ、汗だらけになって、粘度みたいなもので

義手や義足などをつくっている。

悪く言えば、典型的な３Ｋ職場。

きれいな若い女性がロクロを回して、泥だらけになって働いていた。

社員の多くが、大阪や東京といった大都市からわざわざ就職しに来るという会社が

中村ブレイスなのです。

”ブレイス”とは”支える”という意味です。

つまり、”人を支える”ということを目的として興された会社なのだ。

だから、働いている若者達は、みんなプライドを持っておりいきいきしているのだった。


ある日、高校二年生の女の子が中村ブレイスに訪ねて来て、こう言ったそうです。


”私は進路選択で東京の大学に行く予定でいます。でも、東京の大学を卒業したら、

　ふるさとに帰ってきて、お父さん、お母さんと暮らして親孝行がしたいと思います。

　それでどうしても中村ブレイスさんに就職したいのです。

　大学の４年間、私はどんな勉強をしてきたらいいのでしょうか？

　どんなことを身につけ、どんな資格を身につけたらいいのでしょうか？”


中村社長

”いい友達を、いい先生に出会ってくれば、それでいいですよ。

　多くの人と会ってたくさんの友達をつくってください。

　これから５年間、あなたの入社を待っていますからね”　と答えた。


坂本教授はいう。

”ここで働きたいと言う若者たちは、中村ブレイスでつくっている商品が、

　世のため、人のためになるということを知っているんです。

　私は、”日本でいちばん大切にしたい会社”とは、弱者の側に立った、

人間の尊厳を高め、守ることに役立つ製品をつくっている会社だと考えております。

そんな会社を、本当に大切にしたいと思うのです。


余談だが

以前、大手コンビニチェーンに加盟されている東京のオーナーさんと話をしたとき

”アルバイトがなかなか集まらなくて苦労する。”

”せっかく採用したのにすぐに辞めてしまう。”という話を聞いたことがある。

店の前を一日何千人も通る場所に、その店はあるのに。。。


静岡から７時間３０分かかる場所にある会社なのに、

全国から就職希望者が殺到している会社がある。

会社の前を通る人は、一人もいないのに。。。


人は、よく知っているということか。。。