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2008.07.11
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カテゴリ:グットな人
北海道は、じつに不思議なところがある。

日本の有名なパティシエ達は、だいたい東京周辺でお店を開いている。

そして、その世界的に有名な日本のパティシエたちの店の売り上げは、

じつは北海道のお菓子屋の売り上げに遠く及ばない。


六花亭、ロイズ、ルタオ、など北海道には超一流のお菓子屋がたくさんある。

今日紹介するお菓子屋は、帯広市にある柳月。

このお菓子屋の名前を知っている日本人は少ないと思う。


北海道、帯広市の人口は17万人。

柳月の従業員数は600名。

売り上げは、75億円。

さらに驚くことに、この会社、毎年大卒者を40名ほど採用しているのだが、

応募してくる学生数は、ざっと4000名を超える。

つまり倍率は100倍以上になる。

柳月の創業者は、田村英也という。

農家の四男に生まれ、日本が戦争中は中国へ渡っていた。

やがて敗戦となり、大陸から戻ってくる途中、ある出来事に遭遇した。

汽車は、貨物列車といったほうがいいようなひどい状況。

通路やデッキは人であふれかえり、引揚者でごった返していた。

異臭が漂い、殺伐とした空気が流れていた。

その中に、一人の若いお母さんが、小さな子どもを抱きかかえて席に座っていたそうです。

ご主人は戦死してしまったのかもしれません。

”この子だけは”という感じで、強く抱きしめていたそうです。

田村さんが汽車に乗った時から、その子どもは、ずっと泣いていたそうです。

命からがら、中国から逃げてきたので食うや食わず。

しかも貨物列車のような車内は蒸し風呂状態。

子どもは少し寝ると、また大声でなく、その繰り返しだった。

夜になってもそれは変わりません。

それどころか、子どもの泣き声はますます大きくなります。

そういう状況が続くと、みんないらいらしてきます。

汽車に乗っているのは、兵隊だった人も多く、ささくれだった雰囲気が漂います。

田村さんはそんななか、この親子がどやしつけられなければいいが、という思いで、

かばうようにその親子の近く、斜め後ろに立っていたそうです。

しかし、そうは思っていても、立ちっぱなしで眠ることも出来ないし、蒸し暑いし、

子どもの泣き声は大きいしで、自分自身も限界に近い感じだったという。

すると、その時、田村さんの隣にいた、ボロボロの服を着た痩せ細った男性が

ポケットから包み紙を出し、

”お母さん、これっぽっちしかないけど、食べさせてあげなさい。”と言って

キャンディを差し出してくれたそうだ。

どこで手に入れたか分からないような小さな小さなキャンディでしたが、

その最後のひと粒をお母さんに渡すのです。

お母さんは深々と何度もお礼をして、子どもに食べさせてあげたところ、

子どもが泣き止み、それどころかニコッと笑ったそうです。

”あの子どもが、いちばん好きであろうお母さんが朝から晩まであやしても

 泣きやまなかった子どもが、たったあれっぽっちのお菓子を食べた瞬間、

 泣きやんで笑った。いったいこれはどうしたことだろう”

”お菓子はお母さんの愛と同じではないか。

 お菓子には、そんなに人の気持ちを安らげる、人の心を魅了するような力があるんだ”

田村はその時、そう思った。

そして、”お菓子屋になろう!”と決めた。


田村の口癖は二つある。

一つは、”会社の目的は地域の人々を幸せにすること。”

一つは、”自分の会社がなかったら、お客様が困るような会社をめざしたい。”


北海道に行くと、柳月のお菓子が取り持つ縁で結婚された方の話など

うそのようなほんとの話を聞くことがある。


柳月がなぜ北海道から出ようとしないのか、聞いたことがある。

田村は言う。

”わが社はお菓子だけを売っているわけではありません。

 お菓子といっしょに、”北海道”も包んで売っているのです。

 本州では北海道を包めませんから。

 わが社は、この北海道を離れる気はありません。”



テレビに出演しコンテスト狙いのケーキ職人と、

田村の目指す、お菓子の”意味”は違う。








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Last updated  2008.09.28 09:23:05
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