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カテゴリ:グットな人
地球上でもっとも過酷なレースがある。 名前を、 ”ファイブ・オーシャンズ(5OCEANS)という。 どんなレースか? たったひとりでヨットに乗り、世界を一周するレースだ。 レースの規定に基づいてつくられたヨットを操縦し、 決定された、数箇所の寄港地に寄り、 再びスタート地点に戻るという単独世界1周ヨットレースだ。 世界で一番危険で、一番長いレースと言われている。 白石康次郎は、このレースで2位になった男だ。 白石は、1994年、 史上最年少でヨットの単独、無寄港世界一周を達成した男でもある。 その時の彼は26歳。 わたしはヨットや冒険には無縁の人間であるが、 彼の放ったことばは、ビジネスにとても役立っている。 あんがい、 ビジネスも冒険なのかもしれない。 白石は、 たったひとり118日間、4万8507キロの行程を、 巨大なヨットを操り、世界を一周した。 嵐の時の波の高さは、かるく10メートルを超える。 大波を受けたヨットは、横転することもめずらしくはない。 特に、南氷洋のレースは最悪だ。 ちょっと油断しただけで、氷山や流氷に激突し、タイタニック号のように、 簡単に船は流氷の海に消えてゆく。 ひとりで操縦しているので、この海では眠ることは死を意味する。 船の浸水や故障も、修理は自分一人。 強風の中、28メートルもあるマストにのぼり、 1時間も過ごさなければならないときもあった。 白石は言う ”やっぱり一人ですから、 つらいのは我慢できないですよ。 限界があります。 そんな状況の中で、 いかに楽しめるか、それが長続きする秘訣です。” 彼は、何か月もの間、たったひとり。 自分を見失わないために、自分をコントロールする必要があった。 ”船内一人クリスマスパーティー””船内一人お正月” そして、どうしてもつらい時には、”アントニオ猪木のテーマ”をかけたりしていたそうだ。 気持にゆとりがない時には、禅の本を読んだりしていた。 白石はいう。 ”自然はわたしに合わせてくれないので、 自分が合わせるしかないんです。” ”そこで大事なことは、 頭で考えないで、感じるようにします。” ”頭で考えると、 ついつい損得勘定になってしまう。” ”だから頭で考えたことは信じないことにしています。” ”勝負どころでは、こころに従うことが一番です。” ”ただ調子が悪いときは、データを信じます。 自分がノッているのか、 普通なのか、 ネガティブなのかを把握するためです。 なにせ、長いですから(笑) ずっと調子がいいということも、 ずっと調子が悪いということもあり得ません。 自分の波を見極めて、それにうまく乗っていくこと、 ”逆らわないこと”が大切なんです。 白石のヨットの歴史は、順調ではなかった。 むしろ、人より運が悪かったのではないだろうか。 白石が、はじめての単独世界一周に出発した時も、 大勢の方の援助と見送りを受けて出発したにもかかわらず、 わずか出発して九日目にヨット船体の故障によりレースを断念。 その2ヶ月後、再出発するも、 今度は、マストのワイヤーが切れて、2度目の断念。 白石は、応援してくれた人々に合わせる顔がなかった。 その時、友人の一人が、 白石に、額に入った1枚の色紙をプレゼントした。 その色紙には、こう書かれていた。 ”大切なのは大志を抱き、 それを成し遂げる技能と忍耐をもつことである。 その他は、いずれも重要ではない。” 白石は、”その他はいずれも重要ではない”というところが特に胸に響いた。 その時、白石は、人に申し訳ないとかじゃなくて、 とにかく成し遂げるためには、技能と忍耐を身につけることが大切だ。 このことだけに集中しようと思った。 そして2度にわたる挫折から2年後、1994年。 26歳に成長していた、白石康次郎は、 史上最年少、単独、無寄港、世界一周を成し遂げたのだった。 白石は言う ”よくあきらめちゃいけない。といいます。 でも、そんなことないんですよ。 僕は、今まで、なんども、なんども諦めて(あきらめて)きました。 1回目のレースも、2回目のレースも諦めて引き返してきました。(笑) 世界1周してからも、 あこがれのファイブ・オーシャンズ・レースに参戦するまで7年もかかりました。 どうしても参加するための資金が集まらなかったからです。 あきらめるという決断は、決して悪い決断ではありません。 あきらめることも必要なんです。 ”SOSを出す前に引き返すのが、正しい決断なんですよ。” ”やるだけやったあと、引き返せばいい。”というのは、海では通用しません。 それでは、自分も死んでしまうし、まわりに多大な迷惑がかかる。 引き返すときは、引き返さなければならないし、 断念しなければならないときには、断念しなければならないのです。 ただ誤解しないでもらいたいのは、 ”あきらめる”という意味は、 ”明らかに””見極める”ということなんです。 投げ出すことや、やめることとは違うんです。 僕は、どんなに恥をかいても、投げ出したことは一度もないんです。 それが、一番良かったことです。” お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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