|
カテゴリ:音楽
先月にこのブログで、ハープシコードの音量が他の楽器のそれより小さく、合奏の際に音が聞こえにくくなることについて愚考を書き連ねました。その後、この楽器が通奏低音として合奏に参加している場合、その目的は合奏の参加者がそれを聴きながら演奏するためであって、必ずしも聴衆まで音が聞こえる必要はないのではないかというコメントを頂き、亭主も大いに納得したところでした。
ところが、最近インターネットのバロック音楽専門チャンネルを掛けっぱなしにして聴くともなく聞いていたところ、流れてきたブランデンブルク協奏曲第5番の演奏で、ハープシコードの音が鮮明に響いてくるのに気づきました。第1楽章を終わりまで聴いた感じでは、全曲を通じてハープシコードにスポットライトが当たっている感じの録音になっています。 そこで、急いでオンエア中の曲についての情報を調べたところ、件の録音はヘルムート・リリングとバッハ・オレゴン祝祭管弦楽団による1994年のものらしいことがわかりました。この録音、1995年に独・「ヘンスラー」レーベルからリリースされ、その後何度か再販もされているようで、現在では同レーベルのバッハ大全集、あるいはその分売ボックスの一つ「管弦楽曲集、協奏曲集」の一部として入手可能なようです。(もちろんサブスクで聴くことも可) かなり昔の録音なので、もしかするとと思い、さらにネット上を検索していたところ、やはりユーチューブの動画(とはいえ映像はジャケットの静止画だけですが)で聴取可能なことがわかりました。早速聴いてみたいという方のために、以下にリンクを置いておきます。 この演奏、パソコンの内臓オーディオではそれほどでもありませんが、オーディオセット経由で再生してみると、ハープシコードの音がやたらと耳に付きます。正直なところ亭主はかなりの違和感を覚えてしまいました。あれほど楽器の音量に不満を抱いていた亭主にとって、これは自分でも予想しなかった反応です。 ここで大急ぎで弁解すれば、これは単にハープシコードがほとんど聞こえない演奏に耳が慣れてしまっていただけなのかもしれません。この録音に限らず、ヘンスラーのバッハ全集に収まっているハープシコードのサウンドそれ自体はどれも実に素晴らしいもので、「いったいどうやったらこのようないい音で録れるのだろう」と、再生する度に驚異の的です。 生演奏と違い、音盤作りでは、演奏者の音楽についての考え方次第で、楽器のバランスも含めサウンドを自由自在に調整することができます。リリングによる「音作り」も、そのような音楽的思考の結果と思われます。一方で、このようなハープシコード中心の(突出した?)音の作りが必然性を伴っているかどうか、となるとやや気になるところ。 例えば、先にも触れたようにな「通奏低音は合奏する楽員のためのもの」という視点も踏まえると、やや微妙な気もしてきます。 一方で、バロック期の「世俗音楽」は、王侯貴族のサロンのようなこじんまりした空間で、少人数の聴衆を相手に奏されたことも多く、貴紳達は至近距離にあるハープシコードの音をこういう鮮明さで耳にしていたのかも知れず。(リリングの録音はそのような状況を再現したと言えなくもない?) というわけで、楽器間の音量バランス、これといった正解がない課題なのかもしれません。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
December 19, 2021 08:20:42 PM
コメント(0) | コメントを書く
[音楽] カテゴリの最新記事
|