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カテゴリ:音楽
昨年のショパン国際ピアノコンクールに関連して、反田恭平さんに次いでメディアが大きくカバーしていたのが「ピアニスト」角野隼人さん。コンクールでは予選敗退したものの、もともとネットの世界では有名人のようで(Cateen[かてぃん]という名前でユーチューバーとして活躍しており、60万人もフォロワーがいるとか)、このところテレビの音楽番組でも時折姿を見かけます。さらに先週末には、A新聞の土曜版別刷一面トップで長文のインタビュー記事として取り上げられていたのを目にし、じっくり拝読。
今や業界の有名人として知れ渡っている彼の経歴(ウィキペディアにもちゃんと項目が立っている)を仔細に眺めると、色々な意味でほぼ同じ世代である反田恭平さんとはまさに対照的、という印象です。 学齢前から小学校4年まで毎年ピティナ・ピアノコンペに出場、その後も受験勉強に追われていない中3、大学4年でコンクールに出場し好成績をあげています。これを見ると、ピアノは同世代の中でも常に上位の実力を持っているとの自認はあったようで、反田氏に似ていなくもありませんが、「ピアノはあくまで趣味」という位置付けだったようで、お勉強もよく出来たのか開成中学・高校から東京大学へ、と受験エリートコースを進みます。 A新聞の記事によると、本人は「大学でもやりたいことがあった」と語っていますが、具体的な内容には口をつぐんでいるように見えます。大学入学後は工学部に進んで音声情報処理の手法について学び、さらに大学院修士課程では機械学習を用いた自動採譜と自動編曲について研究したということなので、一応何か音楽に関係したエンジニアを目指していたということなのかもしれません。 とはいえ、修士1年生になった角野クン、フツーの大学院生ならいよいよ就職活動に本腰を入れなければならないタイミングですが、何とここでまたピティナ・ピアノコンペに出場。 亭主が想像するに、彼はこの期に及んでもまだ自分の進むべき道に大いに迷っていたようです。その挙句、自分ではどうしても決められないので、コンペ(の成績)に決めてもらおう、と考えたのでしょう。本人的には「コンペで成績が振るわなければピアニストで食べていくのは無理だろうから、そこで諦めが付く」とでも思っていたのかも? ところがどっこい、コンクールで大喝采を浴び(特級グランプリ及び文部科学大臣賞、スタインウェイ賞を受賞)、本人曰く、ようやく本気でこの道に進むことを決心した、というわけです。とは言うものの、さすがにこの程度の心構えではショパン国際ピアノコンクールの壁は突破できなかったでしょう。(実際その通りになっています。) 彼に限らず、東大に進学するような学校秀才は、自分が本当は何をやりたいのか、などというメンドウな悩みは後回しにし、「とりあえず東大に行けば選択肢も色々あるから」という言い訳を自分に言い聞かせて東大に入る(親もそう言って受験に向かわせる)ことが少なくないようです。 とはいうものの、選択肢が多くなるほど選べなくなる、というのが行動経済学でも「選択のパラドックス」としてよく知られた人間の性(さが)。返って悩みを深めるだけです。 さて、フリーランスのピアニスト(亭主流に言えばお笑いタレントなどとおなじ)として生きる決意をした、という角野クン、前述のような想像が当たっているとすると、そんな決意とは裏腹にこれからも悩みは尽きないと思われます。「大猫のワルツ」は確かに魅力的な小品ですが、飽きっぽく、時にわがままなネット上の観客を相手に人気商売を続けるのはそう簡単ではないかも。彼の音楽活動はクラシック音楽業界の本流からは随分と外れているように見えるので、売れなくなった時には自分で何とかするしかなさそう。彼の選択が本物だったかどうかは、その時に初めて明らかになることでしょう。 いずれにせよ「幸運を祈る」です。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
January 16, 2022 10:02:33 PM
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