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カテゴリ:音楽
つい先日正月を迎えたと思っていたのに、いつの間にかもう1月も下旬です。正月休みの間、例によって暇つぶしにユーチューブで古楽関係の動画を漁って見ていましたが、その中でも特に亭主の耳目を引いたのがバンジャマン・アラールのクラヴサン演奏でした。
アラールはフランスの鍵盤奏者、1985年生まれとのことなので齢30歳代後半に差し掛かったところ。まさに気力・体力も充実して万能感に溢れた年代と想像されます。実際、彼は数年前からハルモニア・ムンディで父バッハの全鍵盤作品(オルガンを含む)を録音するという大プロジェクトに取り組んでいるとか。(思い返せば、スコット・ロスやピーター・ヤン・ベルデルがスカルラッティのソナタ全曲録音を果たしたのも彼らが30歳代のころでした。) ちなみに、彼はブリュージュの古楽フェスティバルの一環として3年に1度開催されるハープシコードのコンクールで2004年に優勝し(この年の審査委員にはレオンハルト、ブランディーヌ・ラヌー、デヴィッド・モロニーら錚々たる名前が見えます)、以来ハープシコード・オルガンの演奏家としてこの世界で着々とキャリアを積んでいるようです。 とはいえ、亭主がアラールの名前を最初に意識したのは昨年秋、フルートのエマニュエル・パユと来日するというニュースに接した際でした。それ以前は単なる名前だけの存在で、既に来日公演(後述)を果たしていたことにも気づかなかったほど。 この時のアラールは伴奏役ということで、どうせ聞きに行くならやはり彼のソロ・リサイタルだろうと思いスルーしましたが、来る今年2月に予定されていたソロ・リサイタルはコロナ禍であえなく5月まで延期に。 そこで、代わりにといっては何ですが、以前に見逃していたソリストとして初来日時のリサイタル(2018年12月8日、会場は武蔵野市民文化会館小ホール)の様子を収録した番組の再放送(先週水曜日)を録画で眺めることに。演奏会当日のプログラムは2部構成で 第1部(ハープシコード) J.S.バッハ:ソナタ ニ短調 BWV 964 J.S.バッハ:ラルゴとスピッカート ニ短調 (ヴィヴァルディからの編曲) BWV 596 J.S.バッハ:イタリア協奏曲 ヘ長調 BWV 971 第2部(オルガン) J.S.バッハ:協奏曲 イ短調 BWV593 J.S.バッハ:コレッリの主題によるフーガ 変ロ短調 BWV 579 J.S.バッハ:トリオソナタ 第4番 ホ短調 BWV 528 J.S.バッハ:前奏曲、トリオとフーガ BWV 545b といずれもバッハの作品ばかりから構成されています。さすがにこれら全部を1時間という番組の尺には収められず、放映されたのは前半からソナタとイタリア協奏曲、後半はトリオソナタと最後のBWV 545bでした。 (ちなみに、トリオソナタ第4番のアンダンテは、最近ヴィキングル・オラフソンがA.ストラダルの編曲版をピアノで取り上げて話題になっている作品ですが、亭主は原曲をこの演奏で初めて聴きました。) ところで、この番組の面白いところは、演奏に加えて奏者本人へのインタビューに接することができる点です。冒頭「とにかくバッハのことで頭がいっぱいというアラールさんにインタビューしました」というナレーションで始まったビデオ、ほぼ彼のモノローグの形に編集されていましたが、せっかくなのでその内容を以下に文字起こしでご紹介。 「バッハは膨大な数の曲を作曲した音楽家です。バッハの音楽は常に私に寄り添い、私を支え音楽への探究心を駆立ててくれます。絶えず研究し学び続けていても知り尽くすことのできない作曲家です。長く弾き続けている作品でも初めて弾くような感覚にとらわれることがあります。それは聴衆にとっても同じで、バッハは聴衆も演奏者も絶えず魅了し続ける作曲家なのです。バッハはまるで「スポンジ」のように先人たちの音楽の全てを、そしてさまざまな国の音楽スタイルを吸収した作曲家です。イタリアはもちろん、フランスの舞曲などもバッハに強い影響を与えています。これら全てを習得して、さまざまな影響を受けながらも常に自分の音楽を書き続けることができた。バッハは当時すでにあった作曲法や音楽様式を駆使し、時代を超越する音楽を生み出しました。当時の音楽界に新風をもたらしたのです。バッハを演奏するには演奏者は勤勉でなければなりません。寝ても覚めてもバッハと一緒にいる日常生活です!」 う〜ん、ここまで臆面もなく「バッハ命」をコクられるとこちらも赤面しますが、亭主にとってやや怪訝に思われるのは、フランスにはバッハに優るとも劣らないクラヴサン音楽があるのに、なぜフランス人でもある彼がここまでバッハにハマるのかです。(ちなみに、延期になった今度の来日公演もオール・バッハ・プログラム)あえて想像するなら、フランス・バロック音楽はイタリアを故郷に持ち、バッハのそれもイタリア的な明朗さやオペラ的(劇的)性格を持つこと、さらにはあの半音階主義がポストモダン的感覚(?)にピタっと来ることが挙げられるかも? とはいえ、かく言う亭主も、気づいてみるとこのところ毎週末譜面台にあるのはバッハの譜面がほとんど。今日も(アラールの演奏に刺激されて)ベーレンライター版のクラヴィア練習曲集第2巻を取り出し、イタリア協奏曲とフランス風序曲をポロポロやってしまいました。バッハ恐るべし… なお、亭主は彼がフランス・クラヴサン音楽のレパートリーを披露したユーチューブ動画がお気に入りですので、ついでにそのリンクを以下に置いておきます。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
January 23, 2022 08:55:19 PM
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