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未音亭日記

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未音亭@ Re[1]:セバスティアン・デ・アルベロ「30のソナタ」(01/15) tekutekuさんへ これまた情報ありがとうご…
tekuteku@ Re:セバスティアン・デ・アルベロ「30のソナタ」(01/15) ジョゼフ・ペインのライナーノーツに関し…
tekuteku@ Re:セバスティアン・デ・アルベロ「30のソナタ」(01/15) ジョゼフ・ペインのライナーノーツに関し…
未音亭@ Re[1]:セバスティアン・デ・アルベロ「30のソナタ」(01/15) Todorokiさんへ コメントありがとうござい…

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February 11, 2022
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カテゴリ:音楽

先月1月10日の週に放送された朝古楽、藤原一弘さんによるレオンハルト没後10周年に因んだ企画の第2回放送分を文字起こししましたので、以下にアップします。

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古楽の楽しみ ▽グスタフ・レオンハルトの軌跡(2)
[ご案内:藤原一弘/グスタフ・レオンハルトの演奏で、ルイ・クープラン、ラモー、フォルクレなどフランスの作曲家の作品をお送りします。]

レオンハルトの演奏は、チェンバロのために書かれた音楽のみならず、17世紀と18世紀前半に書かれたあらゆる音楽に対する、従来の評価を一変させるほどの衝撃を与えることになります。彼の演奏を支える大きな力となったのが、優れた楽器製作家の存在です。中でも、ドイツ人チェンバロ製作家、マルティン・スコヴロネックによるチェンバロの数々は、彼がチェンバロによって様々な表現をするための演奏法に、決定的なインスピレーションを与え続けました。

これからお聴きいただくのは、ジャン・アントワーヌ・ヴォードリが1681年頃パリで製作したクラヴサンをモデルに、スコヴロネックが1977年に製作した楽器です。作品は、ルイ・クープランの前奏曲イ短調、拍節のないプレリュード・ノン・ムジュレです。全ての音符は全音符として記され、テンポや音の長さは演奏者が自分で判断しなければなりません。長い前奏曲では、中間部にフーガ風の部分が挿入されます。レオンハルトは、それまで奇妙な記譜法による不可解な音楽、とみなされていたプレリュード・ノン・ムジュレを、音楽学者の言葉による説明ではなく、和声的創意に満ち、多彩で繊細な表現力に溢れた、血の通った感動的な音楽として演奏することにより、若い弟子たちの心にチェンバロという楽器の豊かな表現力と、優れたチェンバロ音楽の魅力を伝えたのでした。ではお聞き下さい。ルイ・クープラン作曲、前奏曲イ短調、1979年の録音、演奏はグスタフ・レオンハルトです。 
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アムステルダムのニーウェケルク、新教会とエグリーズ・ワロンヌあるいはヴァルセケルク、フランス改革派教会のオルガニストを長年務めた、オルガニストとしてのレオンハルトへの評価は、チェンバリストとしての圧倒的な評価に比べ、やや地味な印象を与えるかもしれません。歴史的なオルガンへの深い愛情は、バーゼルでの学生時代から、各地のオルガンを訪ね、内部を見、パイプの製作法を探り、そして弾くという、晩年まで続く情熱的なオルガン探訪へと彼を駆り立てました。これからお聴きいただくのは、1690年、ペーター・ゴルトフスが、ベルギーの首都ブリュッセルから東方十数キロに位置する都市、ルーヴァンのベギン会大修道院、洗礼者ヨハネ教会に製作したオルガンです。作品は、ベルギーのオルガニスト、ランベール・ショーモンによる典型的な17世紀フランスの様式で書かれた典礼用オルガン音楽です。1695年出版の8つの旋法によるオルガン曲集より、第2旋法の前奏曲、フーグ・ゲ、レシ、ドゥオ、ディアローグ、プラン・ジュ、1993年の録音で、演奏はグスタフ・レオンハルトです。

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次に、ジャン・フィリップ・ラモーによる、オペラの序曲をお聴きいただきましょう。1748年に初演された歌劇「ザイス」の序曲は、世界を構成する地・水・火・風の四大元素が、分離せずに混ざり合った混沌状態、カオスを描いています。

18世紀の作曲家たちは、カオスの表現に魅了されており、「ザイス」より早い1737年に初演された、ジャン=フェリ・ルベルの「四大元素」冒頭のカオス、また1798年に初演されたヨーゼフ・ハイドンのオラトリオ「天地創造」冒頭のカオスの描写も、同様の発想に基づいています。ここではまず、太鼓の独奏から開始されることに驚かされます。18世紀フランスの、そしてラモーの卓越したオーケストレーション、レオンハルトの指揮のもと、普段よりはるかにはつらつとしたラ・プチット・バンドの演奏をお楽しみください。ではお聴きください。ジャン・フィリップ・ラモー作曲、歌劇「ザイス」から序曲、演奏はラ・プチット・バンド、 指揮グスタフ・レオンハルト、1977年の忘れ難い名演です。

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レオンハルトは、モンテヴェルディ、ラモーのオペラ上演を行っていましたが、あまりにも音楽以外のことに関わらざるを得ないが故に、やがてステージから去ってしまいます。

再びクラヴサンの演奏をお聴きいただきましょう。ガスパール・ルルーが1705年に出版したクラヴサン曲集から、前奏曲、アルマンド、クーラントの3曲、前奏曲はノン・ムジュレです。ルルーはあまり演奏されることのない作曲家ですが、この演奏を聞けば演奏したい、という気持ちになる演奏家も多いのではないでしょうか。

使用されているのは、ニコラ・ルフェーブルが1755年に製作し、スコヴロネックが修復したクラヴサン、ということになっていますが、実はこの楽器、スコヴロネックがレオンハルトとの会話の中で、18世紀中頃のアンリ・エムシュのオリジナルのクラヴサンに迫るコピーを製作できるはずだ、と主張したのに対し、レオンハルトが「なら証明しなくてはね」と答え、新しい楽器をこの場で注文したのです。ルフェーブル作のクラヴサンを修復した楽器、という触れ込みで出来上がったクラヴサンは、まさにエムシュのオリジナルに勝るとも劣らない、素晴らしい楽器だったというわけです。スコヴロネックは、この経緯を2002年に論文として発表しています。ではお聴きいただきましょう。ガスパール・ルルー作曲、組曲ヘ長調から前奏曲、アルマンド、クーラント、演奏はグスタフ・レオンハルト、1989年の録音です。

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もう一曲、アルマン・ルイ・クープランが1752年に出版したクラヴサン曲集から、「アルルカン、あるいはアダム」をお聴き頂きましょう。彼はフランソワ・クープランのいとこ、ニコラ・クープランの息子にあたり、当時オルガニストとして極めて高くされていましたが、1789年2月1日、晩課からオルガニストの職務を果たしての帰り道で、馬車に轢かれて世を去ります。

アルマン・ルイの「アルルカン、あるいはアダム」は、恐らく当時人気のあった道化師アダムも描写した、音楽による肖像、ポルトレと思われます。レオンハルトの演奏は、笑いを振りまいたと思うと悲しみ涙し、またすぐに舌を出すような、千変万化で猥雑な存在という、道化のイメージを鮮やかに音として描き出しています。使用楽器はスコヴロネック作のヴォードリ・モデルです。ではお聴きください。アルマン・ルイ・クープラン作曲「アルルカン、あるいはアダム」、演奏はグスタフ・レオンハルト、1987年の録音です。

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ここでもう一曲、ラモーの歌劇「ピグマリオン」の序曲をお聴きいただきましょう。理想の女性を大理石に彫ったキプロス王、ピグマリオンがその石像に恋をしてしまう、というギリシャ神話に基づく作品です。序曲の後半部はフーガ風の展開となりますが、16分音符による同音反復による主題は、王がノミで大理石を彫る様が描かれています。ではお聴き下さい。ジャン・フィリップ・ラモー作曲、歌劇「ピグマリオン」から序曲、演奏はラ・プチット・バンド、 指揮グスタフ・レオンハルト、1980年の録音です。

今日最後にお聴きいただくのは、ジャン・バティスト・フォルクレによるシャコンヌ「ラ・モランジ、あるいはラ・プリッセ」です。有名なヴィオール奏者、アントワーヌ・フォルクレの息子、ジャン・バティストは、息子の才能を嫉妬した父から投獄されるなど、酷い扱いを受けたにも関わらず、父のヴィオール曲集、及びそのクラヴサン編曲を出版する、という寛大な心の持ち主でした。

「ラ・モランジあるいはラ・プリッセ」は、ジャン・バティストが父の曲集中に入れた、3曲の自作の内の一曲で、第3組曲の終曲となる長大なシャコンヌです。タイトルはまったくの謎で、何のことやらわかりません。クラヴサン編曲は、クラヴサンのあらゆる技巧の集大成とも言える、見事な作品となっています。レオンハルトの演奏は、速いパッセージでも単に突っ走るだけの薄っぺらな表現に陥ることなく、常にしなやかさを失わない、それでいて迫力に満ちた、圧倒的な演奏を聴かせてくれます。クラヴサンはルフェーブル作といわれるスコヴロネック作のクラヴサンです。ではお聴き下さい。ジャン・バティスト・フォルクレ作曲、「ラ・モランジあるいはラ・プリッセ」、演奏はグスタフ・レオンハルト、1991年の録音です。

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このシャコンヌは、レオンハルトによる最高の演奏のひとつに数えられると思います。レンハルトによるフランス音楽、いかがだったでしょうか。フランス音楽固有の繊細な揺らぎ、曖昧さの中に美を見いだす精神を、レオンハルトがいかに深く愛しているかが伺われる演奏の数々でした。明日はレオンハルトのドイツ音楽の演奏をお聞かせいたします。

それでは皆様、どうぞよい一日をお過ごしください。ご案内は藤原一弘でした。

(つづく)





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Last updated  February 12, 2022 08:47:31 AM
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