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未音亭日記

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tekuteku@ Re:セバスティアン・デ・アルベロ「30のソナタ」(01/15) ジョゼフ・ペインのライナーノーツに関し…
tekuteku@ Re:セバスティアン・デ・アルベロ「30のソナタ」(01/15) ジョゼフ・ペインのライナーノーツに関し…
未音亭@ Re[1]:セバスティアン・デ・アルベロ「30のソナタ」(01/15) Todorokiさんへ コメントありがとうござい…

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April 24, 2022
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カテゴリ:音楽
昨日、Piano Streetというクラシックピアノ音楽の広告サイト(?)からのメールを眺めていたところ、「All Scarlatti Sonatas Ranked! It's virtually impossible to grasp all Scarlatti's 559 sonatas. Here is a ranking in categories by Jeffrey Arlo Brown. Do you agree? 」という見出しが目に留まりました。思わずリンク先をクリックしたところ、ジェフェリー・ブラウンさんというベルリン在住の音楽ライターのウェブサイトが出現(こちら)。

件の記事が書かれたのは一昨年(2020年)の6月25日とあり、既に旧聞に属します(なので、なぜ今頃Piano Streetで配信されたかは不明)。前書きには、 「私はそれぞれの作品を修道僧のように集中して聴いたとは言わないし、私の観察が正しいことを保証するものでもない。しかし、少なくともコロナウイルスによる社会的荒廃のおかげで、私は本当に一つ一つの作品を全部聴いたのだ。というわけで、もう貴方にはその必要はない」とあります。

この日付に先立つ4−5月、ヨーロッパではちょうど最初のコロナV感染がピークを迎えた時期で、世人の多くが自宅軟禁状態だった頃にあたります。ブラウンさんも家ですることがなく、暇つぶしにスカルラッティのソナタ全曲を聴いてみる、という一大プロジェクト(?)を思いついたのでしょう。

とはいえ、全曲通しての演奏時間が三十数時間もかかる作品群を、一体どういう条件下で鑑賞したのか?(まさか1日8時間、ぶっ通しで聴き続けた? そうだとしても4〜5日、しまいには気もそぞろになるはず。)ドメニコのソナタを好物とする亭主ですら、それらを楽しみながら聴いたり弾いたりできるのは一度にせいぜい10~15曲程度です。(そもそも、「修道僧のような集中」という言葉をみると、こういう態度を前提とするクラシック音楽の聴衆観が垣間見えるというもの。)

さらに、どれも個性的で似たところのない上に、カークパトリック番号でしか区別できない555曲という途方もない数のソナタを順位づけをするなど、どんな基準にせよ真面目にできるはずもなく、要するにこのランキング、ちょっと気の利いた冗談の類として気軽に受け流すべきものだと思われます。

実際、ブラウン氏いわく、
「自分の正気を失わないよう、各ソナタに固有の順位をつける代わりに、作品をカテゴリー別にランク付けした。貴方の正気を保つために、すべての曲ひとつひとつに注を加えることはせず、そのカテゴリーに由来する、あるいはその他の面で面白いと思ったことだけを注記している。リストには補遺的な作品も含まれており、標準的な555曲から559曲になった。主にスコット・ロスのチェンバロ録音を聴いたが、時々ピアノでも聴いた(悪かったね)。」とのこと。

さらに続けて、
「ソナタの『完璧なオリジナリティ』や『目を見張るような革新性』を指摘する作家がいる一方で、現実には退屈であったり、月並みであったり、また単に駄作であったりするものが多いのも事実である。このような作品を録音するにあたって完璧な音楽家が覚えておくべき事実、それは『誰かに聴かせるための演奏』ということだ。しかし、ここには信じられないような音楽もある。最高の作品は、しばしば私のスカルラッティへの信頼だけでなく、人間性への信頼も回復させてくれた。貴方の好きなスカルラッティのソナタを教えてほしい。数日後、無響室から出たところで私のお気に入りと聴き比べてみよう。」

ここでもう一点、亭主はやはり「ドメニコのソナタは自分で(できればハープシコードで)弾いてみてこそその楽しさがよくわかる」と痛感します。ブラウンさんの言う「退屈であったり、月並みであったり、また単に駄作であったりする」作品も、自分で弾いてみればまったく見方が変わることもあるでしょう。

それにしても、スコット・ロスの演奏とは随分昔の音盤を引っ張り出したもの。最初に全曲録音を果たしたという功績はさておき、数多くの演奏に接した亭主から見ると、ロスの演奏はテンポの揺れを意図的に避けている点が返って耳につき、単調に感じられることがままあります。例えばピーター・ヤン・ベルダーの演奏であれば、だいぶランキングも変わったことでしょう。

なお、ついでということで、ブラウンさんが選ぶ(ロスの演奏での?)最下位と最上位の20曲のリストを、彼の注記と共に以下に引用しておきます。

ワースト20
K512
K547: バラバラ
K478: 不鮮明
K514: 無骨で無機質
K374: 4分のうち2分までが素晴らしく退屈
K437:異様に長い4分。
K440: [哀願調に]どうして後期のソナタは悪くなる一方なんてことがあるのか?
K391: 3分18秒とは長すぎ。
K492: 中身がない。
K268: もっさり。盛り上がらない。
K11: こだわりが強い
K68: 全然進まない。長いし、単調。
K110:極めて定型的
K122:ただただつまらない。
K143:うっとうしい。
K206: 6分の1くらいで飽きた。
K210: ダサい。
K229:聞くのが面倒。
K245: アルペジオが多過ぎ。
K267:最悪だ。
K310:聴くべきものがない。
K398: バカなオクターブ

ベスト20:
K62: 最初の30秒の大きなコントラスト、バリバリの不協和音、奇妙なペダル音、最後の劇的な走り。
K94: 驚くべき半音階を伴ったソフトなダンス。
K46:奇妙な転調とすさまじいペダル音の瞬間が素晴らしい。
K162: 多様で面白い不協和音を伴うソフトな曲。
K22: 勢いがよい。簡潔で要領がよい。
K291:ソフトで詩的。シューベルトの「ライアー弾き」を思い起こさせる。
K32: 宝石のようだ。
K18: すぐにわかるカリスマ性で飽きさせない。
K64: 超格好いい巨大和音。ヘビーメタル。
K95: 楽しくボーっとしている。
K111:素晴らしく歪んだリズムと交差する係留。素材にこだわり、指を回し過ぎない。珠玉の一曲。
K144:ゴージャスで、惑わすようなカデンツが美しい。
K185:シンプルで美しく、エレガント。
K208: とてもきれい。
K213: 素晴らしく神秘的な半音階と減音和声。
K347:超劇的。
K436:感情の極限において他の幸福なソナタを凌駕している。
K497: 引き込まれるような曲。
K517:強烈な快感。
K141: クラシック

ランキングが最下位から最上位へと並んでいることから、ブラウンさんにとってのベストはK.141ということのようです。








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Last updated  April 24, 2022 09:58:26 PM
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