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カテゴリ:音楽
正月休みの2日目、例によってバロック音楽専門チャンネルのネットラジオを聞き流していたところ、何となくドメニコ・スカルラッティのソナタに似た曲が流れてきました。さっそくネットのストリーミング情報を確認したところ、ロール・コラダン(Laure Colladant)というフランス人演奏家による表題の作品の音盤からのもので、件の曲は第11番のソナタでした。演奏家と曲の情報を頼りにネットで検索をかけたところ、元の音源は1990年代にリリースされたCDであることが判明。(どうやらコラダンさんのデビュー盤だった模様。当然ながら今では入手困難な音盤で、中古CDはびっくりするような高値がついています。)
亭主は以前、アンドレアス・シュタイアーの演奏によるアルベロの「6つのレセルカータ、フーガとソナタ」を聴いて以来、これらの曲にどハマりしていますが、「30のソナタ」についてはあまり注意を払っていませんでした。そこで、まずはIMSLPから原典をカラーコピーしたと思われるPDF楽譜をゲットし、問題の第11番を印刷して自宅のハープシコードでポロポロやっていたところ、ピンと来たのがドメニコのソナタK.247です。両者の間では、3拍子による全体の調子が共通していることに加え、左手の付点リズムによる和声進行のパターンがよく似ています。 K.247はおそらくドメニコのソナタの中でも特によく知られた曲のひとつで、ハープシコード、ピアノのいずれでも取り上げられる機会が多い作品です。亭主のCDライブラリの中でも2つの楽器それぞれ5人もの演奏家が競演していますが、ハープシコードの演奏はスコット・ロスのそれをはじめどれも速いテンポで弾いており、ネットラジオで流れてきたアルベロのソナタとはかなり違った印象を与えます。一方、ピアノによる演奏はちょうど真逆で、ほとんどの演奏家が遅めのテンポでしっとりとした雰囲気を出してます。(ハープシコードでもっとも後者に近い演奏はキャロル・セラシによるもので、今の亭主にはこれがお気に入りといったところ。) この週末、さらにこの「30のソナタ」について調べていたところ、何と亭主のCD棚にあるジョゼフ・ペイン(Josepf Payne、1937-2008)の演奏による「Sonatas Para Clavicordio」という音盤(こちらも1993年リリースの年代もの)にその一部が収まっていたことが判明(「灯台下暗し」とはこのことです)。そうと気づかなかった訳は単純で、CDに収録されているソナタの数が17曲と中途半端で「30のソナタ」という曲集との関係が直ぐには分からなかったからでした。(長文のライナーノートを改めてよく読むと、3ページ目の中程になってようやく収録されたソナタが「from the set of thirty sonatas of the Venetian collection」という記載に遭遇。IMSLPにアップされていたのも同じヴェネチア、マルチアーナ図書館所蔵の手稿です。) このCDにはこれまでドメニコの作品とされてきたK.142(嬰ハ短調)、K.143(ハ長調)、K.144(ト長調)の3曲もふくまれており、これらは今ではアルベロの作品であると認定されているようです。特にK.144のカンタービレはやはり有名なソナタの一つで、亭主が大好きな曲でもあります。が、これまでは漠然とドメニコの作品とみなしていたこともあり、今回改めて作品の由来を確認するとともに、アルベロという音楽家に益々興味が湧いてきました。 ちなみに、「30のソナタ」中の第1番と第2番(いずれもハ長調)は、その後マドリード王立音楽院の図書館で見つかった手稿(MS 3/1408)の中にも含まれていましたが、そこでは誤ってドメニコ・スカルラッティ作とされていたとのこと。このエピソードからも分かるように、音楽家としてのアルベロの実力は(おそらく鍵盤演奏家としても)ドメニコに匹敵するものだったと推測されます。 スカルラッティの研究者で、斯界のシャーロック・ホームズのような存在だったヨエル・シェヴェロフは、かつてカークパトリックがドメニコの作としたソナタのうち、K.95、K.97、およびK.142からK.146の7曲については由来が疑わしく、番外にすべきと考えていました。そのうちの3曲までがアルベロの作品とわかったことと合わせると、もしかすると残りの番外作品もそうかも? さらには、他のソナタも?…という妄想が湧いてきます。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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