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カテゴリ:音楽
表題の作品、亭主はIMSLPにある原典のPDFをカラー印刷したものを楽譜として使っていましたが、やはり読みにくいのは如何ともし難いところ。演奏用には使える現代譜はないものかとネットを検索していたところ、R. L. Whitneyという奇特な方が校訂した印刷楽譜が2018年に出版されていたことを知り、早速Amazonでクリック。先週になって国際郵便で無事到着しました。
この週末、これを譜面台に置いて全30曲を端から音にする間、「次はどんな曲だろう」とワクワクしながら楽譜をめくり続ける楽しい時間を過ごしました。その昔、ドメニコ・スカルラッティの楽譜を前に同じように過ごした十数年前のことがなつかしく思い出されました。 一方で、ドメニコの音楽に出会った当時と大きく違うのは、その後亭主が同時代のさまざまな音楽家の作品に接して耳のデータベースが劇的に増大したことです。同じイベリアの音楽家に限ってもカルロス・セイシャス、アントニオ・ソレール、ブラスコ・デ・ネブラといった音楽家の多彩な鍵盤音楽の世界が広がり、それに伴って感受できる差異のグラデーションも細かくなったように思われます。こうなると、音楽を語ろうとする時にどうしても既知の音楽と比較してしまう、という習性も頭をもたげてくるのが困ったところ。 で、それならいっそのこと開き直ってしまおう、ということで、きょう一日30のソナタを弾いたり聴いたりした印象を他の音楽家のそれに例えてみたのが以下のリストです(左はソナタの番号)。 1.ソレール風 2.スカルラッティ風 3.ネブラ風 4.ソレール/スカルラッティ風(独自の和声進行) 5.スカルラッティ風 6.ソレール/スカルラッティ風(独自の和声進行) 7.ソレール/スカルラッティ風(独自の和声進行) 8.ソレール/スカルラッティ風(独自の和声進行) 9.スカルラッティ風(Esserzici風) 10.スカルラッティ風 11.スカルラッティ風 12.ソレール/スカルラッティ風 13.ソレール風(独自の和声進行) 14.スカルラッティ風 15.フーガらしくない? 16.スカルラッティ風 17.スカルラッティ風 18.スカルラッティ風(成熟期) 19.スカルラッティ風(成熟期) 20.スカルラッティ風 21.スカルラッティ風(成熟期) 22.ソレール風 23.スカルラッティ風(成熟期) 24.ソレール風 25.スカルラッティ風 26.セイシャス風 27.ハイドン風 28.スカルラッティ風(独自の和声進行) 29.スカルラッティ風(成熟期) 30.猫フーガっぽくなくもない? 先のブログにも書きましたが、これら30曲のうちこれまで亭主が知っていたのはジョゼフ・ペインによる14番までの前半のソナタのみ。今回初めて全部の作品に触れることができ、もう一つの作品「6つのレセルカータ、フーガとソナタ」と合わせて、アルベロという音楽家の印象が定まって来た感じです。 これら(少数とはいえ)充実した作品群を前にして今さらながら驚いたことに、アルベロの生没年は1722年-1756年と、その生涯はわずか34年という短いものでした。(セイシャスも38歳の若さで他界していますが、もっと早逝です。)一方で、その長くはない生涯はスカルラッティ(1685-1757)、セイシャス(1704-1742)、ソレール(1729-1783)の活動時期と重なっており、宮廷や教会でお互い何らかの接点があったらしいことも考えれば、多少とも影響を及ぼしあったことは想像に難くありません。 ただ、今回30曲を聴いて改めて感じたのは、アルベロの作風が他の同僚の誰よりも調性における浮遊感が際立っていることです(上記リストで「独特の和声進行」と書いたのもそのような一端を捉えてのもの)。確かにスカルラッティとの親近性は大きいものの、アルベロが決して単なる 彼のエピゴーネンではないことは明らか。(「スカルラッティ風(成熟期)」と書いた作品はアルベロのオリジナル性が際立っています。) さらに、第3番はマニュエル・ブラスコ・デ・ネブラ(1750-1784)を、第27番はヨーゼフ・ハイドン(1732-1809)を先駆けているようにも思われ、その意味でもオリジナリティに溢れた音楽家であるという印象をさらに強くしましした。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
January 29, 2023 10:11:29 PM
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