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カテゴリ:音楽
この週末、家人が団員(チェロ)を務めるアマチュアオケが定期演奏会をやるというので、東京は目黒区にある「めぐろパーシモンホール」に出かけました。
このホールは、旧東京都立大学の跡地に目黒区の複合施設「めぐろ区民キャンパス」の一角として建てられたもの。最寄駅は今でも大学名が残っている東急東横線の「都立大学」駅で、徒歩で7ー8分のところにあります。駅から「柿の木坂」をだらだら登って行った先にホールがあることからも想像できるように、名前の由来は英語で「柿」を意味するパーシモンとのこと。 ちなみにホールの竣工・開館は2002年とのことで、亭主どもが茨城県に移住した後ということもあってか、これまで全く訪れる機会がありませんでした(何しろ渋谷より南は茨城から遠い…)。なので、どのような響きを持つホールなのかもお楽しみの一つ。(後で調べたところ、ホールの音響設計はあの永田音響設計でした。) 当日は午前中上野の絵画展に立ち寄り、その足で昼過ぎに「都立大学」駅に到着。駅近くの伊太利レストランで昼食をとった後、開演(14時)の15分前ぐらいに会場に到着。全席自由ということで大ホールの一階席(650席超)を覗いてみると、すでに連席を取れそうにないほどの混雑ぶりにびっくり。2階席へ行くとまだ余裕があったのでこちらに陣取ることに。 演奏曲目は、はじめにロッシーニの〈セビリアの理髪師〉序曲、続いてメンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲、そしてトリはチャイコフスキーの交響曲第5番という意欲的なプログラム。指揮者は現在東京芸大指揮科4年在学中の岡崎広樹さん、協奏曲のソリストは鷲見(スミ)恵理子さんで、この演奏会で唯一(?)のプロの音楽家です。 開始早々、指揮者がマイクを片手に現れて聴衆に挨拶するところから演奏会は始まり、1曲目は緊張のせいかやや辿々しさが気になったものの、2曲目ではヴァイオリニストが圧巻の名人芸を披露し、オケも必死でついていく様子が会場を大いに沸かせます。3曲目のチャイ5は、アマオケでもダントツの人気を誇る演目なこともあってか、その出来もなかなかのもの。そして最後のアンコール、指揮者がオケに指示を出しながら客席を向いているのであれ?と思っていると、なんと本人がオケを伴奏にイタリアのナポリ民謡「オー・ソレ・ミオ」を歌い始めたのにはびっくり仰天。しかもそれが亭主のご贔屓である櫻田亮さんによく似た素晴らしい美声で大いにエキサイトしました。(会場も大盛り上がりでやんやの大喝采です。) 後でプラグラムノートを読んで知ったことには、岡崎広樹さんはもともと声楽家を目指して芸大で学んでいたそうで、声楽科を卒業後改めて指揮科に入り直して指揮を勉強中とのこと。声楽と違い、指揮はやはり実際のオーケストラを相手のトレーニングが欠かせないと思われ、アマオケにも積極的に関わっているのだろうと想像されます。とはいえ、声の方も素晴らしいので、ぜひとも(大谷翔平に倣って)二刀流でのご活躍を期待したいところです。 さて、21世紀になって四半世紀近く、ビジネスとしてのクラシック音楽はいろいろな意味で先細り・行き詰まりの状況にあります。が、その中にあって亭主が見るところ数少ない希望のひとつは「アマチュアリズムの復権」です。 ビジネスとしてのクラシック音楽では、プロの演奏家と聴衆は截然と区別され、後者はひたすらブランド品としての「大作曲家の作品」の「名演奏家による演奏」を享受するだけの受動的な立場にあります。 亭主が思うに、クラシック音楽を(特に今の若者たちから見て)とっつきにくく、かつつまらないものにしているのがこの受動性ではないでしょうか? プロの演奏家の演奏にイチャモンをつけられるのは、業界で「音楽評論家」と認められた批評のプロたちだけで、一般聴衆はまるで宗教の典礼のようにプロたちの演奏を恭しく拝聴するだけの立場にあります。そうでないと、興行ビジネスとして成り立たなくなる恐れがあるからです。(とはいえ、先にこのブログで紹介した森本恭正さんの本によると、音楽評論家と呼ばれる人たちの中には、プロの演奏家と同じような教育・訓練を受けた人はあまりいないらしく、その批評も単なる印象批評と大差ないらしいということなので、これがホントなら驚きですが…) その点、アマオケの場合は演奏する側も聴く側も同じアマチュア同士。お互いに立場も交換可能で自由にモノが言える上に、とにかく「合奏が楽しい」という一点で集まった仲間同士の活動は、音楽本来の姿を体現しているとも言えるのではないでしょうか。 ちなみに、今回の演奏会中で唯一プロの音楽家であったヴァイオリニストも、演奏中は実にイキイキとして楽しそうに見えました。(聴衆の喝采に応じてアンコールも一曲ご披露されました。) というわけで、21世紀のクラシック音楽は「鑑賞する音楽」から「自分でやる音楽」へとシフトしていくのではないか、と柿の木坂を下りながら妄想にふける亭主でした。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
June 9, 2024 10:05:19 PM
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