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未音亭日記

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未音亭@ Re[1]:セバスティアン・デ・アルベロ「30のソナタ」(01/15) tekutekuさんへ これまた情報ありがとうご…
tekuteku@ Re:セバスティアン・デ・アルベロ「30のソナタ」(01/15) ジョゼフ・ペインのライナーノーツに関し…
tekuteku@ Re:セバスティアン・デ・アルベロ「30のソナタ」(01/15) ジョゼフ・ペインのライナーノーツに関し…
未音亭@ Re[1]:セバスティアン・デ・アルベロ「30のソナタ」(01/15) Todorokiさんへ コメントありがとうござい…

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August 25, 2024
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カテゴリ:音楽
最近何かの折に「ラ・ストラヴァガンツァ・ケルン」という古楽オケによるバッハの管弦楽組曲第2番の演奏を耳にしました。(調べてみると、8月7日朝のNHK-FM「クラシックの庭」で流れたようです。)この曲のキモとなるフルート(フラウト・トラヴェルソ)の演奏は有田正広さんで、アンドリュー・マンぜの指揮による1994年の録音でした。



ラ・ストラヴァガンツァ・ケルンという楽隊にあまり馴染みがなく、しかも日本人ソリストとの組み合わせで今から30年も前の音源がある、ということに興味をそそられた亭主、楽隊名でグーグル検索をかけたところ、CD発売元の日本コロンビアが運営するウェブサイト中の「この1枚」というメルマガのアーカイブサイトがヒット。その中の78番目の記事として「ラ・ストラヴァガンツァ・ケルン(有田正広:独奏)/J.S. バッハ:管弦楽組曲全集」が世に出るまでの詳しい経緯が紹介されているのに遭遇しました。

件の記事の筆者は元日本コロンビアの久木崎秀樹(くきざき・ひでき)さんという方で、「この1枚」インデックスのページの末尾にある経歴紹介によると「1989年に始まった同社の古楽シリーズ『アリアーレ』の立ち上げに参画」とあります。他のメルマガ記事なども眺めると、久木崎さんはこれ以降も同シリーズが終了となる2010年ごろまで継続的に関わっておられたようです。1980年代後半以降といえば、ちょうどヘンデル・バッハ・スカルラッティ生誕300年の記念の年を機に古楽全体が盛り上がりを見せていた頃で、「この1枚」の記事中でも音盤業界から見た当時の興味深い裏話を読むことができました。

亭主なりに理解したところによると、アリアーレ・シリーズは日本コロンビアが独自の音源によるレコードをリリースするための「デンオン(Denon)」レーベルから世に出た初期のシリーズで、オリジナル楽器によるものとしては最初のものだったようです。(ちなみに「アリアーレ」とは古いイタリア語で「飛翔」という意味だとか。)その中心となったのが有田正広さんで、その後は寺神戸亮、小島芳子といった日本人古楽奏者、あるいはクイケン四重奏団の演奏を世に出しています。(ちなみに、取り上げられた作曲家としてはモーツアルトやハイドン、さらにはベートーヴェンまでも含み、音盤の数ではバッハ以前の音楽はそれらと半々ぐらいといったところ。)

実は亭主も古楽関係のCDを集めている中で、これまで特に意識することなく同シリーズのものを3枚ほど手にしていました。そして、そのたびにジャケット表紙の有元利夫の絵がとても印象的で、この画家に興味を持つきっかけにもなったのでした。有元の作品が採用された経緯については、同シリーズの始まりについてのそれも含めて日本コロンビアのウェブページ(こちら)に詳しく紹介されています。




有元利夫(1946-1985)は油彩や版画で独自の境地を切り開いた画家で、「岩絵具、箔、金泥などを用いた独特の油彩技法と、素朴な画情を持つ作風は、日本の洋画界に新しい領域を拓くものとして期待されていた(ウィキペディア)」ものの、大変残念なことに38歳という若さで早世してしまいました。

亭主が彼の絵を見てすぐにイメージしたのはイタリア・ルネサンス初期(1400年代—クワトロチェント)の画家たちの絵でした。特にその幾何学的にシンプルな立体表現がピエロ・デラ・フランチェスカに似ているな、と思っていたところ、有元自身がこの画家から大きな影響を受けたことを率直に語っていたことを後で知り、なるほどと納得。

ちなみに、亭主がピエロ・デラ・フランチェスカのことを知ったのは学生時代、当時ハマっていた澁澤龍彦の「胡桃の中の世界」中の随筆「宇宙卵について」で紹介した彼の代表作の一つ「モンテフェルトロ家の祭壇画」で、その後ミラノに行く機会があった際にはブレラ美術館を訪ねてこの絵の前に立ち、ちょうど修復成って色鮮やかに蘇った画面に途方もなく感動したことが懐かしく思い出されます。有元は芸大3年の時(1971年)にヨーロッパを旅行し、イタリアのフレスコ画に深い感銘を受けたとあることから、彼もミラノで同じような出会いがあったのだろうと想像できます。


(ウィキペディアより)

興味深いことに、有元はバロック音楽を愛し、自身でもリコーダーをたしなんでいたとのこと。作品の題名にも「室内楽」、「厳格なカノン」、「ポリフォニー」、「7つの音楽」といった音楽に関わるものが頻出します。彼が1976年に大阪フォルム画廊東京店で開催した個展のタイトルは「有元利夫展-バロック音楽によせて-」。有元作品の背景には常にバロック期以前の音楽がこだましていたのだと思われます。

こうしてみると、アリアーレ・シリーズとは、早世した有元自身には成し得なかった音楽と絵画の総合を、有田正広さんや日本コロンビア関係者の手を借りてひとつの形にしたもの、とみなすことができる気がします。

このような試みは、CD+ジャケットというメディアの形があってこそ可能なもの。いまや主要な音楽享受の手段となったサブスクでは難しく、それによって失われた文化も小さくない気がします。





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Last updated  August 25, 2024 08:29:41 PM
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