ベートーヴェン=青春の音楽?
このところ最後の盛り上がりを見せている(?)ベートーヴェン生誕250年記念。特に先週12月16日は彼の250歳の誕生日ということもあり、テレビ・ラジオの様々なクラシック番組で彼の人となりや音楽が紹介されました。さらには、活字メディアでも年末恒例の交響曲「第九」演奏会にまつわる記事の連載や、その日本での受容史を紹介する特別記事など、かなりの露出度。さすがは「楽聖」です。こうなると、亭主としても自分のベートーヴェン体験をちょっと振り返ってみる気になり、記憶をたどってみることに。まず、亭主が小・中・高の学校時代を過ごした高度経済成長の末期(1960--70年代)は、爆発的にピアノが普及し、「ピアノのお稽古」が流行した時期でもありました。そこで最初に出会う「まともなクラシック音楽のレパートリー」の一つがベートーヴェンのピアノ・ソナタ(もちろん有名な作品が主)。記憶に残るLP時代の演奏家としてはケンプ、バックハウスといった名前が浮かびます。一方、学校の音楽鑑賞でも交響曲第6番「田園」や第9番はいわば定番。ピアノを習っている生徒にとっては、家でも学校でもクラシック音楽全体への入り口でベートーヴェンに出会うことになりました。交響曲ではカラヤン+ベルリン・フィルは斯界の帝王として君臨中でしたが、なぜか日本ではカール・ベームの人気が高く、ウィーン・フィルと来日して(1975年頃)第7番などを演奏した際の熱狂ぶりは今でも思い出されます。長じて室内楽、特に弦楽四重奏などにハマったのが大学生時代(1970年代終わり--1980年代)でしたが、このジャンルにおいて何と言っても抜きんでていたのがアルバン・ベルク弦楽四重奏団(SQ)の演奏。当時のクラシックファンの間でも人気が高く、来日公演はいつも満席。(亭主も東京での演奏会に押しかけて完璧なアンサンブルを堪能したのが記憶に鮮明です。)LPもアマデウスSQ、ジュリアードSQ、東京SQなど複数持っていましたが、特にラズモフスキー3曲など中期の録音で彼らの演奏に熱中しました。,,,とここまで来たところで、これ以後のベートーヴェン体験はどうも曖昧になってしまいます。要するに、昭和の終わりとともに彼の音楽を特に好んでは聴かなくなった、ということのようです。その後だいぶ経ってから、偶然ノリントン指揮+N響による演奏を聴く機会があり、あのノンビブラート奏法の新鮮な響きにイカれて全曲録音CDを購入・堪能しましたが、これは2010年代に始まった亭主の古楽趣味の延長上にあります。こうして振り返ると、亭主にとってベートーヴェンの音楽とは、結局のところ悩み多き「青春の音楽」、個人史における「疾風怒濤時代」の音楽だったということなのかもしれません。彼の音楽が同時代においてシュトルム・ウント・ドランク(疾風怒濤)の文学運動と呼応していたことも偶然ではない?ベートーヴェン、それは「クラシック音楽の青春」なのかもしれません。