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カテゴリ:飯坂・土湯・高湯温泉(福島)
先祖の墓参りがてら飯坂にひとりで一泊しました。
急に行こうと思い立ったのは、ご先祖の導きでしょうか。 泊った宿は、松島屋という年季のはいった温泉宿です。 この宿は、ガタイこそ古いですが、料金の割りに満足度はかなり高かったです。 部屋からの眺めも、風呂も料理もすべて文句なし。 仲居さんの応対も親身な感じでとてもよかったです。 私が飯坂温泉を好むのは、「温泉街」という、庶民のささやかな浮かれ気分を支えていたパラダイスの典型と幻影を見ることができるからです。 とりどりの旅館の名前の入った浴衣を着て、下駄を鳴らしながら群れをなす人々、競い合い声をかける土産屋、きつい坂の両側に建ち並ぶ射的やゲームやストリップ劇場、・・それらに代表される喧騒と同居した、「日本の慰安」というべき行動様式が、かつてはありました。 奥座敷の穴原温泉に完全に主役を奪われ、今はもう半分が廃墟となった温泉街と語り合うことは、自分の過ぎし時との対話のような気もします。 旅館の窓からみる老舗「若喜別館」は中を改装中でした。 仲居さんは、「もうかれこれ、一年以上も工事を続けているんですよ」といいます。 この旅館は名前を「望雲閣」と新たにし、再出発を期しています。「若喜」の名前がなくなるのは寂しいですが、営業が継続するだけましでしょうか。 松島旅館はそうした斜陽の温泉場にあって、まっとうな姿勢で営業を続けています。働く人たちの感じも、とても好ましいもの。 摺上川の対岸から見たときは、廃業した旅館たちと「面一」に建ち並んでいて、どうにも遣る瀬無い姿をしていましたが・・・。いざ玄関をくぐれば、フロントまわりや廊下など重要なところはきちんとリフォームしてあって荒んだ感じはまったくありません。 部屋の扉が、昔はやった、デコラとかいったか、ぺなぺなの木目材であるほかは、室内もかなりリニューアルされていて悪くありませんでした。とくに畳などは真新しいものです。もちろん細かくみればいろいろありますが・・、目をつぶりましょう。 テラスも広く、もとより窓からの景色は抜群です。 この宿、低料金の割りに料理がちゃんとしており、朝夕ともに部屋出しというのも親切です。 山形牛の陶板焼きやそばも付き、一品づつの味付けがとても丁寧。 しかもご飯がとてもおいしい。 一人なのにおひつに山盛り出してくれるので、とても食べきれませんでした。 「古い宿ですが、常連の方は、料理を楽しみに来られるようです」と客室係のてるみさん。 朝食は、また子鍋が出てきたので味噌汁かなと思ったら「ベーコンしゃぶしゃぶ」。 なるほど、これは嬉しい。朝から力がつく感じがする。 これは家でもやってみようかなと思う。 ラジウム温泉卵ってのも温泉らしくていい。 さて風呂は、男用は円形と小判型とふたつの湯船があります。どちらもそう大きいものではないですが、大理石貼りの床がいいです。 この当時の流行だったかもしれませんが、それがこの風呂場自体をすごく贅沢なものにしています。 湯は透明で無味無臭。肌さわりに、かすかなトロミがあります。 この湯の特徴は、あがったあとで汗がうんと出ることです。 写真をとってみたが、完敗でした。 湯気がこもっていて、ダメダメ・・。 湯船には、ビニールの畳が敷いてあります。 そういえば脱衣場の床もこれだったっけ。そこはなかなか清潔感がありました。 このように、松島屋旅館は古いながらも要所にリニューアルがなされ、不快なところはなく、そのぶん料理や接客などにがんばっている宿でした。私にはこうした「昭和っぽさ」がかえっていい味わいになっています。 飯坂は訪れるたびに廃業旅館が増えている気がします、残っている旅館はそれぞれ独自の努力をしてリピート客を確保しています。このへんが「下げ止まり」でしょう。 がんばれ、飯坂~!! ★★★★☆ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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