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テーマ:徒然日記(23452)
カテゴリ:北フランス
☆ ノルマンディの家庭教師、ノルマンディで迷子になる。その1
先週の金曜日、予定通り、新しく英語の家庭教師をすることになった。 生徒は13歳の少女ディアーヌ。家庭教師派遣会社がくれた住所をめざして、 車で、ノルマンディ地方の一角を走ってでかけた。 インターネットで調べたら、私の住む町から17km先の町だという。 いいお天気の日で、ドライヴ日和。爽やかな森の間や広々と地平線まで伸びる 緑の放牧地帯や畑に間を走る一般道路を時速100kmくらいで飛ばしていく。 で、目的地の町に着いた。そこまでは良かった。 町に着くと、道路は円を描いて、そこから、さらにそれぞれの目的地を めざして方向転換をしなくてはいけない。 ここで、私はどこに進んでいいのかわからなくなった。 町の中心にいけ、という標識や、パリ方向の標識、その他方面行きの標識や ルヴィエー・メニィュ方面行きの標識が立ち、それぞれに道が伸びている。 それらの標識を眺めながら、ぐるぐると円を描いて、仕方なく町の中心に 入っていったが、途方にくれてしまった。これは、遅刻する、まずい、と 思い、車を止め、人に聞いたが、わからない、と言う。 そこで、近くの不動産のオフィスに。そのオフィスは結構立派な古い建物で 中に入ると、床が大理石で、窓は、大きなステンドグラスで、とっても ヨーロピアンな雰囲気。 中には、コンピューターに向かうスーツ姿のハンサムな青年や紳士。 クールな格好いいファッションに身を包んだ金髪の若い女性に聞く。 彼女は、表情もクールに、さっと壁にかけてあった大きな地図を見て、 ルヴィエ・メニィュ方面に進んでね、と紙に書いて道を教えてくれた。 彼女やオフィスの人たちに礼を言って、車に乗り、教えられた道を進む。 まもなくして、それらしきアパートの建物が見えてきた。 明るいキュービックな建物で、赤を取り入れたポップな印象の建物。 さて、通りの名前も合っている。間に合った。予定の時間にぴったり。 急いで、中に入ろうとしたが、建物のデジタルボタンを押さないと、 中に入れない。仕方なく、いろいろボタンをでたらめに押すと、 デジタル装置の向こうから、若い男の子の声が聞こえてきた。 私は、教え子の家族の名前を伝えた。 男の子は、彼らは4階の住人ですね、と教えてくれた。 それで、ドアを開けてくれたので、中のロビーの郵便受けで カラフルに書かれた家族の名前にディアーヌの名前も見つけた。 奥さんの名前がないのが、ちょっと不思議だなあ、と思いながら、 徒歩で4階まで上った。 アパートの呼び鈴を鳴らしたが、返事がない。いや、そんな馬鹿な。 それで、2,3分、なんどか呼び鈴を鳴らして、じっと待ってみたり、 もう一度、アパートの番号を見直してみたり。 結局、一旦あきらめて、また建物の外に出て、もしかしたら、 家族は買い物にでも出かけて遅れたのかも、と思いつつ、 結局30分くらい辛抱強く待った。その内に、家族連れの車が アパートの前にやってきた。あの人たちかも、と思い、話しかけた。 すると、ちょっと太りぎみの夫婦が、ああ、お父さんなら、町の プールで水泳を教えていますから、プールに行って直接、お話された 方が早いでしょう、とプールの場所を教えてくれた。 奥さんは?いや、いませんよ。お父さんと娘さんと息子さんだけの 家族ですよ、と言われた。ん?いや、私は、生徒の母親と 話を電話で2,3日前にしていた。 これは、生徒の母親が、離婚した夫に嫌がらせをするために 仕組んだジョークかも、と推理小説まがいの想像をついしてしまう。 ともかくプールを目指して、再び車に乗り込んだ。 プールはすぐ近くだった。受付の若い金髪の女性が爽やかな笑顔で 室内プールにいる、という男性に合図を送って呼んでくれた。 子供たちに混じって、大人も結構いたので、最初はどの人かよく わからなかった。すると、黒い大きなTシャツに海水パンツの、 栗色のカーリーヘアのがっしりした体形の中年の男性が こちらに向かって歩いてくるのが見えた。 デリア-ヌの父親。英語の家庭教師です、と自己紹介を手短にすると、 男性は、英仏混合で、I don't speak English. Au revoir. とまたドアの 向こうに素っ気無く消えそうになった。目を点にしながら、ちょっぴり 焦りながらも苦笑する私を見て、男性は、初めて、ドンジュアン風の笑顔を 見せながら、「いやあ、冗談。冗談」と。お父さん曰く、 「ああ、レッスンはねえ、うちのもと奥さんの家ですることに なっていたんですよ。派遣先はそれを教えてくれなかったの? いけませんねえ」と言いながら、携帯電話で、もと奥さんに電話をしてくださった。 レッスンの予定の時間をとっくの昔に終えていたけれど、 奥さんもわざわざここまで来てもらって悪い、と思われたのか、 一応、来てください、と言うことになった。 で、行き先だが、これもここから先の道で私が迷子になったら、 申し訳ないと思われたのだろう、かと言って、 仕事を抜け出すわけにも行かないドンジュアンパパは、 たまたまプールに来ていた友人の女性に、もと奥さんの家の 前まで車で先導して欲しい、とお願いしてくださった。 私は礼を言って、プールを去り、女性の車の後ろにくっついて 行った。で? 車は、最初の予定の町を抜けて行く。 そして、その次の町も抜けて行く。 え?遠い。遠いじゃないか。広々と伸びた放牧地を越え、教会や町役場を二つ越える。 最初、17Kmは限界だよねえ、と思いながら、引き受けた家庭教師の仕事。 軽く30kmは越えている。が~ん。しかし、また違った風景、 違った石造りの町並みや美しい放牧地帯や馬などの眺めに感動しつつ、 ようやく辿り着いた一軒の家。 ディア-ヌは、13歳の長身で、 明るい栗色のストレートヘアを長く肩に垂らした青い瞳の清楚な感じの少女。 ディア-ヌのお母さんは、金髪のアングロサクソン系の女性で、きちんとした感じ。 電子ピアノが置かれたサロンは、大きく中庭に開かれ、中庭にはアウトドア派なら、 羨望のまなざしを向けずにはいられないようなログハウス調の家が、 大きな木の上に作りつけられている。 と、ころころ太った大きな猫が2匹、3匹と外から中からサロンを通り抜けていく。 猫は5匹もいるそうだ。電子ピアノの上には、可愛い猫の愉快な置物が置かれていた。 あ、猫家族だあ。 なんで、離婚したのかなあ。優しくて厳しい感じのお母さん、と あのドンジュアン風のパパと、とってもお似合いの夫婦なのに。 まあね、でも、一緒にいない方がうまくいく場合もあるし。 その日は、ディアーヌの家でレッスンは30分くらいのみ。 結局、お母さんともお嬢さんの勉強の話をした。 どうも、彼女の通うコレ-ジュ(フランスの中学校)の英語の先生は、 英語の得意な子を中心に授業を進めていくので、ついていけなくなった子や ちょっと自信を失った生徒は置いてきぼりの状態らしい。と言うのが、母親の見解。 とは、いえ、学校の先生もそれなりに大変なことは想像できる。 予習復習をして授業に参加してくれる生徒に焦点を合わせ、 彼らの能力をさらに伸ばしたい、授業を先に進めたいと願いつつ、 どうしても頑固にわかってくれない生徒に、なんとか興味をもたし、 新展開を望み、授業の工夫をどうしたらいいか、と考えない先生はいない。 褒めて、しかって、なだめて、すかして、また褒めて、の繰り返し。 とりあえず、金曜日のレッスン、時間が遅かったので、30分で切り上げ、 その日はレッスンは無料。 ディア-ヌのお母さんは、ちょっぴり申し訳なさそうだったが、 私もほとんど話し合いで終わったので、当然のこと。 ディア-ヌのお母さんは、帰りは大丈夫ですか、と心配してくださったが、 私、「大丈夫ですよ。冒険、好きですから」 意外と、帰りは、標識を見ながら、簡単に家路に着いた。 次回は、学校が午後休みの水曜日に行くことになった。 *ちなみに生徒名や生徒の家族名は仮名です。一応、家庭教師派遣会社のお達しで、 生徒のプライバシーは秘密厳守、TOP SECRET なのです。 ロマンティック・ケネディ 今日もあなたにとって 素敵な一日でありますように。 lots of love 人気blogランキングへ ありがとう!Have a nice day ! A+ ! Vineusement vôtre. よろしければ、ぽちっとプレスを。 ○ 劇団 無=魂の 「桜」 公演 2007年5月17日~20日 東京 六本木アトリエ・フォンテーヌにて! お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
September 25, 2020 07:09:08 AM
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