テーマ:ただ思うこと・・・(562)
カテゴリ:老い。
義母の付き添いで総合病院へ。 採血の部屋で義母と順番を待つ。 1度に4人採血できるデスクに次から次へと名前を呼ばれていく風景は、 ここに来る誰もが見慣れた風景で、ことさら互いに注意を払うこともない。 だが、突然、 「 はいっ 」 という凛としたお声とともに、 車椅子の御方が進まれたとき、 そこにいた全員が 何気にその御方をみたのだった。 車椅子に乗ってはおられても、すっと背筋から首筋が伸びておられ、 髪は真っ白でいらっしゃるも、お顔は活き活きとしておられ、 とても身奇麗にされている。 むしろ、車椅子を押しておられる御方の方が、疲れたお姿なのが気にかかる。 「 お名前を教えていただけますか 」 「 生年月日をおっしゃって下さい 」 看護師さんの声に、きびきび応えられ、 「 まぁ、百歳におなりですか? 明治生まれの御方は久しぶりですぅ 」 トーンの上がる看護師さんのお声に、皆がどよめく。 「 ごめんなさいね~。 今日は4本採らせて下さいねー 」 4本の採血を終え、退室されるとき、 まるで、その御方は、皆の視線を集めたことを意識しておられるかのように、 胸をはって、口元に笑みを浮かべておられたのであった。 義母は感じ入ったようで、 凄いのぅ、凄いのぅ。 どっこも悪そうにないのぅ。 わしも後16年、頑張れるかのぅ。 帰宅するまで、その繰り返し。 私はといへば。 す っとそこに在っていらっしゃった御方に敬意を覚えつつも、 ヘルパーさんには見えなかったあの御方は、 娘さん、であろうか、 お嫁さん、であろうか、と、 少なくとも私より12~3歳は上でいらっしゃるやうにみえた、 車椅子を押しておられた御方のことが 気になって。 夫れ浮生なる相をつらつら観ずるに、 凡そはかなきものは、この世の始中終、 幻の如くなる一期なり。 されば、いまだ万歳の人身を受けたりということをきかず。 一生過ぎやすし。 今にいたりて、誰か百年の形体をたもつべきや。 我や先、人や先、今日とも知らず、明日とも知らず、 遅れ先だつ人は、もとの雫、末の露よりもしげしといえり。 蓮如上人 『 白骨の章 』 前半 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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