「スポーツ界、脱ムラ社会を」編集委員・中小路徹氏筆・15日朝日新聞・「縦横無尽」欄
私:パワハラ、暴力、助成金不正配分など、競技団体や大学スポーツで不祥事が続出する背景について、世界ボクシング評議会(WBC)ライトフライ級元王者の木村悠氏(34)は「鎖国されてきたスポーツ界で、時代遅れの部分がようやく顕在化している」という。 木村悠氏は、7年間、アマチュアの経験もあり、競技団体の空気をよく知っていて、2016年に現役を引退し、今は講演活動などで、選手ファーストのあり方を発信している。 「上」の意向がメンバーや代表の選考に直結するスポーツ団体は、「排他的なムラ社会」になりやすく、選手は指導者に従い、選手を国際試合に送り出す指導者は競技団体に従う。 そうやって、「独裁体制」がつくられてしまう。 木村氏は、「世の中がハラスメント防止に動いてきた中、『ムラ社会』のスポーツは取り残された。インターネットやSNSで選手への共感が広がるようになり、ようやく選手が影響力を持った」とみる。 A氏:本来、選手が訴える理不尽は世間の後押しの前に、スポーツ界が自浄できなければならない。 その役割を担う暴力・ハラスメントの内部通報制度や相談窓口は、日本オリンピック委員会(JOC)や各競技団体に、あるにはあるが、木村氏は、「私も判定に不満があったとして、同じ協会の人に話すかというと、干されるリスクを考えると声は上げにくい。競技団体と一定の距離を置く第三者の機関が必要です」という。 「ムラ社会」だけでは、だめとなると、外側から監視する機能が必要になり、その意味では、国が競技団体に任せず、スポーツ界の健全性確保に乗り出したのは、あり得べき流れではあり、スポーツ庁が12日から、その方法を検討する会合を始めた。 私;有効な監視機能は必要だが、ただ、その構築を含めた健全性確保への道筋は、国ではなく、スポーツ界が主体となってつくらなければならない。 そのために、まずは「脱ムラ社会」と中小路徹氏はいう。 スポーツジャーナリストの玉木正之氏がTVコメンテーターで「日本にスポーツが入ってきたときは問題なかったが、戦時中に学校体育に軍事訓練が入り、厳しい上下関係のあるスポーツとなり、暴力、パワハラの体育会系的伝統が生まれた」というのが持論だね。 それに、スポーツの勝敗に「根性論」という精神論が関係してくるんだね しかし、この悪しき体育会的伝統では勝てないと、これを否定した岩出監督の帝京のラグビー部は9連覇を達成中。 箱根駅伝4連覇の原監督も選手の自主性を重んじ、体育会系的指導の否定をしているので有名。 逆に日体大の駅伝の渡辺監督は選手のパワハラで解任。 かってはパワハラは、女子柔道にあったが、最近は、日大アメフトの反則行為が発端で、その後、女子レスリング、ボクシング、女子体操、重量挙げ、箱根駅伝と続々連鎖して拡大。日本のアマチュアスポーツに共通した特徴が露呈化し、体育会系的中心人物は続々と解任され、悪しき伝統は消えつつあり、木村悠氏のいう「選手ファースト」に大きく変わりつつあるようだ。