「マンデラ生誕100年 南アなお遠い融和・大きい人種間格差」17日朝日新聞・「世界発2018」欄
私:南アフリカの「アパルトヘイト(人種隔離)」政策を91年に撤廃に導き、国民の融和に努めたマンデラ氏が生まれてから7月18日で100年を迎える。 しかし、ヨハネスブルク北部にあるビジネスの中心、サントン地区の富裕層が住むアパートは侵入者を防ぐため高い塀や電線、有刺鉄線で囲まれている。 一方、そこから南西に約25キロ。旧黒人居住区ソウェトのクリップタウンの一角にはトタン屋根の小さな家が立ち並び、電柱の電線を違法に自宅までつないでいる。 そこに住む黒人住民は、マンデラ氏が「アパルトヘイト」政策を廃止に導いた時、黒人への恩恵を期待したが、貧富の差はむしろ広がったと感じるという。 A氏:2003年に、政府は格差是正を目指し、黒人の経済参加促進法「BEE」を制定し、採用や幹部登用で黒人を優遇する企業を後押し、無償の初等教育や社会保障も充実させた。 黒人の企業幹部は96年に8%だったのが、15年までに約40%まで上昇し、黒人の富裕層は一定程度増えたが、権限を持たない黒人の名前を幹部として記載する企業があるなど「BEEは失敗だった」という声もあるという。 私:世銀によると、南アフリカは人口の1割が富の約70%を保有し、貧富の差がきわめて大きい国の一つ。 中でも多くの富を持つのが人口の10%に満たない白人で、14年に白人家庭の平均年収が約44万ランドだったのに対し、8割を占める黒人の家庭は約9万3千ランド。 条件の良い土地や農地の多くは今も白人が所有。 失業率も15~64歳の黒人は31・3%で、白人の5・7%との差は大きく、黒人は24歳以下では失業率が5割を超え、大多数が貧困に苦しんでいる。 世銀は「富裕層ほど教育や就業で恵まれる『機会の不均等』が格差の是正を妨げている」と指摘。 A氏:今年も、大学生専用のアパートが白人だけに入居を認めたとして批判を浴び、白人女性が黒人を中傷する「アパルトヘイト」期の差別用語を繰り返し使ったとして、禁錮2年の判決を受けたなど、差別事件が相次ぐ。 ヨハネスブルク中心部には、ジンバブエやナイジェリアからの移民が多く住み、国内の黒人の仕事を奪っているとみられて暴行事件が起きていて、黒人同士の憎悪感情も一部で広がる。 私:マンデラ氏の功績や「アパルトヘイト」の史実を若い世代に伝える歴史の継承教育も問題になっていて、現代史を教える時間を割けない学校が多いほか、低賃金による教員の質の低下や貧困家庭の子どもの中退などが原因。 年間20万人以上の来場者があるヨハネスブルクの「アパルトヘイト」博物館は,民主化運動に参加した人々と大学生との交流会を開くなど、若い層への歴史の継承に取り組んでいて、児童や生徒の訪問を増やそうと政府や学校にも働きかけているが、公立学校の児童らは博物館までの交通費が支払えないなどの問題があり、なかなか訪問してもらえない。 クリストファー・ティル館長は「国内外で人種差別がいまだにあり、不寛容さが増している」と危惧し、だからこそ、対話や融和の精神、人種差別の撤廃を訴え続けたマンデラ氏の考えが大事で、「生誕100年は、全世界に彼のメッセージを伝える貴重な機会になる」 という。 しかし、マンデラ生誕100年は、南アだけでなく、米国もそうだが、人種問題は根深いことを、逆に示しているね。 米国は初の黒人大統領オバマの後、トランプ大統領は移民問題で人種差別強化に転じたね。