「学生の苦境 政府は教育予算の拡充を」亜細亜大学准教授・鎌田遵氏寄稿・7日朝日新聞・「私の視点」欄
私:鎌田遵氏は年に2回、研究のため、カリフォルニア大学バークリー校を訪れているが、かって、在学していた1990年代半ばから見てきたが、格差は広がる一方と感じるという。 学生の苦境の主な要因は、学費の大幅な値上げ。 米国では教育予算の削減が学費の値上げを招き、ここ20年間で約3倍になった。 公立大学でも学費は年約150万円(州の住民以外はさらに約300万円)で、大学には裕福な子弟が増えたという。 A氏:一方で、学生の10%にあたる約3千人が友人宅を転々とし、空き家や車で寝る「ホームレス」を経験していて、有名大学の門戸が貧困層の移民にも開かれているのは多民族社会の希望だが、奨学金や学生ローンだけでは生活は難しいという。 大学職員ルーベン・カネド氏は学生の2割が食事を抜く窮状を見て、無料で食事できる食品室を大学内に立ち上げた。 「自立の一歩になり、助けを求めて人とつながることもできる」として、一学期の利用者は3千人前後にのぼる。 私:アルバイトで疲弊し、ネットで洋服などを売って生計を立て、栄養不足で大学の教科書も買えない。 教養を育み友人と議論するよりも生活費の捻出に奔走し、卒業後は学生ローンの返済に追われる。 学費を滞納して去る学生は珍しくなく、日本の大学でも学生の切実な声を聞くことが増えた。 経済格差を背景に、大学で学ぶことは限られた所得層の特権に戻りつつあるのではないかと鎌田氏はいう。 さらに、鎌田氏は、こうした米学生の苦境は、日本の学生の近未来像かもしれないという。 カリフォルニア大学の試みから学ぶことは多く、地域社会が若者を支える食品室に、移民国家の懐の深さを感じ、助け合いの精神を身につける場所こそ、大学であるはず。 A氏:日本政府も、奨学金制度の脆弱さは認めていて、学内の福祉施設や特待生制度、政府系の無償援助や無利子・低利・長期返済の奨学金、民間団体や企業による総合的かつ広範な学生への支援策を充実させる必要がある。 政府が進めるべきは防衛費の拡大ではなく、人間力を強くする教育費の拡充ではないか、社会が若者たちに希望を与え、未来と確かに向き合える学生生活を支えていけるようにしたいと鎌田氏はいう。 私:安倍政権は、国家財政のプライマリーバランスを20年度に黒字化する財政健全化の目標を掲げていたが、首相は昨年秋の衆院選前に、19年10月に予定する消費税率引き上げによる増収分を教育無償化などに回すことを表明し、目標達成も断念しているね。 教育無償化は財政健全化を犠牲にすることになるのかね。 背景に少子高齢化も影響しているね。