カテゴリ:読書
加賀恭一郎シリーズ初期の作品。
それが「悪意」だ。(この記事ネタばれあり) 作家が仕事場で殺される。 鈍器で殴られ、その上銃殺されていた。 全体で300ページほどの作品で、100ページ以内に犯人がわかる。 残りの200ページは何が描かれているのか。 読者なら読んでいる最中、それが気になっただろう。 私もその一人だ。 可能性としては以下のことが考えられる。
東野が描いたのは3だった。 ホワイダニット(なぜ事件が起きたのか)を加賀は追う。 「犯人がわかれば事件は解決」ではない。 ここで「説明する作品」であれば、読者からは拒否される。 説明ではなく表現することが作家の役割。 この点は「悪意」の本文でも出てきた。 遺体発見者の書いた文章による始まり。 それはアガサ・クリスティのある作品を思い出させる。 読者は書いてあることが真実だという前提で読み進める。 だがその一部に嘘があったとしたら。 ミスリードされた読者(と加賀)は、何が真実かを見定める必要がある。 後半部分にある同級生たちの供述。 それにも人を見る目の難しさがある。 人の記憶くらいあてにならないものはない。 社会科の教師だった加賀恭一郎がなぜ刑事となったのか。 その理由もこの作品で明らかになっている。 教師を続けられなかった加賀は、よく刑事に転進しようと思ったものだ。 この作品を読んで思い出したのは「容疑者Xの献身」。 以下の記事で書いた。 「容疑者Xの献身」東野圭吾 今になって初期の作品を読む。 それは意味のあること。 なぜなら、東野圭吾という作家の軌跡が見えるから。 「容疑者X」は「悪意」をベースにしている。 私はそう感じた。 順番としては逆だが、私は「赤い指」を先に読んでしまっている。 「赤い指」東野圭吾 人がなぜ殺人者となるか、事件ごとに事情は異なる。 「容疑者X」で感動した読者が多かったのは殺人事件の背景。 犯人に共感する読者が多かった。 それが「容疑者X」の成功につながっている。 この作品に苦言があるとすれば、それは鍵。 殺人現場に入るための鍵について、読者にはそのありかが伝わっていなかった。 推理小説の掟として、必要な材料は読者に示されなければならない。 終盤になって鍵のことを書くのはいただけない。 だが、それを差し置いてもこの作品は評価が高い。 東野は挑戦する作家だ。 映画監督が自らの作品をリメイクするように、東野もそうしている。 上で書いたように、「容疑者X」は「悪意」のリメイクだ。 そう書いたら彼のファンは反発するだろうか? 加賀恭一郎シリーズの最新作、「新参者」。 図書館で待って、いつかは読んでしまうのだろう。 ※トラックバックは管理人が承認した後に表示されます。 バナーにクリック願います。 ***トラックバックはテーマに関係するもののみどうぞ。 その場合リンクは必要とはしません。 意見があればメッセージでどうぞ。 ただし荒らしと挨拶できない人はお断りです。 今のところメッセージは全て読んでいます。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2010.06.08 20:53:51
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